今月のMs. Precious……東京都練馬区の閑静な住宅街に住む40歳。父は曾祖父の代から続く食品メーカーの社長。音楽家となった兄が家業を継がないため、未来の夫には婿になってもらうという条件が足かせとなり、長年の婚活も難航中。現代アートを学ぶために大学は4年間イギリスに。卒業後は見よう見まねで画廊を経営、今年で10年目。

今月のクルマ……【MINI Cooper C】
このクルマのすべてを表しているのが、1959年から続く「MINI」という名前。小型車が求められた当時の世相に対して、「車体をどこまで小さくできるか」という挑戦と技術革新のもとに生まれた英国の傑作がこれ。2000年にBMW資本として再出発を切るまで40年以上、オリジナルの姿のまま生き続けた。BMW傘下となってからは程よい「歴史風味」と最新技術が融合。急速にファンを増やし、2016年以降は「日本で一番売れている輸入車」の座を守り続けている。今回紹介する3ドアモデルは、オリジナルの姿を現代に継承するMINIブランド基本の一台。

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「“日本で一番売れている輸入車”だから、街でもよく見かけるけれど、意外と色カブリがないのはミニを選ぶオーナーは自分のこだわりがはっきりしていて個性豊かだからなのかも」(Ms. P)赤いボディに白のルーフは人気のコンビネーション。

「基本のデザインを変えないから重みがある」――松任谷

松任谷 よろしくお願いします。

Ms. Precious よろしくお願いします。

松任谷 ミニ、ということでいいんですよね?

Ms. Precious はい。ミニがいいんです。

松任谷 お会いしてからでないと、本当はボディカラーとかイメージが湧かないんですけど、とりあえず広報車ということでこの赤です。チリレッドという色らしいです。

Ms. Precious 最初、私にはちょっとかわいらしすぎるかな、とも思ったんですけど、こうやって見ているうちに好きになってきました。あまり子供っぽく見えないのが不思議。

松任谷 何度もモデルチェンジをしているのに、基本のデザインを変えないから重みがあるんでしょうかね。

Ms. Precious そうですよね。可愛いだけじゃないのがミニの魅力なんだと思います。

松任谷 この連載は最初がポルシェ911でしょ。次がフェラーリだったんですよ。だから正直、ミニというリクエストでホッとしてます。だってこのままでいったら、ランボルギーニとかブガッティとか、ロールスロイスとか言われるかもしれないじゃないですか。

Ms.Precious 確かにそうですね。どんどんエスカレートしていく可能性はありますよね。

松任谷 いやいや、本当に良かった。で、また何でミニなんですか?今、一番売れている輸入車だし、人と被ることもありますよね。

Ms.Precious 被るのってだめですか? 私は全然構わないけど。私、ファストファッションとかも好きだし、同じものを着ている人とすれ違うことがよくありますけど、全然気になりません。

松任谷 うらやましいですね。僕もそういう人になりたいです。もう遅いけど……。

Ms. Precious 実は兄がミニに乗っているんです。10年位前のかな。それが大好きで。でも売ってくれないんです。一生乗るらしいです。

松任谷 へえ、お兄さんはクルマ好きなんですか?

Ms. Precious そうですね。かなり好きだと思います。クルマは兄の影響が大きいですね。彼のミニも限定のミニみたいで、内装とか、とっても素敵なんですよ。カーペットはフカフカだし、ダッシュボードのウッドパネルなんかもすごく重厚でね。ボディカラーなんて黒にも見えるし、日が当たると紫にも見えるし、とても複雑な色で……。

松任谷 あれ? それってひょっとするとインスパイアード・バイ・グッドウッドという、ロールスロイスのデザイナーが手を入れたモデルかもしれませんね。だとしたら貴重ですね。僕も当時欲しかったんだけど倍率が高すぎて買えませんでした。値段も高かったですしね。

Ms. Precious でもいいんです。近くにはあるわけだから、そのうちに我が家にやって来る可能性はゼロじゃないでしょ?

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これが2012年に登場したMINI INSPIRED BY GOODWOODで全世界1000台限定。当時抽選に外れた人たちが今も虎視眈々と中古市場を狙うプレミアムなミニ。内装もリッチな素材をふんだんに使い、贅を尽くした伝説のクルマ。

松任谷 それまで、この最新のミニというわけですね。とりあえず、乗ってみてください。

Ms. Precious はい。あら、キーを持っているだけでロックは自動的に解除されるんですね。何だか便利。

松任谷 最近はそういうクルマが多いですね。でもインテリアはどうですか? グッドウッドとは全く違うわけだけど……。

Ms. Precious なんだかすごく若い感じがしますね。最近のミニはこうなんですか?

松任谷 どうなんだろう。僕はたまにしか乗る機会が無いからあまりよく分かりませんが、この最新のミニはとにかくデザインが徹底してますよね。

Ms. Precious テーマはこのダッシュボードの模様に現れているんでしょうか。

松任谷 そうですね。これ、リサイクル素材らしいんだけど、夜になるとライトアップされるんですよ。ダッシュボードのライトアップなんて初めて見ました。それもドライブモードによって色も模様も変わるんです。

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「このテキスタイルの柄行もサステイナブルな素材感もイマっぽくて好き。兄所有のミニのカシミヤサンバイザーもいいけど、これはこれで素敵」(Ms. P)

Ms. Precious ドライブモードって何ですか?

松任谷 簡単に言うと服や靴をボタン一つで換えるようなものでしょうか。クルマの性格が変わる、ということですね。ほら、このエクスペリエンスと書いてあるボタンで変えることも出来るし、メーター内で変えることも出来ます。で、コア、というモードが、まあデフォルトですね。そのほか、グリーンという少しエコに振ったモードと、ゴーカートという少しだけやんちゃになるモードに切り替えることが出来ます。

Ms. Precious えっ、これ、変えるとテーマ音楽が流れるんですね。しかもいい音。

松任谷 一瞬だけど、さぞかしオーディオはいい音がしそうな気になりますよね。でも実際いいんですよ。オプションのハーマンカードン社製のオーディオもなかなかいいんですけど、この室内空間の独特な形状が音楽にはいいのかもしれません。

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「Mパッケージ(¥246,000)のオプションをつけるとHarman/Kardon製のHiFiラウド・スピーカー・システムが付いてくるのね」(Ms. P) その他、プライバシー・ガラス(リア・ガラス)、乗り降りするたびに地味に面倒な調整が要らない運転席メモリー機能付きの電動フロント・シート、インテリアカメラなど搭載。

Ms. Precious なるほど、ガラス面積が少ないから音が反射しづらいのかもしれませんね。

松任谷 失礼ですけど、音楽関係の何か仕事をされているんですか?

Ms. Precious いえ、そういうわけではないのですが、オーディオのことは兄から教わりまして。

松任谷 へえ。

Ms. Precious おまえ、機械よりもまず部屋が大事なんだぞ、と。そして私が好きな音はどうやら響かない部屋らしいんですね。

松任谷 デッドな部屋ということですね。まあ、このミニの室内空間は独特ですよね。フロントガラスの天地が浅くて寝ていないから、景色だって普通のクルマとは違って見えますよね。ただ、交差点で一番前に停まると直前の信号機は見にくいけど……。

「乗り心地がいい!クルマが大人の対応をしてくれるよう」――Ms. P

Ms. Precious スタートはこのスイッチをひねるんですか? ひねってもいいですか?

松任谷 もちろんです。では走りましょう。

Ms. Precious あ、ドライブやバックもこの小さなスイッチ?

松任谷 そうです。パーキングはその横の小さなボタンね。

Ms. Precious かわいいですね。それに比べてステアリングのグリップの太いこと。これって男性用ですよね。

松任谷 僕の手でも太すぎると思いますけど、まあメーカーの考えることですから……。

Ms. Precious あ、でも走り出すといい感じです。なんだかクルマに守られている感じがします。なぜなんだろう。

松任谷 ボディがしっかりしていますからね。まるでオイスターケースのようですよね。

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「丸い液晶は思ったより大きくて、とても見やすいし、カーナビの動きがとてもなめらか。液晶の下にエンジンボタンは鍵をひねる感じで、最新式だけどどこかアナログチックな動作を大事にしている感じがするわ。この位置にスイッチなどの操作アイテムがまとまっているのね」(Ms. P)

Ms. Precious 兄のよりもずっと乗り心地がいいです。クルマが大人の対応をしてくれるように感じます。

松任谷 パワーとかはどうですか? これは3気筒の一番小さいエンジンだけど、もっとパワーのあるモデルもありますよ。

Ms. Precious いえ、このクルマにはこのくらいが丁度いいか、と。松任谷さんが隣にいると、確かに小さなクルマかもしれないと思うけど、一人で乗ったら大きなクルマに乗っている感覚になるかもしれないです。うん、パワーはこれで充分。高速でも力がありそう。

松任谷 まったく不満は出ないと思います。それにシートヒーターもステアリングヒーターも付いているんです。シートは電動で乗り込みやすく自動で動いてくれるし、後席に乗り込む時に助手席を倒そうとすると、それも電動で前に動いてくれるって凄くないですか? これ、ミニなんですよ。

Ms. Precious そういう高級車なんですね。なるほど、そこ、うちなんですけどお茶でも飲んでいきませんか?

松任谷 あ、はい……でもロールスが停まってますよ。どなたかお客様でしょうか?

Ms. Precious 実は私の……。

松任谷 えっ!……

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今月のクルマ
【MINI COOPER(3DOOR)C】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:3,875×1,745×1,455mm
車両本体価格:¥3,960,000(ベース価格)

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

MINI Japan

TEL:0120-3298-14

この記事の執筆者
1951年、東京都生まれ。1974年 慶應義塾大学・文学部卒。4歳からクラシックピアノを習い始め、14歳の頃にバンド活動を始める。20歳でプロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド「キャラメル・ママ」「ティン・パン・アレイ」を経て、数多くのセッションに参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして松任谷由実、松田聖子、ゆず、いきものがかりなど多くのアーティストの作品に携わる。1986年には音楽学校「MICA MUSIC LABORATORY」を開校。ジュニアクラスも設け、子供の育成にも力を入れている。松任谷由実のコンサートをはじめ、JUJU、平原綾香など様々なアーティストのコンサートやイベントを演出、映画、舞台音楽も多数手掛ける。2021年よりバンド「SKYE」に参加。日本自動車ジャーナリスト協会に所属し、長年にわたり『CAR GRAPHIC TV』(BS朝日・毎週木曜23:00~)のキャスターを務める他、『日本カー・オブ・ザ・イヤー』の選考委員でもある。ラジオ『松任谷正隆のちょっと変なこと聞いてもいいですか?』(TOKYO FM・毎週金曜17:30~)にも出演。好きなもの:朝のお茶の時間、夜の昼寝。
WRITING :
松任谷正隆
EDIT :
三井三奈子