「象徴」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かべるのは「平和の象徴」、ハト、でしょうか? 「平和」のように「抽象的で言葉にするのが難しいもの」を、「ハト」といった「具体的なものに置き換えて表現すること」を「象徴」と言います。知っているつもりの単語であっても、理解が曖昧になっているのは、よくあることです! 今回は「象徴」の意味や「類語」、使い方がわかる「例文」を解説します。

【目次】

象徴とは「シンボル」の訳語と言われています。
「シンボル」の訳語と言われています。

【「象徴」の「意味」など「基礎知識」】

■意味

小学館『デジタル大辞泉』によれば、「象徴」とは「抽象的な思想・観念などを、具体的なものごとによって理解しやすい形で表すこと。また、その表現に用いられたもの。シンボル」とあります。つまり、私たちが目や耳などでは直接知覚できない何か(意味や価値など)を、具体的でわかりやすい姿や形に置き換えて示すことを「象徴」と言うのです。例えば、十字架でキリスト教を、ハトで平和を、あるいは王冠で王位を表すのは、社会的に共有された了解ごとですね。これが「象徴」です。

■語源・由来

日本語の「象徴」という言葉は、フランス語[symbole(サンボル)]の訳語です。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「2024年の大河ドラマ『光る君へ』の主人公は紫式部。世界的に有名な『源氏物語』は、日本文学の象徴ともいえる」

■2:「富士山は日本の美の象徴とも言える存在だ」

■3:「都会人にとっては癒やしとなるのどかな田園風景も、田舎育ちの私には退屈の象徴でしかない」

■4:「そのドラマは、主人公が離婚届けに判を押し部屋を出て行くという、夫婦の別れの象徴的なシーンで終わっている」

「象徴」はしばしば「象徴的」という言葉で使われます。「的」は名詞について「そのような性質をもったものの意」を表します。つまり「象徴的」とは「まるで象徴しているかのような」という意味になります。


【「類語」「言い換え」表現は?】

「象徴」の「類語」はいくつかあります。いずれも「言葉や物では表わせないような事象や心象を、それを連想させるような言葉や具体的な事物で置き換えて表わすこと」を意味する表現です。

■シンボル

「シンボル」は「象徴」の語源(となる英語名)のカタカナ表記。「象徴」と並んでもっとも一般的に使われる言葉です。

■「表象」「表徴」

どちらもあまり馴染みのない言葉ですが、「象徴」と同じ意味をもつ文章語です。そして、「表象」は、哲学では、意識の中に表われる内容、観念を指します。

■形容

■たとえ

■比喩

この3つの言葉は、「物事の説明にほかのものごとを借りて表現すること」を意味します。「象徴」と異なるのは、「女性を花にたとえる」ように、対象が「言葉やものでは表わせないような事象や心象」に限定されない点です。

■イメージ

イメージはもともとは「肖像・映像」を意味する言葉でした。そして、文学の世界では「心象」や「形象」を意味し、「ある観念を形あるものに表現すること」をイメージと言います。


【「象徴主義」「象徴機能」の意味は?】

ここでは「象徴」を含んだ四字熟語をご紹介します。

■「象徴主義」とは?

「象徴主義」とは、狭義には、1885年ごろから世紀末にかけてパリを中心に、高踏派や自然主義の文学への反発からおこった文学運動。広義には、19世紀後半から20世紀前半に及ぶひとつの文芸思潮を指します。文学を出発点に、その影響は絵画、音楽、演劇など、あらゆる芸術分野に及びました。概念や感情などの抽象的な事柄を、直接的に説明しようとせず、それを彷彿とさせるような代替表現によって描写する立場や手法を「象徴的な表現」と言います。「象徴主義」は、象徴的な表現を積極的に芸術に取り入れようとした立場を指します。

■「象徴機能」とは?

目の前にない特定の何かを、別のもの(言葉、記号など)を使って、表現する機能のことを「象徴機能」といいます。「象徴機能」の代表的なものは「言葉」です。例えば、「信号の赤」が「止まれ」を意味する、あるいは「わんわん」が「犬という動物」を意味すると言った置き換えが可能になるのです。


【「英語」にすると?】

前述の通り、「象徴」は、フランス語の[symbole]の訳語です。そして[symbole]に相当する英語表現は[a symbol ]のほか、[emblem]も使えますよ。

・The dove is a symbol of peace.(ハトは平和の象徴です)

・The olive branch is an emblem of peace.(オリーブの枝は平和の象徴です)

***

曖昧模糊としたものも、何か具体的なもので「象徴」してみると、輪郭がはっきりしてくるものです。あなたを「象徴」するものは何でしょう? 花でも動物でもファッションアイテムでもいいのです。「私のシンボルアイテム」をもっていると、個性をアピールしやすく、迷いも少なくて済むかもしれません。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :