ウユニ、プラハ、アイスランド、東京――世界の美しい風景と共に紡がれる純愛映画『四月になれば彼女は』。藤井風さんが主題歌『満ちていく』を提供し、その映像美と切なさが迫る予告が話題に。主人公の精神科医・藤代俊を佐藤健さん、そして、結婚を直前に控えて謎の失踪を遂げる藤代の婚約者・坂本弥生を長澤まさみさんが演じています。全3回のインタビューシリーズ第1弾では、長澤さんが語る恋愛観と本作への深い洞察をお届け。長澤さんの温かな眼差しと芯の強さを通じて、恋と愛の本質を紐解きます。
疑問や不安をそのままにせず、お互いに理解しようとする姿勢をもっていたい
――本作に出演しようと思ったきっかけは？
山田智和監督のショートムービーを見て、その独特の世界観に惹かれ、一緒に作品をつくってみたいなと思いました。信頼する川村元気さんの小説が原作だったこともありますね。川村さんは人の普遍的な部分を深く掘り下げるのが得意で、少しこじらせているけれど共感を呼ぶ人物たちの人間模様を描き、日常の物語をファンタジーのような世界観で表現している。さすがだなと思いました。
――ラブストーリーとしての魅力はどんなところでしょう？
恋愛に対して少し怖さや、食わず嫌いのある人へ向けてつくられた作品なのかなと。「興味がない」と言いながらも、人はどこかで恋や愛に惹かれる部分があって。今の時代を映しているんじゃないかなと思います。私も久しぶりにラブストーリーを演じたので、少し気恥ずかしさがありました。でも、「愛すること」「愛されること」はとても大切だと常々思っているので、自分自身、いい勉強になったと思います。
――静かな空気感の中で思いが交錯する映画。コメディやアクションなど様々なジャンルを演じてきて、本作はどういったところに違いを感じましたか？
登場人物たちがみんな受け身というか、天から何か降ってくるかのように運命的なものを待っているところでしょうか。自分からは行動に移さずに、悩みとぶつかっているような。この作品を通して、なぜ自分が〝与える側〟にまわろうとは思わないんだろう？ あちら側にいてもいいんじゃない？ という問いに向き合わされるような感覚があります。
とはいえ、恋をすれば「自分が特別になりたい」「一番でありたい」という欲求が出てくるものですよね。周りが見えなくなったり、理想を求めてしまったり、現実を見失うことが恋の不思議でもあるんじゃないかと。理想と現実のどちらも大事だと理解できますし、欲張りでいいとも思うんです。恋も愛も、常に溢れていたいものですから。
――主人公である藤代の婚約者・坂本弥生が謎の失踪を遂げ、物語は動いていきます。長澤さんが弥生を演じる上で、挑戦だったことは？
弥生は本当に行動が予測不能で、時には「本当にそんなことするの？」と思うほど大胆なんです。正直、最初は理解しづらい部分が多かったですね。でも、役を演じていく中で、彼女の藤代への深い愛情が、その大胆さの根底にあるんだと感じました。愛情深くて純粋な心を持っている人なのかなと。
ちゃんと愛に正直だし、自分の思いに従って行動している。私にはあまりない部分でしたが、彼女が不安になる感情の根源を受け止めるように心がけていましたね。
――本作を通して、登場人物と共に幸せのありかを探っていくような感覚にもなりました。
大人になると、自分の幸せをどこまで他人に求めていいのか考えます。ひとりでできることも増えていき、それは自分で掴み取るべきものなのではないかと。男女の関係性も時代と共に変わり、より対等になっていて。幸せになる方法はなんだろうと、自ら見つけ出すことが重要なテーマなのかなと思います。恋人同士であれば、ひとりよがりな「解」を探すのではなく、どう擦り合わせていくかも大切ですよね。
――本作では、長澤さん演じる坂本弥生が残した「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう？」という謎かけがカギとなりますが、長澤さんが思う「愛を終わらせない方法」は？
「どんな時も、お互いに理解しようとする姿勢をもつこと」かなと思います。疑問や不安をそのままにしても、なくならない。黙っておく優しさもありますが、関係を維持していきたいとか、より成長させていきたいと思うのであれば、相手と共有して向き合うことが大事なんじゃないかと。
それは恋人に限らず、どんな人間関係にも当てはまると思っています。何か疑問に思ったらちょっと巻き戻して、「あの時こう言っていたけど、あれって…」というように、話し合える友達が多くて。そういう人たちだからこそ、関係が続けられるんですね。
――言葉にして伝えることを大事にされているんですね。
そうですね。でも、いい関係性を築きたい相手に、愛を終わらせない方法を聞くというのは、矛盾する問いでもあって。そこは、弥生の弱さなのかもしれません。今を維持したいという安泰や安心を求める気持ちは自然なことですが、一方で人間の心は変化していくもので、自分が求めている理想を人に強要するのは違う。先々の心配で物事と向き合ってしまうと、築ける関係も築けなくなってしまうと思うんです。
自分の中に湧いた思いをどう伝えるか。とてもいい質問だったとしても、伝え方が悪いと相手を傷つけてしまって破綻していく可能性もありますよね。言葉は力が強いから、責任が伴う。だからこそうまく扱えるように、いい言葉を知りたいし、いい言葉を発していきたいなと思いつつ…。まだまだだなぁと反省ばかりです（笑）。
長澤まさみさんインタビューVol.02は3月23日に公開予定。こちらもぜひチェックしてみてください！
■映画『四月になれば彼女は』本日3月22日（金）より 全国東宝系にて公開！
【ストーリー】
精神科医の藤代俊（佐藤健）のもとに、かつての恋人で世界中を旅する伊予田春（森七菜）から手紙が届く。〝天空の鏡〟と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、10年前の初恋の記憶が書かれていた。時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生（長澤まさみ）と結婚の準備を進めていた。しかしある日突然、弥生は失踪してしまう。彼女が残したのは、「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」という謎かけ。春はなぜ手紙を送り、弥生はどこに消えたのか。ふたつの謎は徐々に絡み合い、やがてつながっていく。
「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、なぜ、やがては消えていってしまうのだろう」。愛する人の真実の姿とは――。ウユニ、プラハ、アイスランド、東京と世界の絶景と共に浮かび上がってくるのは、美しいだけではない人間の深淵。生きること、誰かを愛すること、その痛みさえ照らす純愛映画。
原作：川村元気「四月なれば彼女は」（文春文庫）
監督：山田智和
脚本：木戸雄一郎 山田智和 川村元気
撮影：今村圭佑
音楽：小林武史
出演：佐藤健 長澤まさみ 森七菜
仲野太賀 中島歩 河合優実 ともさかりえ
竹野内豊
主題歌：藤井 風「満ちてゆく」（HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA）
制作プロダクション：AOI Pro.
配給：東宝
（C）2024「四月になれば彼女は」製作委員会
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