世界最古のウォッチメゾンとして、名品の腕時計を輩出し続けている“ヴァシュロン・コンスタンタン”。「ONE OF NOT MANY」という、少数精鋭の選ばれしアーティストとコラボレーションを行っていることをご存じでしょうか? 2023年秋、アメリカ人の芸術家ザリア・フォーマンさんがこのキャンペーンの一員として起用されました。
ザリアさんはこれまで秘境の地で自然に触れ、それをカメラで撮影。その写真や記憶をチョークを使ってリアルなタッチで再現したアートを制作しています。今回、”ヴァシュロン・コンスタンタン”のために制作した特別な作品「フェルスフェアラ、アイスランド no.3」が日本で初めて展示。ザリアさんも作品と共に来日を果たし、お披露目のイベントが行われました。
イベントの開催地として選ばれたのはスノーシーズン真っ盛りの北海道。話題のニセコを拠点に、ザリアさんを囲んで様々なコンテンツが展開されました。まずは、“ヴァシュロン・コンスタンタン”のために制作された作品「フェルスフェアラ、アイスランド no.3」を自身の言葉で解説。壁にかかった作品は大きくダイナミック。自然の偉大さを伝えるため、大型の作品でで表現をしているそう。黒を背景に、アイスランドのダイヤモンドビーチの浜辺で見た美しい氷河のかけらを細密に再現。黒と白、グレー・・・近寄るといろいろな色が使われていることに驚きます。複雑なグラデーションを描く世界に思わず引き込まれて・・・。
2日目はザリアさんと同じ作品制作方法で私たちもチョークアートにトライ! まずは「オーヴァーシーズ」を相棒に、樹氷の名所であるオロフレ峠の山中で、ザリアさんと一緒にアートの題材をハンティング。スノーシューを履いて進むと現れる、雪をたたえた樹木はそれだけでアート。時間のたつのも忘れて夢中で描きたい木や風景を探しました。手元の相棒、防水機能を備えた「オーヴァーシーズ」は、エレガントな頼もしさでスノースタイルと気分を格上げしてくれます。
それぞれに題材を決めて向かったワークショップには、ザリアさんがセレクトしたカラーパレットのチョークセットが! 白からブルー、黒へと連なるカラーレンジが絵心をかきたてます。
盛り上がった作品制作の後は、人里を離れ静寂に包まれたニセコ積丹小樽海岸国定公園の美しい森の中にある、知る人ぞ知る宿泊施設「SHIGUCHI」へ。築150年の3棟の古民家の中に、アイヌや北海道をはじめとする日本の歴史と文化を感じるアートや器がディスプレイされていて、まるでギャラリーのよう。「SOMOZA」では土地の食材と地元のお酒をペアリングしたディナーに舌鼓。アート談義もはずみ、真冬の夜が更けていきました。
「物心ついた時から常に私の周りにはアートがあり、それを仕事にしていくのは私にとってとても自然なことでした」とザリアさん。海や氷河が身近な環境で育ち、その美しい景色は常に心の中にあったそう。
自らの作品の題材に氷河を選ぶきっかけとなったのは、2006年に同じく芸術家の母と訪れたグリーンランドでした。「雄大な美をたたえた氷河を前に感動し、覚醒するような体験でした」と語ります。
「制作中は素材の形や色、質感に全身で向き合い、ある種瞑想のような境地に至ることもあります。長い時間をかけて制作しますが、その間に素材を撮影した問には気づかなかったディテールなど、新たな発見も」。作品で使うチョークはドライな質感や、自在にぼかせることで、繊細な美しさを表現するのに適しているそう。
「私の作品は一見するとモノトーンのシンプルな色調ですが、近くに寄るといろいろな色が使われていることに驚くでしょう。私はポジティブな人間です。地球環境の悪化は深刻ですが、美しい作品を通して持続性に対しての希望や愛も伝えたいと思っています。アートとはアクションなので」。
「ONE OF NOT MANY」の一員であることとアーティストであることに共通点を見いだしているザリアさん。
「“ヴァシュロン・コンスタンタン”の時計製造と自分の作品には多くの共通点を感じています。時間をかけ、思いを込めて類い希なるものを生み出すところが特に。また、時間について語る機会を得たこともうれしいですね。氷河ひとつとっても、何千年という時間をかけてつくられる。これまで時間という概念に思いを馳せることがありましたが、それを言葉にすることはありませんでした。この取り組みでアートと時計を表現や制作という視点でつなぐことができることは、とてもやりがいのあることです」。
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- Precious.jp編集部