もう役者をやめようと思ったくらい(笑)、すごい才能の皆さんが、この映画を作り上げてくれました(齊藤さん)
――窪田さんは、初の“齊藤組”への参加となりましたが、監督としての斎藤さんについてどう感じられましたか?
窪田「(齊藤)工さんが監督している作品、もうそれだけで面白いキーワードが揃っていて、嬉しくて飛び込ませてもらいました。現場では、最初ちょっと不思議な感じはあったんですけど、でもその違和感が逆に心地よかったのを覚えています。
役者の立場ではあまり意識しないのですが、監督である工さんはうんと広い視野をもって、海の向こうも見据えながら世界観を構築していて。工さんの作った広い箱庭のなかで、自由に遊ばせてもらったな、という印象です」
齊藤「このプロジェクトが、そもそもコロナ前に発足したんですけど、道筋としてはかなり険しい道でした。ただ、演じてくださる方、演じられる方というのが非常に限られている中で、気づけば頭の中に窪田正孝さんというイメージがあった。それこそ家でいうところの柱のような存在でしたので、窪田さんには最初から最後まで助けていただきましたね」
窪田「工さんの現場ですごく印象的に残っているのが、現場で『音楽をかける』ことで、みんなの共通意識をつくりあげる作業。役者って、本来“ひとりぼっち”っていうか、孤独な仕事なんですが、現場で孤独を感じなかったっていうのは、貴重な体験でした」
――他に、齊藤監督の演出で印象的だったことはありますか?
窪田「ワンカットの長回しで、外から家の中の2階に上がっていくまで撮るっていうシーン。家という生き物の体内に入っていくようなイメージが僕の中に生まれて。家というものの体内の中に、自分という異物がずっと潜んでいるというか、吐き出したくなるような嫌悪感がありました。ああ、物事やストーリーの本質を理解しているからこその演出だな、と」
――一方、齊藤監督が、窪田さんという俳優の“すごみ”を感じたシーンは?
齊藤「それはもう、終始でしたね。ひとつ挙げると、終盤の、実家でのシーンで、母親とふたりで話をするところ。スケジュールの組み立てがうまくいかなくて最初の方に撮ることになってしまって、気持ちの組み立てが難しかったかと思いますが、窪田さんは全方位的に、常にそのキャラクターとしてそこにいてくれた。結果、顔が写らなくても背中だけで全てが伝わるものになっていたんです。それを感じたのは編集作業の段階でしたが、演者の力を目の当たりにすることとなりました。
窪田さんだけじゃなくて、他の方たちも含めて、すごい俳優さんが集まってくれて。もう、同業者としては、“僕には無理だな”とさえ思いましたね(笑)。それはでも、大変幸福なことで、すごい瞬間をたくさん切り取れたと思っています」
■映画『スイート・マイホーム』9月1日公開!
2018年に第13回小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子のホラーミステリー小説「スイート・マイホーム」を映画化。
スポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘のために念願の一軒家を購入する。地下の巨大な暖房設備により、家全体を温めるその家は、「まほうの家」の呼び名の通り、冬は寒冷な長野県では理想的な物件だった。マイホームでの幸せな生活をスタートさせた清沢一家だったが、その幸せはある不可解な出来事をきっかけに恐怖へと転じていく。
<製作概要>
出演:窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、窪塚洋介、他
監督:齊藤 工
原作:神津凛子「スイート・マイホーム」(講談社文庫)
脚本:倉持 裕
音楽:南方裕里衣
製作幹事・配給:日活 東京テアトル
制作プロダクション:日活 ジャンゴフィルム
企画協力:フラミンゴ
(C)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (C)神津凛子/講談社
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- YUJI TAKEUCHI(BALLPARK)
- STYLIST :
- 三田真一(齊藤さん分)、菊池陽之介(RIT inc./窪田さん分)
- HAIR MAKE :
- 赤塚修二(齊藤さん分)、菅谷征起(GARA)(窪田さん分)
- 取材・文 :
- 南 ゆかり