専門店をはじめ日本のセレクトショップには、スーツを中心に展開する多くの優れたイタリアブランドがある。北イタリアの精緻な生産技術を持つファクトリーブランドから、南イタリアの手仕事を多用した規模の小さい家族経営のブランドまで。名前を挙げればキリがないが、ひとつ気になっているのは、本来展開するべきブランドが、長らく日本から遠ざかっていることだ。2009年に撤退してから、もう約10年になる。

 2018年日本再上陸イタリア高級紳士スーツブランド

「カナーリ」のジャケット

ウール、シルク、コットンを混紡した爽やかな生地を使った、グレンチェックのジャケット。日本市場向けに開発した型紙と芯地を使い、これまで以上に日本人の体型にフィットするスタイルに仕上げた。¥230,000/ 2018年2月販売予定(エストネーション〈カナーリ〉)

2017年6月、私は、ファッションウイーク中のミラノに入り、同時期に開催されるプレゼンテーションを見るために、久しぶりにカナーリも訪ねた。モダンなガラス張りのビルのワンフロアが展示会場だった。フロアに入ると、遠くから「ミスター・ヤベ」と呼び声があった。

「パオロさん?パオロさん!」。カナーリ3代目のパオロ・カナーリ氏と久しぶりの対面。

新作を見ながら、お互いの近況を話していると、カナーリ氏はタイミングを見計らって、「来年、日本でカナーリの展開を再開します」と言ったのだ。

日本で展開していた頃のカナーリは、圧倒的なトータルルックを提案。主要アイテムのスーツは、スーパー180’Sを超える極薄の生地でも、完璧なつくりを誇っていた。高度な技術が必要な薄手の生地によるスーツづくりを、イタリアでいち早く実現したブランドのひとつが、カナーリなのだ。世界のVIPにも愛され続けている。

個人的に強く記憶に残っているのは、バラク・オバマ氏がアメリカ大統領だったとき、ニュースの映像で見たカナーリのスーツを着用した颯爽とした姿だ。カナーリは、自社のファクトリーをイタリア国内に6工場も構え、完全なるイタリア生産にこだわる。卓越した服づくりは、まさに世界トップクラスである。展示会場には、スーツのシルエットを15種類も用意し、シャープなモデルから、手技が際立つサルトリアルスタイルまで並び、どれもがカナーリらしいスマートな香りを漂わせていた。

2018年、待望のカナーリが再び上陸する。

※2017年冬号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2017年 冬号Butler Bertie's Clippingより
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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クレジット :
撮影/小寺浩之(ノーチラス) スタイリング/大西陽一(RESPECT)
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