俳優の水川あさみさん、ペ・ドゥナさん、プロデューサー・鷲尾賀代さんがケリング『ウーマン・イン・モーション』に登壇

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】に参加の俳優の水川あさみさん、ペ・ドゥナさん、プロデューサーの鷲尾賀代さん
左から/映画監督の是枝裕和さん、俳優の水川あさみさん、韓国を代表する俳優でハリウッドでも活躍中のペ・ドゥナさん、プロデューサーの鷲尾賀代さん

2023年11月1日(水)大盛況のうちに幕を閉じた「第36回東京国際映画祭」。期間中、公式プログラムとして映画界における女性を取り巻く環境について語り合う【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】が開催され、俳優の水川あさみさん、韓国を代表する俳優でハリウッドでも活躍中のペ・ドゥナさん、そしてプロデューサーの鷲尾賀代さんが登壇されました。

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】に参加の俳優の水川あさみさん、ペ・ドゥナさん、プロデューサーの鷲尾賀代さん
映画監督の是枝裕和さん

冒頭、昨年開催された同イベントに出席され、自身も映画界の労働環境改善の取り組みをされている映画監督の是枝裕和さんが登場し、

「映画の現場で活躍する女性たちの話や、何が課題なのかを語り合う『ウーマン・イン・モーション』が東京国際映画祭の一環として開催されることは、僕は大きな進歩だと思っています」と、開催を祝福するオープニングスピーチを披露されました。

日本、韓国、アメリカと、登壇された皆さんそれぞれが活動する映画業界で、女性を取り巻く環境や未来への課題について積極的な意見交換が繰り広げられた今回のトークセッションについて、当日の様子をレポートします。

ペ・ドゥナさん
俳優
1979年、韓国・ソウル特別市出身。漢陽大学演劇映画科卒。舞台俳優の母キム・ファヨンの影響を受け、幼い頃から演技に興味を持つ。モデルなどを経て、1999年、日本映画『リング』の韓国リメイク『リング・ウィルス』で“貞子役”にあたるパク・ウンソを演じ映画デビューを果たし、ポン・ジュノ監督の長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』(00年)でブレイク。百想芸術大賞主演女優賞を受賞した『子猫をお願い』(01年)、パク・チャヌク監督の『復讐者に憐れみを』(03年)、ポン・ジュノ監督の『グエムル -漢江の怪物-』(06年)など国内で着実にキャリアを積む一方、ウォシャウスキー姉妹が手掛けた『クラウド アトラス』(12年)、『ジュピター』(15年)などでハリウッドにも進出。また、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』(05年)、是枝裕和監督の『空気人形』(09年)、『ベイビー・ブローカー』(22年)など日本人監督の作品でも馴染み深い。正義感の強い刑事を演じて注目された『私の少女』(14年)のチョン・ジュリ監督と2度目のタッグとなる『あしたの少女』(22年)がこの8月に日本公開された
水川あさみさん
俳優
1983年、大阪府出身。15歳で『劇場版 金田一少年の事件簿 上海人魚伝説』(97年)でスクリーンデビュー。主演作『滑走路』(20年)や『喜劇 愛妻物語』(19年)が高い評価を受け、第94回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、第75回毎日映画コンクール女優主演賞など数々の映画賞を受賞。2022年、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」シーズン4の1作『おとこのことを』(22年)で監督業に進出した。2023年は、9月29日より公開中の『沈黙の艦隊』、10月27日公開の『唄う六人の女』など話題作が続く。エグゼクティブ・プロデューサーを河瀨直美が務めた、村瀬大智監督の『霧の淵』が公開待機中。11月3日より倉持裕演出の舞台『リムジン』、2024年2月23日よりケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の舞台『骨と軽蔑』が上演予定。
鷲尾賀代さん
プロデューサー
兵庫県出身。青山学院大学卒業後、新卒社員としてWOWOWに入社し、営業部に配属。映画部へ異動後は、日本語吹替制作、オリジナル番組制作、放送権購入に従事。2011年に米・ロサンゼルス事務所を開所、代表駐在員として赴任。メジャースタジオを含む契約交渉と、国際共同制作を手がける。共同制作作品にはマーティン・スコセッシ監督の『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス 50年の挑戦』(14年)やロバート・レッドフォードとヴィム・ヴェンダースら監督による6部構成のテレビシリーズ『もしも建物が話せたら』(14年)などを含む。また、HBO Maxとの共同制作による日本を舞台としたドラマシリーズ『TOKYO VICE』(22年〜/マイケル・マンほか監督)にもエグゼクティブ・プロデューサーとして参加。共同制作映画『私たちの声』は2022年の米・アカデミー賞歌曲賞にノミネートを果たした。2021年10月に日本に帰任、現在は事業部のチーフプロデューサーとして番組制作を担当。2021年3月には米・バラエティ誌による「世界のエンターテインメント業界でインパクトを与えた女性」の一人に選ばれ、同年10月と2022年10月には、2年連続で米・ハリウッド・リポーター誌の「全世界のエンターテインメント業界で最もパワフルな女性20人」にも選出。全米製作者組合(PGA)会員。

俳優・水川あさみさんが感じた、日本の映画界における【女性の働き方】とは

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】に参加の俳優の水川あさみさん、ペ・ドゥナさん、プロデューサーの鷲尾賀代さん
 

『ウーマン・イン・モーション』とは、カメラの前と後ろで活躍する女性たちに光を当てることを目的に、カンヌ国際映画祭のオフィシャル・パートナーとなったグローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング」が、同映画祭の公式プログラムとして2015年に発足。東京国際映画祭では2019、2022年に続いて今年が3回目の開催となります。

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】
俳優の水川あさみさん

映画界における女性を取り巻く環境の変化をテーマに行われた今回のトークセッションで、俳優の水川あさみさんは実際にご自身が経験してきた現場を振り返って、

「女性のスタッフが増えてきたと感じますし、女性の撮影監督や(照明など現場の)チーフを目にすることも増えました。でも映画業界においては、女性が年齢を重ねていき、結婚して子どもを産んだり、家庭を持ちながら仕事をすることと、上手くバランスをとれないことの方がまだまだ多いと正直、感じます」と、率直な意見を述べられました。

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】
プロデューサーの鷲尾賀代さん

一方、『WOWOW』にてチーフプロデューサーとして国際共同制作と洋画配給を担当し、直近では共同制作を手掛けた映画『私たちの声』(23年)で2023年の米・アカデミー賞歌曲賞ノミネートを果たしたプロデューサーの鷲尾賀代さんは、アメリカでの10年以上に及ぶプロデューサー活動のなかで「#MeTooムーブメント」を経験し、

「それまで白人男性がメインで雇われていたポジションに、意図的に必ずマイノリティか女性を、という声が一気に上がりました。私自身は、実力のある人を雇って、それがたまたま全員白人男性や黒人女性でもいいのではと考えていました。でもアメリカの方から、今まで白人男性がずっと雇われてきたのだから、女性やマイノリティの方はまだスタートラインにも立ってなく、経験を積んできた白人男性と比べるのは不公平だ。だから今は意図的に機会を与えるために女性やマイノリティを雇って、その後に、平等に実力で比べられる時代がくるのだ、と言われハッとしました。アメリカはこうして短期間で業界がガラッと変わったので、そういう変化を恐れないアメリカの底力も知りました。日本は変わることがものすごく不得意なので、最初はコピーからでもいいのでやるべきだと思います。韓国の映画界から学ぶことも今はいっぱいあります」と明言。

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】
俳優のペ・ドゥナさん

この意見を受けて、韓国をはじめ、ハリウッドでも活躍している俳優のペ・ドゥナさんは、

「いつも『なぜ韓国には男性の映画が多いのだろう?』と疑問を持っていました。男性の主人公が多いですし、男性俳優の方が興行が多いからなのかもしれませんが、そうであれば、魅力的な女性作家が生き生きとした女性像を描き、素敵な女性が多く登場する良い映画を作れば、お客さんは来てくれる。そのような女性作家たちの活躍を、心の底から祈っています」と、未来への希望を語られました。

「第36回東京国際映画祭」公式イベント【TIFFスペシャルトークセッション ケリング『ウーマン・イン・モーション』】に参加の俳優の水川あさみさん、ペ・ドゥナさん、プロデューサーの鷲尾賀代さん
 

最後に、映画業界で将来、働くことを目指す女性たちへのアドバイスを求められ、鷲尾さんは

「若い方はアメリカのフィルムスクールに行くのが、一番早い手だとは思います。日本もだいぶ変わってきたと思いますが、この業界は本当に厳しい世界。日本の文化として、出る杭は打たれるというのがありますし、まず、打たれてもめげないメンタリティを持つことが大事。また、努力とあわせて、運もすごく重要な要素。チャンスはほんの数回しかやってこないものだから、それをつかみ取る準備を常日頃からしておくこと。それが私自身、今までずっとやってきたこと。そうすれば誰かがどこかで見てくれているはず」と熱いメッセージを語り、水川さんも

「女性であっても男性であっても、何にどう関わっていくか。その準備をして、何が起きても自分の確固たる気持ちは変わらないという強いマインドを持ち続けることがすごく大事な気がします」と話されました。

最後にぺ・ドゥナさんが

「『出る杭は打たれる』という言葉に衝撃を受けましたが、出る杭が集まっていれば、どこに当てたらいいのか分からなくなるかもしれません。“当たって砕けろ” で、ぶつかってみる。始めようとしている人には、勇気と希望を伝えたいです」と、温かいエールを送りました。


映画界でグローバルに活躍する3人から発せられた率直な意見が、近い将来、より多くの女性たちに活躍の場を与え、そしてもっと働きやすい世の中になりますように。こうした着実な一歩が未来を大きく変えていくことを願ってやまない、貴重なトークセッションとなりました。

 

この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
松野実江子(Precious.jp)
画像提供 :
ケリング