温泉旅行のメインは、言わずもがな“温泉”ですが、宿選びにおいて実は朝食メニューもかなり重要。慌ただしい日常では味わえない、旅館のスペシャルな朝ごはんを楽しみにしている人は多いのではないでしょうか。
名湯に癒されぐっすり快眠した翌朝、心づくしのごちそうでもてなされると、旅のフィナーレが多幸感に満ちたものに…。チェックアウト後も「本当にここに来てよかった!」という余韻にしみじみと浸れます。
温泉ジャーナリストの植竹深雪さんも、全国の湯宿を巡るなかで、趣向を凝らした珠玉の朝食に感動を覚えた経験がたびたびあるとのこと。そのなかからとっておきの6軒をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、長野県・南信州にある昼神温泉「石苔亭(せきたいてい)いしだ」です。
公式サイト
一口サイズの小鉢がズラリ!「短歌膳」で日本の朝ごはんを堪能する
長野県の南端にあり、豊かな自然に囲まれた阿智村。環境省が“日本一の星空”と認定した癒しの村に佇む純和風旅館が、今回ご紹介する「石苔亭いしだ」です。
名物のひとつは朝食の「短歌膳」。短歌の31文字(5・7・5・7・7)になぞらえ、31品で構成されており、ご飯、味噌汁に29種類の小鉢がズラリと並ぶさまは圧巻だと植竹さんは話します。
「洋食と和食から選ぶ通常の朝食プランもありますが、やはり特別プランの『短歌膳』は見た目からしてインパクト大。ただおかずの種類が多いだけでなく、『短歌膳』がユニークなのは、すべてが一口サイズという点です。漬物も魚も野菜もフルーツも、同じサイズの小鉢に整然と盛り付けられているのは、私が知る限りでは唯一無二のアイディアで、あれもこれも少しずつ食べたいという欲張りを叶えてくれます」(植竹さん)
「ご飯のおともが勢ぞろいした『短歌膳』は見た目の豪華さもさることながら、どの小鉢も主役級のおいしさ。野沢菜など信州らしさも感じられ、朝から華やいだ気分になります。普段の朝は少食という人でも、次はどれを食べよう…と楽しく味わっているうちに、完食してしまうのではないでしょうか」(植竹さん)
風情溢れる空間で「美人の湯」に癒されて…
大浴場は「石神」と「清水」の2か所。それぞれ内湯と露天風呂を備えており、朝晩で男湯と女湯が入れ替わるシステムです。
「大きな窓から優しい光が差し込む内湯も、巨石をダイナミックに配した露天風呂も風情たっぷり。露天風呂は一部が洞窟風呂風になっており、趣向を凝らした湯舟でリラックスできます。泉質は、単純硫黄泉。硫黄泉は美人の湯の泉質のうちのひとつで、血流促進効果やメラニン分解を促す効果が期待できることから“シミ予防の湯”ともいわれています。和のラグジュアリー感溢れるゆったりした空間にて、少しとろみのある心地よい浴感の湯に包まれるのは至福のひとときで、心身を十二分に癒すことができました」(植竹さん)
なんとロビーに能舞台が!和の文化を嗜み心にも潤いをチャージする
館内では、温泉以外にもシアタールームや、エステ、茶室などの設備があり、思い思いの寛ぎ時間を過ごすことが可能。さらに、ロビーにある能舞台も必見です。
「荘厳な門をくぐり、館内に足を一歩踏み入れた瞬間、そこはもう別世界。ロビーの能舞台では日替わりでさまざまな演目が披露され、夕食後の時間帯に宿泊客は無料で伝統芸能を鑑賞することができます。地元の食材を生かした信州会席料理に舌鼓を売った後は、和の文化を嗜み、さらに翌朝は『短歌膳』に感動! そんな非日常感満載の旅でリフレッシュしたい人におすすめの宿です」(植竹さん)
※1月中旬~4月初旬は、能舞台にひな人形やつるし飾りを展示する「2000体ひな飾り」開催のため休演。その他、上演スケジュールは公式ホームページをご確認ください。
以上、「石苔亭いしだ」をご紹介しました。見た目も味も思わず人に自慢したくなる「短歌膳」は、これを食するためだけでも南信州をわざわざ訪れる価値のある逸品。次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
問い合わせ先
- 石苔亭いしだ
- 住所/長野県下伊那郡阿智村智里332-3
客室数/全17室
料金/短歌膳確約プラン 朝夕2食付き1名 ¥34,100(税込)~ - TEL:0265-43-3300
- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)