20世紀の3大「いい女」に共通する鳥肌ものの共通点！
1970年代のハリウッドを席巻した女優、ジェーン・フォンダも、今年、85歳となる。しかし、その年齢が信じられないほど、今なおこの人はセクシーだ。若く見えるというより、色っぽいのだ。
普通ならありえない、85歳の色気。それは一体どこから来るのだろう？
今はあまりに耳にしなくなった「いい女」という言葉。どこかに差別的なニュアンスがあるからなのだろうけれど、この表現でないと、どうしても伝わらない気配の魅力が存在することは確か。
で、20世紀を代表する「いい女」と言えば、ブリジット・バルドーとカトリーヌ・ドヌーヴ……この2人には抜き差しならない絶対の共通点がある。どちらも稀代のプレーボーイとされた、フランス人の映画監督ロジェ・ヴァディム氏と同棲または結婚しており、どちらもバディム氏に、徹底的に女を磨かれ、「世紀のいい女」と言われるまでになっているのだ。
そしてもう1人、ドヌーヴとの5年の内縁関係のあと、ロジェ・バディム氏が次の妻として選ぶのが、じつはジェーン・フォンダなのである。
バルドーとドヌーブはフランス系だが、ジェーン・フォンダは彼にとって、はじめてのアメリカ人。官能的な女を好み、自らの手で更に完璧な女に育て上げ、その過程で愛する女を主役にして映画を制作することを生きがいとしてきた。そんなバディム氏にとって、アメリカ女優で最も官能的で、“いい女”の潜在能力を溢れさせていたのがジェーン・フォンダだったということなのだろう。
他の妻たちと同様に、ジェーン・フォンダも夫の制作する映画2本に、主役として登場、夫好みの女を演じている。
一転、反戦運動家へ、さらにはエアロビクスのミューズへ
そして彼との離婚直後に、今度は一転、社会派の政治活動家として有名だったトム・ヘイデン氏と再婚。自らも当時のベトナム戦争に対する反戦運動に情熱を傾け、「ハノイ・ジェーン」と呼ばれるほどの影響力を持った。
それこそ今までのセクシーでゴージャスなジェーン・フォンダは影を潜め、まさにすっぴんにストレートのウルフヘア、ジーンズを履いた反戦のミューズとして、大きな注目を浴び、影響力を持ったのだ。
しかし、ベトナム戦争が終わると、また一転、流行しはじめていた“エアロビクス”に傾倒し、自ら制作したビデオ『Jane Fonda’s Original Workout』を発表、このシリーズがベストセラーとなり、今度は「エクササイズのミューズ」となり、世界規模で一生を風靡するのだ。
やがて運動家と離婚した2年後に再再婚したのは、CNNの創設者でケーブルテレビチャンネル・映画制作会社オーナーのテッド・ターナー。いわゆる富豪中の富豪である。つまり今回は、“大富豪夫人”としての顔を持つようになり、10年後には離婚するも、その慰謝料は途方もない数字だったとされるのだ。
こんなふうに、時代の流れに身をまかせつつも、常に時代の寵児となってきたのがジェーン・フォンダなのである。
まあ、見事と言うしかない人生遍歴だが、この人の生き方シフトチェンジは、いつもパートナーの男性と共にあった。男が変わると、ファッションも髪色も、顔つきまでもがらりと変わるほどに。と言っても、夫の庇護のもとに安泰な人生を送ると言うのではない。その時々の夫と完全に同じ価値観を持ち、男とともに、攻めの人生を送り続けるというのがこの人のやり方なのだ。
時代の先端を行く男に愛され続ける人生
でもそれには、常に、女性としての魅力を発して、時代の先端を行く男に見初められなければならないし、その後も存分に愛されなければいけない。そういう風に人を惹きつける力に加えて、行動力が人一倍だから、こういう人生が送れるのだろう。人一倍エネルギッシュな“世紀のいい女”の特権と言ってもいい生き方である。
そして、今85歳でこの色気を保っているのも、こうした女としての求心力と行動力を併せ持つ人だからこそ、なのだろう。
でも実は一つだけ、この人が自ら行ったシフトチェンジがあって、それが69歳での女優復帰だった。大富豪との離婚と同時期に女優を一時的に引退したのも、テレビ界と映画界随一の実力者であった夫の影響力を失った代わりに、天文学的な慰謝料を受け取ったから？ などという意地悪な見方もあったが、また一転、70代を目前に女優に帰り咲くという離れ業も、この人ならではなのだろう。
この人は折に触れ、歳を重ねた自分の生き方について語っているけれど、フェイスリフトをやった経験にも触れている。自分が年老いていくことが嫌だったから、でもそれは誇りに思えることじゃ無いし、繰り返すようになったら絶対にいけないから、一回だけにするわと。
それでも別のインタビューでは、自分の容姿に対し、“身体醜形障害”にも等しい精神状態になって、美容医療を繰り返した時もあったという告白もしている。
身体醜形障害とは、他者の目にはそううつらなくても、本人は自分の体形がひどく醜く劣っていると思い込み、軽蔑されていると思い込む病的な症状を言う。いずれにせよ、ジェーン・フォンダも自分の容姿の変化には、大いに苦しんだことがうかがえる。
70代80代、恋愛もセックスも現役であり続け……
その一方で、70代のうちは恋愛もセックスも欠かさなかった、という告白もしている。それが若くいるための絶対の秘訣であると。しかし82歳の時のインタビューでは、「でも今は、ゼロ。時間がないの。昔、たくさんしたからね。今は忙しすぎて必要ないのよ」と粋な返しをして、喝采を浴びたという。
元気で若い80代というより、まだまだ現役の女であり続けている、その結果としての色気であることは言うまでもない。もっと言うなら、酸いも甘いも噛み分けてきて、でも今なおたくさんの欲望を持ち続け、ほとんど何も諦めていないことが素晴らしいのだ。
自分の容姿に苦しんでカウンセリングを受けるほどとなったのも、意識は現役の女であり続けたいのに、自分の姿がそれに見合わなくなったと言う悩みからだったのだろう。これもまた、心と体の不一致と言うべきか。
これからの80代はそういう心と体の不一致に悩むことになるのかもしれないが、反戦運動もエアロビクスも、何でも先駆けとなってきたこの人から、必ず克服可能な歳の取り方を存分に学びたい。こういう歳の取り方も、やっぱり新しく、他に先駆けていると言っていいから。
そして85歳になった今、容姿についても全て克服し、若さに未練は何もないとハッキリと言い切っている。この身体のおかげでいろんな事を乗り越えられたから、頑張ってくれた自分の体に今はありがとうと言えると。
いつも自分を鼓舞しながら結果的に自分を慈しみ、今の年齢で1番魅力的な自分を作ろうとする心意気、それが年齢を超えて、「いい女」の絶対的条件なのだろう。パートナーが変わるたびに生き方を変え、旬の男とともに輝いてきたミューズは、シングルとなった今も、ちゃんと異性の目にどう映るかを意識し続けている。でも今は、女の色気に加えて、人間としての色気もダダ漏れしている人……こんなふうに歳をとりたい。
- TEXT ：
- 齋藤 薫さん 美容ジャーナリスト
- PHOTO ：
- Getty Images, Zeta Image
- EDIT ：
- 渋谷香菜子
