坂東眞理子さん×雨宮塔子さん “この先” を生き抜く「覚悟」の金言

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左から/坂東眞理子さん、雨宮塔子さん。[雨宮さん]ジレ¥82,500(ストラスブルゴ)、ブラウス¥37,400・パンツ¥42,900(リュンヌ<ラトリエ・エム>)、ピアス¥17,600(ブランイリス トーキョー<ブランイリス>)

320万部を超えるベストセラーとなった『女性の品格』から16年。その著者、坂東眞理子さんが、50歳からの人生に不安や迷いをもつ女性たちへのエールとして、2022年に上梓した『女性の覚悟』が話題を呼んでいます。

長寿社会の日本、老後が長くなった現代において大切なのは、私たち女性がさまざまな「覚悟」をもち、強くしなやかに生き抜くこと──キャリア女性の大先輩である坂東さんがしたためたこのエッセイに深い感銘を受けたという雨宮塔子さんが、「より具体的なお話をうかがいたい」と、この対談が実現! プレシャス世代代表として、50歳からの人生を明るく照らし出す金言の数々を授けていただきました。

人生100年時代。折り返し地点を過ぎたばかりの50歳からをエレガントに生き抜くためのマインドを教えます。

坂東 眞理子さん
昭和女子大学理事長・総長
(ばんどう まりこ)1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府入省。'95年埼玉県副知事、'98年オーストラリア・ブリスベン総領事、2001年内閣府初代男女共同参画局長を務め、'03年に退官。'04年昭和女子大学大学院教授、同大学女性文化研究所長に就任し、'07年同大学学長、'16年から総長に。『女性の品格』(PHP新書)のほか、『幸せな人生のつくり方』(祥伝社)など多数の著書がある。
雨宮 塔子さん
フリーキャスター
(あめみや とうこ)1970年、東京都生まれ。成城大学卒業後、'93年TBS(株式会社東京放送)に入社。当代きっての人気アナウンサーとして活躍後、'99年に退職し単身渡仏。パリでの結婚、出産を経て、2016年7月から'19年5月まで『NEWS23』(TBS)のキャスターを務めた。同年9月よりパリに拠点を戻し、テレビ出演や執筆活動を展開。『パリに住むこと、生きること』(文藝春秋)など著書多数。

「覚悟」の金言1:五十路ブラボー! の精神で

雨宮:私は昨年末52歳になりまして、この年齢になった実感が湧かない一方、「ああ、歳とったな」と感じることも多くなった今日この頃ですが、『女性の覚悟』を拝読してたくさんの気付きがありました。例えば、現在の日本社会は、人生70年時代ではないことも改めて強く認識したような気がします。

坂東:そうよ、100年です!

雨宮:私たちプレシャス世代なんて、まだまだ人生折り返し地点。改めてこれからも働き続けていく覚悟を決めることができました。

坂東:日本の女性の多くは、「私はもう50女だと見られているんだ」とか、「もう若い魅力的な女性だとは思われていないんだ」というように、自分を過小評価してしまうのよね。

雨宮:確かにフランスには「近所のおばさん」というようなニュアンスに当たる「おばさん」という言葉は存在しませんし、成熟した女性たちに対するリスペクトが根付いている文化。そこは本当に日本と違うところだと思います。

坂東:私から見てね、50代なんて本当に、まだまだこれから。前途洋々(笑)!

雨宮:これからの人生を考えると、今日がいちばん若い日と。

坂東:そう、今日がいちばん若いし、今日がこれまでの最高点。今までいろいろ蓄積してきたんだから。「若いほうが価値がある」という尺度で見たら、どんどんそれは失われていって、もう下り坂で衰えていくばかりと感じてしまうかもしれないけれど、これまでの人生でいろいろなことを経験して、昔は見えなかったものが見えるようになったり、人の痛みがわかるようになってきているとかね。そういう、目には見えないけれど確かな「無形資産」は、私たちのなかにちゃんと積み上がってるんですよ。だから50代女性はもっと自信をもって!

「覚悟」の金言2:他人にどう思われたっていいと腹を括る

雨宮:先生の50歳前後というのは、どういう時期でしたか?

坂東:当時は公務員でいろいろありましたけど、一応、男性並みに、「まあ、ここまでは行けるかな」と思っていたところまで来て、ではその次にどうしようかと悩んでいた時期でしたね。

雨宮:その次?

坂東:キャリアの公務員っていうのは、だいたい定年まで勤めないんです。「どこかよそへ行きなさい」って、いわゆる肩たたき(笑)。今まで天下国家のためにやってきたつもりなのに、どこかの外郭団体など。そんなに厳しい仕事じゃなさそうだし、そこそこの収入はあるかもしれないけれども、「やりがいがあるのかな?」っていうような仕事につくのは嫌だなあと思っていました。

雨宮:先生は50代半ばで内閣府男女共同参画局の初代局長に就任されるなど輝かしいキャリアを築かれ続けていらっしゃいましたが、一般的な50歳前後の女性は、仕事では先が見えてきて、プライベートでは子供が巣立ち始めたりして、それまで大切にしてきたことやそのために費やしてきた時間が永遠でないと悟って、これからの生き方に不安を覚えている人も多いと思うんです。

坂東:そういう人たちにおすすめするのは、今まで家族や仕事のために一生懸命で行けなかった、行かなかった所へ足を踏み出してみること! でもそうやって越境するには勇気がいるし、他人の目を気にする人も多いでしょう。「もしも失敗したら笑われるんじゃないかしら」とかね。そういう他人の目を気にすることは、本当に人間を立ちすくませてしまうの。だけど今いる場所にずっととどまって縮こまってちゃだめ。たとえ他人が批判したとしても、その人が自分を幸せにしてくれるわけじゃないのですから。

「覚悟」の金言3:終活より就活! 一生稼ぐ

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雨宮:坂東先生は、これからの女性の後半の人生において大きな役割を果たすのは、金融資産や不動産のような「有形資産」ではなく、目には見えない「無形資産」と書かれていましたね。そして最大の無形資産は「稼げる力」と。老後ものんびり過ごさず、一生稼ぐ! くらいの心意気が必要なのですね。

坂東:働き続ける覚悟は絶対必要です。誰が食べさせてくれるの? という現実をみましょう。最近では、50代でもう「終活しなきゃ」なんて言っている人がいるらしいですね。私はね、50代も半ばを過ぎた人たちには、「終活より就活しなさい」って言っているんです。「終」じゃなくて「就」のほうね。

雨宮:50歳過ぎても、例えば仕事を替えたりするっていうこともアリと?

坂東:絶対あるわよ(笑)。会社員の方も定年を迎えて仕事終了、「お疲れ様でした」という時代ではないのです。もう家族を扶養しなくてもいいというステージに変わったら、年収にこだわるよりも、もうちょっと手応えがあるとか、社会のための活動に関われるとか、自分で自己評価を高められるような仕事をするのがいいと思うんです。

雨宮:その辺の価値観も、新しいステージへと越境していくわけですね。

坂東:「家族を養うためのお金も必要だから、もっともっと稼がなくちゃ!」という、前のステージの価値観は手放して、新しい価値観で仕事を選択しなければならなくなるのが、50代半ばくらいかなと思います。

雨宮:とはいえ、これから自分がどれだけ長生きするかわからないから貯金もしなきゃ、欲しいものもあるし、まだまだもっと稼がなきゃ、と思っている人はきっと少なくないですよね。

坂東:そう、でもね、今のこの社会ではどれだけ貯蓄があれば安心ということはありません。もちろん高い収入があるに越したことはありませんが、「生活できるのなら、身の丈を過ぎた贅沢を求めない」と覚悟することも必要。その覚悟を決めない限り、ずっと不安がキリなく続く人生になってしまいますよ。

「覚悟」の金言4:人間関係の断捨離は必要ない

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雨宮さん「50代からはお金より、『無形資産』を増やすことが大切なのですね」 

雨宮:50代からの就活は、今までとまったく違う分野でもいいんでしょうか?

坂東:そこは、イエス・アンド・ノーです。でもやっぱり自分の経験が生きるほうがいいだろうと思うし、それとね、自分のことって自分が意外と知らないのね。だから、私はハローワークで探すよりは、一緒に仕事をした人とか周りの人に「次に何か仕事したいと思っているんですけど、私でもできそうなことがあったら声かけてください」ってやんわりと頼んでおく。

雨宮:マイルド就活!

坂東:そういうことを耳に入れておいてもらったら、ポコッとポストが空いたときに、思い浮かべてもらえたりするのよ。

雨宮:これまで築き上げてきた人脈は、まさに無形の財産ですものね。

坂東:私は人間関係は、急いで断ち切らなくてもいいと思っているんです。何かの会合や同窓会なんかにも、3割はムリでも2割バッターくらいを目標にして参加して(笑)。柔らかく関係性を続けていけばいいのではないかしら。

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