一口に“温泉宿”といっても、そのスタイルは千差万別。温泉ジャーナリストの植竹深雪さんによれば、全国津々浦々の湯宿を巡るなかで、ときにはあっと驚くような斬新なサービスに出合うこともあるのだそう。

温泉の湯のよさは前提として、プラスアルファのおもてなしがあると、旅の思い出がよりいっそう印象深いものに…。せっかく旅に出かけるなら、とびきりの非日常体験で心身をリフレッシュしたいところです。そこで、植竹さんに“ほかにはない体験ができるユニークな温泉宿”をピックアップしていただきました。今回ご紹介するのは、長野県・浅間温泉にある「松本十帖」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

夜通し温泉も読書も!蔵書1万冊超の書店を備えた新感覚の湯宿に泊まる

信州松本の奥座敷として親しまれ、開湯1300年ともいわれる浅間温泉。今回ご紹介する「松本十帖」は、多くの文人・墨客に愛されてきた歴史ある浅間温泉のエリアイノベーションを目指した複合施設です。敷地内に「松本本箱」「小柳」という2つの温泉ホテルやブックストアやレストランなどを備え、さらに敷地外に2つのカフェを併設しています。

カフェ「おやきと、コーヒー」
チェックインはホテルから徒歩3分ほどにある古民家風カフェで行うのもユニーク。
おやきとコーヒー
ウェルカムサービスのおやきとコーヒー。客室への案内は15時からだが、チェックインは12時から可能。

「館内の一角にライブラリーを設けている温泉宿は少なくありませんが、『松本十帖』の場合、むしろ大きな書店に源泉かけ流しの温泉が付いている…という感覚です。蔵書数1万冊のブックストア『松本本箱』は、一般客向けの営業時間は12時から17時までですが、宿泊客ならば17時以降も24時間利用可能。夜通しでも読者三昧できる温泉宿というコンセプトが斬新です」(植竹さん)

ブックストア「松本本箱」
写真集や画集、エッセイや入門書を中心に蔵書は約1万冊。

「ただ蔵書が充実しているだけでなく、スタイリッシュな空間も魅力的。ゆったり寛げるソファ席のほか、半個室のようなおこもりスペースもあり、読書に耽るのに最適です」(植竹さん)

ブックストア「松本本箱」
書棚の裏には読書に没頭できる隠し部屋のようなスペースも。

「もともと大浴場があったところをリノベーションした読書スペースもユニーク。もちろん、湯は張っていませんが、浴槽に腰かけて温泉に浸かりながら本を読んでいるかのような気分を味わえます」(植竹さん)

ブックストア「松本本箱」
本棚と浴槽がコラボした不思議な空間。

「書架の配置のしかたも工夫が凝らされ、幅広いジャンルの書物や写真集の表紙や背表紙を眺めているだけでも知的好奇心を刺激されます。本好きの人にとってたまらない空間であるのはもちろんのこと、普段あまり読書に親しんでいない人でもつい気になる本を手にとってみたくなるのではないでしょうか」(植竹さん)

全室に露天風呂付き!洗練された客室で源泉かけ流しの湯を享受する

宿泊棟は、ブックストアと同じ建物にある「松本本箱」と、ファミリー向けの「小柳」の2種類。「松本本箱」がソフィスティケートされた大人の空間であるのに対し、「小柳」は居心地のよさにこだわった和モダンなホテルです。

ホテル「松本本箱」の客室
ホテル「松本本箱」の客室からの眺め。窓一面に北アルプスと夕焼けが広がる。
ホテル「松本本箱」の客室露天風呂
ホテル「松本本箱」の客室露天風呂。

「2つの宿泊棟はそれぞれの個性があり、客室のタイプもスタンダードからスイートまでさまざまですが、全客室に源泉かけ流しの露天風呂が付いているのは嬉しいところ」(植竹さん)

ホテル「小柳」の客室
ホテル「小柳」の客室。木の温もりを感じさせる快適空間が幅広い層に支持されている。

「客室の温泉とは別に、『小柳之湯』という共同浴場もあります。昔ながらの湯治場の面影を残す『小柳之湯』は、洗練された客室とはまた違った趣があり、気分転換にもぴったりです。

泉質は、アルカリ性単純温泉。無色透明で肌触りの柔らかい湯で、ほっと心身の凝りがほぐされます。客室で源泉かけ流しの湯を独占できて、『小柳之湯』で湯治場の雰囲気を味わえるだけでも満足度が高いのに、さらに広々としたブックストアまで完備しているなんて贅沢の極み。名湯と知の世界にどっぷり浸かってみたい人におすすめです」(植竹さん)

温泉施設「小柳之湯」の外観
古き良き湯治場の面影がある「小柳之湯」。
「小柳之湯」の浴槽
客室とはまた一味違った趣ある空間でリフレッシュ。

見た目にも味にも感動!独創的な信州ガストロノミーに舌鼓を打つ

レストランは、「松本本箱」1階に薪火グリルダイニング「367」、そして「小柳」1階にお子様歓迎のダイニングの「アルプステーブル(ALPS TABLE)」があります。

「2つのレストランに共通するコンセプトは、ローカル・ガストロノミー。信州の素材を生かしたクリエイティブなコース料理を堪能できます」(植竹さん)

※「367」は大人専用。「アルプステーブル」はお子様連れ専用のレストランです。

レストラン「ALPS TABLE」のメニューの一例
「ALPS TABLE」のメニューの一例。化学調味料を含めた食品添加物を一切使用しない体に優しいイタリアン。

「特に独創性が高いのは、大人向けレストランの『367』。メニューには食材のみが書かれており、どんな料理が登場するのか心が躍ります。運ばれてくる料理はビジュアル的にも味的にも期待を上回るものばかりでサプライズの連続です。例えば、シメに出てきた手打ちそばは、信州の伝統をベースにしつつ、アートで斬新な魅せ方で、シェフのインスピレーションにも心打たれるものがありました」(植竹さん)

レストラン「367」のメニューの一例
「367」のメニューの一例。イノベーティブなコース料理で信州の味覚を堪能する。

以上、「松本十帖」をご紹介しました。書店と温泉が融合したユニークな宿で読書と名湯にどっぷり浸りたい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 松本十帖
  • 住所/長野県松本市浅間温泉3-15-17(レセプション)
    客室数/全37室(松本本箱24室、小柳13室)
    料金/朝夕2食付き 1名1室¥33,417(税込)~、2名1室¥27,484(税込)~
  • TEL:0570-001-810

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)