「宥恕」という言葉、日常会話では耳慣れないかと思いますが、法的な話題やニュースなどで聞いたことがあるのでは? 2024年1月1日に電子取引データの保存が完全義務化される以前の2年間、やむを得ない事情がある場合に書面での保存を認める措置が取られていましたが、これを「電子取引データ保存に関する宥恕措置」と言いました。さて、「宥恕」とは一体どういうことなのでしょう?
【目次】
【「宥恕」とは?「読み方」「意味」など基礎知識】
■読み方
「宥恕」は「ゆうじょ」と読みます。
■意味
「宥恕」とは、寛大な心で許すこと、大目に見て見逃すといった意味。「優恕」とも書きますが、一般的には「宥恕」を使用します。犯罪の被害者などが、犯人の行為を許す感情を表す際にも使用します。
■語源
「宥」には大目に見る、助けるという意味があります。一方「恕」は他人の立場や心情を察するという意味があり、またその気持ちを示す語です。この二語による「宥恕」は、とってもありがたい言葉に聞こえますね。
【正しい使い方がわかる「例文」3選】
「宥恕」の使い方を例文でチェックしましょう。
■1:「1か月の宥恕期間を設けるので、期間内に不具合チェックを徹底してください」
■2:「このたびの失礼に際し、御宥恕いただきましたこと、感謝の念に堪えません」
■3:「今回のミスは宥恕して、取り引きを続けることにした」
【似ている?「猶予」との違い】
「宥恕」の意味を理解すると、「猶予(ゆうよ)」に似ていると感じるかもしれません。
「猶予」には、「ぐずぐず引き延ばして決定・実行しないこと」という意味と、「実行の日時を延ばす」というふたつの意味があります。確かに意味が被る部分もありそうですよね。
改正電子帳簿保存法(改正電帳法)の「電子取引に関するデータ保存の義務化」に対する“宥恕”期間が、2023年12月31日で終了しました。そして、引き続き“猶予”措置が設けらました。“宥恕”期間とは何が違うのでしょう。
いずれも、電子取引要件に従った対応が間に合わない事業者の実情に配意した措置です。しかし「宥恕期間」は期限が過ぎれば認められず、「猶予措置」はゆるやかに認める、と理解すればいいようです。ただし「猶予措置」も永遠とは限りません。例えば「返済を1か月宥恕する」「返済を1か月猶予する」というように、期間が明示されている場合は「宥恕」も「猶予」も同じ意味と捉えて正解でしょう。
ちなみに、2023年10月1日から開始されたインボイス制度には、本格的に移行するまで6年間の経過措置が設けられています。小規模事業者の事務負担を軽減するもので、これを「インボイス制度の猶予措置」といいます。
【「類語」「言い換え」表現もチェック!】
「猶予」以外の類語や言い換え表現などもチェックしておきましょう。
・寛恕(かんじょ):過ちなどをとがめ立てしないで許すこと。心が広くて思いやりのあること。「ご寛恕を請う」
・容赦(ようしゃ): 許すこと、大目に見ること。また、手加減すること、控えめにすること。「ご容赦ください」「容赦なく追及する」
・宥免(ゆうめん):罰を軽くするなどして罪を許すこと、大目に見ること。「罪を宥免する」
・海容(かいよう):海のように広い寛容な心で、相手の過ちや無礼などを許すこと。主に手紙文で用いる。「失礼の段、どうぞご海容くださいませ」
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かつて、年貢をおさめることなどを一部免除することを「宥恕の分(ぶん)」と言ったそう。曖昧を認める気質をもった、日本人らしい措置だったといえそうですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA) :