【目次】

【「ますます」を「漢字」で書くと?】

「ますますのご活躍をお祈りいたします」「ますますのご発展、お慶び申し上げます」など、挨拶やビジネスレターでもよく使われる「ますます」というワード。ほかに「どんどん」や「だんだん」、最近市民権を得た感の「ほぼほぼ」など、一語を重ねるワードはビジネスシーンでも頻繁に見かけるようになりました。今回はこの「ますます」を上手に使いこなすための解説をしていきます。まずは基本事項を押さえましょう。

■漢字

しっかり覚えておきたいのですが、「ますます」は漢字では「益々」と書きます。

■「漢字」と「平仮名」の使い分け

「益々」でも「ますます」でも意味は変わりませんが、漢字のほうがフォーマルな印象を与えます。

ビジネスでは「益々」、プライベートでは「ますます」と使い分けるといいでしょう。


【「意味」と「使い方」】

■意味

動詞の「増す」を重ねた言葉で、「程度が一層はなはだしくなるさま」や「以前の状態より程度が増すこと」を表します。

■使い方

今後の状態を表すときに使い、あとに続く言葉を強調します。「益々の活躍」「益々忙しい」「益々楽しみ」「益々寒くなる」のようになりますが、漢字が続くと読みにくいこともあるので、ビジネスシーンでも柔軟に考えてよいでしょう。

・益々忙しいこととは存じますが → 益々お忙しいこととは存じますが

・益々楽しみにしております → ますます楽しみにしております

・益々寒くなりますのでご自愛ください → ますます寒くなりますのでご自愛ください


そのまま使える「例文」

ビジネスシーンでは、相手の活躍や慶事について寿(ことぶ)ぐ気持ちを表現して使うことが多いようです。そのまま使える例文を挙げますので、ぜひ使ってみてください。

まずは取引先や社内の目上の人など、上位の相手への使用例です。

■1:「益々ご隆盛のこととお慶び申し上げます」

■2:「益々のご活躍をお祈り申し上げます」

■3:「益々のご発展をお祈りいたします」

次に、退職する仲間や新たなことに挑戦する後輩へ、また日常的なやり取りなどで使える例文も。「益々(ますます)」は、上下関係にかかわらず使用可能なワードです。

■4:「益々の活躍を楽しみにしています」

■5:「益々の活躍を頼もしく感じています」

■6:「挑戦する姿勢に、ますます尊敬の念を募らせています」

■7:「これから気温がますます高くなるようなので、お気をつけください」

ビジネスレターやメールで、用件だけでは味気ないけれど、世間話を挟むのもふさわしくない…そんな場合のシメに使える例文もご紹介します。

■8:「秋も益々深まり、乾燥する季節になりました。お風邪など召されませんようお気を付けください」

■9:「益々お忙しいことと存じますが、どうぞご自愛くださいませ」

■10:「御社の次回作をますます楽しみにしております」

最後は社内やチーム内で使える「激励の例文」です。士気を上げたいときなどに使ってみましょう。

■11:「前期の成績を上回るよう、ますます知恵を絞りながら頑張ろう」

■12:「部長のアドバイスで、彼らもますます気合が入ったようです」

■13:「お客様に益々興味をもっていただけるよう、より丁寧なご説明を心掛けましょう」


「言い換え」「類語」表現

■さらなる/さらに(更なる/更に)

「益々」は話し言葉でも書き言葉でも用いますが、「さらなる」や「さらに」は話し言葉でよく使われます。

■以前にも増して

「益々」は多くポジティブ表現に使いますが、「以前にも増して」はネガティブ表現やマイナス表現をする場合にも使います。

■一段と(いちだんと)

「益々」同様、相手の喜ばしい状況を強調する場合などに使います。

■いっそう(一層)

「いっそう」や「よりいっそう」は、自分の決意などを表す際や挨拶にも使用します。

■いよいよ/いよいよもって

物事が加速度的に進展するさまをいいます。「いよいよに」としても。

■なおもって(尚以て)

「なおもって状況は悪化した」など、ネガティブなシーンでも。

■そういっそう(層一層)

文語的な表現ですが、鼓舞したり戒めたりするシーンで使ってみてください。


「増々」との違い

「益々」は「増々」の慣用的表現(一般に普及するために俗語として言い換えた表現)です。漢字の「増々」でも間違いではありませんが、ビジネスシーンでは「益々」が適切。「増々のご発展を~」などとしないようご注意を。

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「益々」は物事の程度が増す状況を表します。ポジティブにもネガティブにも使えますが、ビジネスシーンならポジティブな状況で使用したいですね。皆さんの“大人の語彙力”も、益々アップしますように…。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA) :