「おっとり」は「心に余裕があって些細なことにはこだわらない」「性格や態度が鷹揚な様子」を表す言葉です。「おっとりした人」という言葉からは、笑顔が優しい柔和な人がイメージされますね! では「おっとり刀」の意味はご存じですか? これは、私たちが知っている「おっとり」と関係あるのでしょうか。今回は「おっとり」の正確な意味と使い方、漢字表記の「押っ取り」についても解説します。

【目次】

漢字表記すると逆の意味の言葉になります。
漢字表記すると逆の意味の言葉になります。

【「おっとり」は「漢字」にすると「意味」が真逆に!】

■意味

「おっとり」は「人柄、態度などが鷹揚で、こせこせしていない様子」を表す言葉です。「こせこせ」とは「心にゆとりがなく、態度が鷹揚でない様子」「些末なことにこだわる様子」を表す語です。つまり「おっとり」とは「心に余裕があって些細なことにはこだわらない」というニュアンスも含まれます。また、「おっとり」は「日差しや辺りの様子などが穏やかな様子」も表しますが、現在ではあまり使われていません。

■「漢字」表記の「押取(おっとり)」は別の言葉  

漢字で「押取」と表記する「おっとり」もありますが、こちらは「急の用事。急場」や「今すぐに。急いで」と、正反対の意味を表す別の言葉です。

■「おっとる」とは? 

「おっとる」の漢字表記は「押っ取る」で、前述の「押取」の語源です。もともとは「おしとる」だったものが音変化して「おっとる」になりました。「 急いで手に取る」「すっかり手に入れる」「相手の言葉をすぐに引き取る」といった意味をもちます。

■「押っ取る」の「由来」は?  

「おっとる」の「おっ」は、接頭語「押し」が音変化したものです。接頭語「押し」は、動詞の前に付いて意味を強調し、「無理に」「派手に」「激しく」といった意味を加える働きがあります。例えば「押し入る」の「押し」も接頭語で、「強引に入り込む」という意味になります。また、「おっとる」と同じように音変化した単語に「おっぴろげる」「おっぱじめる」「おったまげる」などがありますよ。


【「おっとり刀」の意味とは?】

普段は刀など手にしたことのないお嬢様が、品よくゆったり刀を振るう…「おっとり刀」をこんなふうに勘違いしていた人はいませんか? 正しい意味はまったく逆で、「急な出来事で刀を腰に差す暇もなく、手に持ったままであること」と「急いで駆けつけること」のふたつの意味があり、後者の場合は「おっとり刀で駆けつけた」のように用います。侍や武士が刀を携帯していた時代にできた言葉で、刀を手に持ったまま急いで駆けつける様子を形容しています。同じ用法で「適当に、またはちょっと粋に差した笄(こうがい)」を「おっとり笄」といいます。


【ほめ言葉?「おっとりしてる人」の特徴】

「おっとり」はゆったりと落ち着いている様子から、ポジティブな意味で使われることが多い言葉です。

■性格がのんびり大らか。マイペース

■小さなことにこだわらず、ゆったりとしている

■気持ちに余裕がある

■言動に落ち着きがあり、せかせかしない

■細かいことにこだわらない

■相手に緊張を強いる威圧感がない

■仕草や話し方などがゆっくり

■素直


【ビジネスで評価される「おっとり」がわかる「例文」3選】

■1:「コンペ前、チームスタッフ全員が心の余裕を失っていたが、彼女のおっとりした発言にその場の空気が和んだ」

■2:「彼はおっとりした性格なので、議論が白熱しても決して声を荒らげることはなかった」

■3:「彼女のおっとり構えた品のよさは、気難しい取引先にも好意的に迎えられた」

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「おっとり」の対義語は「短気」「せっかち」です。緊張感漂うシーンでは、その場の空気を和ませてくれる「おっとりした人」は貴重な存在ですね。「おっとり」には「のんびり」といったニュアンスも含まれますが、「行動が遅い」などネガティブな意味で使われることはあまりありません。「有能で仕事が速く、性格はおっとり」は実現可能ですし、かっこいいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) :