大地から湧く名湯で疲労を回復し、心尽くしの料理に舌鼓を打つ…。温泉旅行といえば、その時期にしか味わえない季節ならではごちそうもお楽しみです。そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに、春の味覚を満喫できる温泉宿をピックアップしてもらいました。

今回ご紹介するのは、岐阜県関市にある「神明温泉 湯元すぎ嶋」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

旬の味覚を少量ずつ…いろりで味わう会席コースに舌鼓

奥美濃・岐阜県関市板取にある秘湯の温泉旅館「神明温泉 湯元すぎ嶋」。建物は築150年の古民家を現代風にリノベーションしたもので、歴史の重みと共にどこか懐かしい趣を感じさせる一軒宿です。

昔話の世界にタイムスリップしたような玄関。
昔話の世界にタイムスリップしたような玄関。
「湯元すぎ嶋」土蔵の特別室
土蔵の特別室。1階は囲炉裏の間で2階が寝室のメゾネットタイプ。

「こちらの宿は、『日本秘湯を守る会』の会員宿で、湯のよさは折り紙付き。そのうえ、個室のお食事処でいろりを囲みながら食す『いろり会席』がハイレベルで、食事のためだけでもわざわざ訪れる価値があると評判です」(植竹さん)

「湯元すぎ嶋」の料理の一例
山の恵みをたっぷり味わう春の料理の一例。

「コース料理に旬の味覚が巧みに取り入れられており、春は自然の息吹が感じられる山菜が目白押し。前菜からものすごく手が込んでいて、クレソンやうるい、花山葵などを小鉢で少量ずついただきます。山の幸を視覚と味覚でじっくり堪能できるのはこの時期ならではの醍醐味。椀物はたけのこや木の芽を添えたよもぎ豆腐で、もちもちの食感と染みわたるような出汁の深さにほっこりさせられました」(植竹さん)

「湯元すぎ嶋」の前菜
ひとつひとつ丁寧に作り込まれた前菜。

「その他、地鶏鍋や飛騨牛、川魚といった地物食材もおいしくいただくことができましたし、おしのぎの蕎麦は手打ちというこだわりよう。川魚は定番の塩焼きで提供されるだけでなく、上品な押し寿司や香ばしいごま揚げのアレンジで素材のよさが引き出されていて、随所に宿のおもてなし精神がひしひしと感じられました」(植竹さん)

「湯元すぎ嶋」の手打ちそば
自家製の手打ちそば。

竹林を抜けて貸切風呂へ…湯巡り気分で心身をリフレッシュ

「湯元すぎ嶋」の大浴場内湯
左の小さい浴槽がぬる湯。右の大きい浴槽が源泉を加温したあつ湯。

「温泉は、男女別の大浴場に貸切露天風呂が2か所。大浴場の内湯には、ぬる湯とあつ湯の浴槽があり、交互浴を楽しむことができます。泉質はアルカリ性単純温泉。とろとろした柔らかい浴感の湯が実に心地よく、いつまでも入っていたくなるほどです。山々の連なりが遠望できる露天風呂も風情満点で、鮮やかな新録に囲まれながらの湯浴みで身も心もリフレッシュ。もちろん湯上りには肌もツルツルとご機嫌になりました」(植竹さん)

「湯元すぎ嶋」の大浴場露天風呂
大浴場の露天風呂。

「竹林を抜けた高台にある2か所の貸切風呂も素敵です。そよ風に吹かれながら竹林の小径を通って温泉に向かうという非日常体験にときめきますし、山間の静寂な空間で誰にも気兼ねせずに独泉できるのはまさしく贅沢の極み。美食も湯巡り気分も堪能する欲張りな旅時間を過ごしたい人にぴったりな宿だと思います」(植竹さん)

貸切露天風呂に向かう竹林
竹林を通り抜けて露天風呂に向かうのが風流。
「湯元すぎ嶋」の貸切露天風呂
貸切露天風呂は秘湯感たっぷり。

以上、「神明温泉 湯元すぎ嶋」をご紹介しました。心づくしの郷土料理で山の幸を味わい、山間の秘湯で体の芯から癒されたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)