周りの空気を明るくするような、はじける笑顔と優しさをたたえた瞳…メディアで見るその姿と変わらない俳優・伊藤英明さん。Precious.jpでは、9月2日から開幕中の舞台『橋からの眺め』に出演する伊藤英明さんにお話を聞きました。全3回のオリジナルインタビューをまとめて振り返ってみましょう!


強い苦手意識のある舞台。自分の中では乗り越えていない壁

俳優・伊藤英明さん
「観てくださる人や一緒に仕事をしてくれる人が”いい作品だった”と喜んでくださることを考えるように」(伊藤英明さん)

「実は、舞台には強い苦手意識があるんです。初めての舞台は『MIDSUMMER CAROL ガマ王子 vs ザリガニ魔人』(2004年・G2プロデュース)でした。初日、2幕の幕が上がりスポットライトが当たったら、セリフが飛んで頭が真っ白に。僕のセリフから物語が始まるのに、何も出てこない。同じく初の舞台出演である共演の長谷川京子さんが目の前にいて、僕のセリフを待っている」

「客席は満席で、お客さんも物語が動くのを待っているのに、何も出てこない。そういうときって、体が勝手に動いてしまうんでしょうね。『どうしたらいいんだ、俺は』と口に出していたんです。長谷川さんを見ると、『どうしちゃったの?』みたいな表情を浮かべていました。しばらくキャラクターとも台本とも関係がないことをしゃべっているうちに、セリフが奇跡的に戻って来た。なんとか、その場面を終えて、舞台袖に引いたら、共演者総出で『助けに行こうと思っていた…!』と出迎えてくれたんです。あれは、これまで生きてきた中で、一番の恐怖体験でした…」

13年ぶりに本格派舞台に挑む! 俳優・伊藤英明さんインタビューVol.01

1週間先、1か月先はどうなっていくのか。舞台は繰り返し積み上げていくもの

俳優・伊藤英明さん
「自分が何に気付いて、どのように本番に臨み、それを終えたときに、どんな自分に変わっていくのか」(伊藤英明さん)

「演技は現場で学んでいきました。先生に付いたり、学校に行ったりしたことはないんです。監督やカメラマン、共演者と一緒に演技を続けてきたとも言えます。先ほど「舞台が苦手だ」と繰り返してしまいましたが、実は稽古は大好きなんですよ。
自分の中でのルーティンができますし、ああでもない、こうでもないとみんなで話し合いながら、作品を作っていくことはとても楽しい。映像作品も、リハーサルが一番好き。ずっと作品作りをしていたいんです。『本番が来なければいいのに』と、いつも思っています(笑)」

「少ない舞台の経験で、映像作品との差異を語るなら、舞台作品は物語が時系列で流れていと言うことでしょうか。舞台は稽古を繰り返し、時間の流れを作って要素を積み上げていくから、持久力が必要。一方で、ドラマや映画は撮影の時系列がバラバラです。ラストシーンを最初に撮ったりすることもありますので、そのシーンにどれだけ演じられるか瞬発力が勝負。まったく別物だと感じます。
今は、舞台の稽古に入っていますが、1週間先、1か月先はどうなっていくのかと、楽しみです。この期間中、自分が何に気付いて、どのように本番に臨み、それを終えたときに、どんな自分に変わっていくのでしょうね」

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緊張したっていい。そのパワーをいい方向に使って行けたら

俳優・伊藤英明さん
「緊張してはいけないという強迫感が今は、緊張していいんだと受け入れられた」(伊藤英明さん)

「本番のことを考えると、緊張します。でも『橋からの眺め』に出会うまでは、緊張してはいけないという強迫感がありました。でも今は、緊張していいんだと受け入れ、いい方向に使っていきたいと思うようになりました。共演者もほとんどが初めての方です。マルコ役の和田君(和田正人)と、何度か共演したことがあるくらい。ただ、姪のキャサリンを演じる福地桃子さんは、彼女が小学生の頃から知っており、一緒に舞台に立てることが楽しみです。
稽古を通じて、みんなでパフォーマンスを引き出し合い、僕自身も上がっていきたい。これが今の目標。おかげさまで、充実した稽古の日々を過ごしています。きっといい作品になりますし、してみせます。ぜひ、観に来てください」

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■PARCO PRODUCE 2023「橋からの眺め」

 

1950年代のアメリカを舞台に、イタリアからアメリカへと渡った移民の一家を描いた物語。港湾労働者のエディ(伊藤英明)は、妻・ビアトリス(坂井真紀)と最愛の姪・キャサリン(福地桃子)とともに暮らし、家族のために懸命に働いていた。そんなある日、違法移民として、妻の従兄弟のロドルフォ(松島庄汰)とマルコ(和田正人)がやってくる。キャサリンとロドルフォはやがて惹かれ合うようになる。我が子のようにキャサリンを育ててきたエディはそこで何を思うのか。“男性らしさ”に固執するエディが選んだ選択肢はとは? ひたむきに生きる男の悲劇を描いた社会派ドラマ。

作:アーサー・ミラー
翻訳:広田敦郎
演出:ジョー・ヒル=ギビンズ
出演:伊藤英明、坂井真紀、福地桃子、松島庄汰、和田正人、高橋克実

■PARCO PRODUCE 2023「橋からの眺め」
2023年9月2日(土)~24日(日)
東京都/東京芸術劇場 プレイハウス
2023年10月1日(日)
福岡県/J:COM北九州芸術劇場 大ホール
2023年10月4日(水)
広島県/JMSアステールプラザ 大ホール
2023年10月14日(土)・15日(日)
京都府/京都劇場


俳優・伊藤英明さん
シャツ¥880,000・Tシャツ¥57,200・パンツ¥862,400・靴¥187,000(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン〈ボッテガ・ヴェネタ〉) その他/スタイリスト私物
伊藤英明さん
俳優
いとう・ひであき/1975年岐阜県生まれ。1997年にドラマ『デッサン』で俳優デビュー。2000年に『YASHA―夜叉―』でドラマ初主演、同年に『Blister』で映画初主演とキャリアを重ねる。そして、2004年主演映画『海猿 ウミザル』が大ヒットしシリーズ化。テレビドラマなども話題に。以降、話題作への出演を続け、最近は2023年『レジェンド&バタフライ』に出演。海外作品には2021年『エイジ・オブ・サムライ:天下統一への戦い』(Netflix)などがある。岐阜県応援大使に就任。9月2日より自ら企画・演出・出演するバラエティ『岐阜英明』ぎふチャンが放送開始予定。
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※この記事は8月18日〜9月2日の記事を再掲載したものです。

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WRITING :
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