Special Book【鈴木保奈美の「現在(いま)」】保奈美さんの魅力のすべてを解き明かします!
これまで、何度となくPreciousの誌面を飾ってきた女優・鈴木保奈美さん。あるときは凛々しく、あるときは知的で、自然体。そして、チャーミングな面も! その美しく、しなやかな年齢の重ね方は、私たちが目指す理想像なのではないかと思います。
女優として、ものかきとして、そして、ひとりの女性として…一歩一歩しっかりと進んでゆくその姿は、今この時代に大人であることのさまざまな意味を、共に感じさせてくれるはずです。
女心をとらえて離さない魅惑的な宝石とモチーフが新たな高みへ導いて
身につけた瞬間から揺るぎないパワーと自信を授けてくれる、「カルティエ」の象徴『パンテール ドゥ カルティエ』。
パヴェダイヤモンドにスポッツ・モチーフのオニキスを散りばめたリングを飾るのは、高貴な輝きを放つルベライト。みずみずしい宝石の愛らしさに、シルクブラウスの華やかさもいっそう増して。
Special essay「自分というおもちゃで、虚実を遊ぶ(すこぶる真剣)」文・鈴木保奈美
早朝、まだ薄暗いスタジオに着くと、待ち構えていたヘアメイクアップアーティストが肌の調子を整え、眉を描き、チークを差し、髪をいい感じに巻いてくれて、鏡の中に「あの人」が出来上がってくる。それからスタイリストが練りに練ったコーディネイトを着せかけて、袖の長さを微調整し、ジュエリーで仕上げをする。カメラマンは素人には理解不能な光の角度と量を見極め、絶妙なサイズで人物像を切り取っていく。紙面やブラウン管に映し出されるあの人の姿は、いわば彼らクリエイターたちが手間暇かけた作品だ。そのどれか一つが欠けても、成立しない。
それでは、そこにいる「わたし」は、なんだ?誰かが書いた台詞を喋って、誰かに言われた仕種をする「あの人」と同一人物なのか、それともどちらかが虚像なのか?わたしは誰で、どこから来て、どこへ行くのか、なんていう、ゴーギャン的自我の混乱に陥ったこともあった、いつだったか、ふふん、若かったよね。
幼稚園児の頃おばあちゃんの布団の中で、人は死んだらどうなるんだろう、と考えて泣いた。死ぬのが怖いんじゃなくて、「わたし」という意識がどうなるんだろうと、その問いが絶望的に深そうだと子供心に途方に暮れて、泣いた。まあ、ちょっと自意識過剰で理屈っぽい園児だったかもね。あの頃から、自分というものを、どこか客観的に、素材として見ているところがあるような気がする。みんな、そうなのかな?
歳をとると便利なことがあって、ゴーギャン的混乱に、開き直りという術で対抗できるようになる。どっちでもいいじゃない、わたしはわたし。悩んでいる間に時はビュンビュン過ぎてしまうから、今できること、今やりたいことを、全力でやる。だから常に余裕はない。自転車操業である。でも、出し惜しみはしないと決めたのだ。惜しむほど自分の引き出しは深くはない。全部出してしまったら、見たことのない新しい風が吹き込んでくるはず。
ボールを追って走って走って、もう無理だ、全部出し切った、と思ったその先に、最高のスルーパスが来たりするものなんですよ、と、いつか本田圭佑選手が言っていた。だから、余力なんてとっておかない。燃え尽きて打ちのめされたら、ヒートショックプロテインみたいに新しくてもっと質の良い筋肉ができてくるはず。
時々おばあちゃんの布団で泣いている自分に引き戻されそうにもなる。そんな時もぎゅっと抵抗はしない。おぬし、可愛いところがあるではないか、なんて笑ってみる。ちょっと付き合って泣いてやったっていい。そうやって自分という素材で存分に遊ぶことができたら、なかなか良いんじゃないかと思う、今のところ。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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- PHOTO :
- 浅井佳代子
- STYLIST :
- 犬走比佐乃
- HAIR MAKE :
- 福沢京子
- MODEL :
- 鈴木保奈美
- EDIT&WRITING :
- 兼信実加子、喜多容子(Precious)