【目次】

【「蛍祭り」とは?】

「蛍祭り」とは、ホタルを鑑賞するために開催されるイベントのこと。ホタルが多く飛ぶ時期である初夏に、全国各地の川や公園などでさまざまな「蛍祭り」が行われます。特定の地域で催される特定の祭りを示すものではありません。


【全国の蛍祭りの「名所」】

蛍が見られるのは、早くて5月下旬から7月中旬頃。全国の名所で「蛍祭り」が行われています。

日光だいや川公園 2025年度ホタル観賞会(栃木県・日光市)

オートキャンプ場、フィールドアスレチック、レンタサイクルなど、色々なアクティビティが楽しめる「日光だいや川公園」の蛍観賞会では、数千匹のゲンジボタル・ヘイケボタルが飛び交います。

[開催期間]2025年6月7日(土)、7月12日(土)(荒天中止)
[開催時間]19時30分~20時30分(受付19時~)
[料金]無料

■花見(けみ)ほたる祭り(長野県・池田町)

会場となる「花見ほたるの里」は、6月下旬から7月上旬のピーク時には、夜8時を過ぎると約数千匹以上のゲンジボタルが水路周辺に乱舞します。地元の人たちの力で池田町の観光名所のひとつとなりました。小川の散策で癒されて。

[開催期間]2025年6月27日(金)~29日(日)、7月4日(金)~6日(日)
[開催時間]18時~21時
[料金]無料

■ホタルの夕べ(静岡県・伊豆市)

修善寺温泉街の西の端、滝下橋のほとりにある「赤蛙公園」では、例年5月下旬~6月中旬にホタルを鑑賞できます。特にイベントの日にちがあるわけではないので、平日など、混雑を避けられそうなのも魅力。温泉の町・修善寺で、ゆったりした時間を過ごしたい。

[開催期間]例年5月下旬~6月中旬
[開催時間]見ごろは20時頃
[料金]無料

■金生山姫螢(きんしょうざんひめぼたる)観察会(岐阜県・大垣市)

幻想的に光を放つヒメボタルは岐阜県の天然記念物。会場は「金生山明星輪寺」の境内です。ヒメボタルの分布域は限定されるため、金生山は貴重な棲息地として天然記念物に指定され、保護されています。アルパ(ラテンハープ)演奏者である高木葉子さんによる山門コンサートのあと、山門にてヒメボタルと陸貝の解説と観察が行われます。

[開催期間]【観察会】2025年5月31日(土)、6月7日(土)
[開催時間]【観察会】22時~25時30分
[料金]【観察会】¥100(環境保護協力金)

■蛍ナイター(京都府・宇治市)

日本最大級の立体花壇で有名な「宇治市植物公園」。5月下旬~6月上旬には、ゲンジボタルが観察できる「蛍ナイター」を行っています。入園は21時まで。小川のせせらぎを感じながら、四季の植物とともに楽しめます。公式ホームページでは、毎日のホタルの飛翔状況や混雑状況などがチェックできます。

[開催期間]2025年5月24日(土)、25日(日)、5月29日(木)~6月8日(日) ※休園日除く
[開催時間]日没~21時30分
[料金]【16時以降の入園】大人¥360、小・中学生¥180

■ほたるのふるさと相河川(長崎県・新上五島町)

相河川には、ゲンジボタルとヒメボタルが生息しています。ゆっくりと発光する「ゲンジボタル」、テンポよく断続的に発光する「ヒメボタル」の2種のほたるの煌めきが楽しめます。新上五島町で見られるゲンジホタルは、これまで発見されてきたものとは異なるため、新たに「五島列島型ゲンジボタル」として分類されているそうですよ。

[開催期間]2025年5月24日(土)~6月8日(日)
[開催時間]日没以降、20時30分ごろが最適
[料金]無料

■久我山ホタル祭り(東京都・杉並区)

玉川上水会場1か所で試験的に開催されてから、30年近く続けられている「久我山ホタル祭り」。都会の子どもたちにもホタルを見てもらいたいと、静岡県南伊豆町からからゲンジボタルを譲り受けて玉川上水に放したのが始まりだったそう。京王井の頭線久我山駅の近くを流れる玉川上水と神田川のふたつの川べりを会場に、商店街や学校で人工飼育された約2000匹が放流されます。

[開催期間]2025年6月7日(土)、6月8日(日)
開催時間]14時〜21時 まで(小雨決行・荒天中止)
[会場]「神田川会場」「玉川上水会場」「久我山会館」「久我山稲荷神社」「宮下橋公園」の5会場
[開催時間]【観察会】22時~25時30分
[料金]【観察会】¥100(環境保護協力金)

※詳細は各公式ホームページで確認してください。


【ビジネス雑談に役立つ「蛍祭り」と「蛍」の知識】

■「蛍祭り」って、いつからある?

各地の都市化の進展に伴い、日本でのホタルの生息地は減少していますが、かつては夏の夜の涼みがてらに、蛍を捕えたり、観賞したりするイベントが「蛍狩」という名称で夏の夜の風物詩とされていました。「蛍狩」という名称がいつごろから存在していたのかは明らかではありませんが、当時の和歌などで、平安時代の貴族たちも、蛍の幻想的な光を「あわれ」と感じ、楽しんでいたことがわかります。清少納言が『枕草子』のなかで書いた「夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、ほたるの多くとびちがひたる」という文章はよく知られていますね。

現代では自然のホタル自体が貴重なものとなり、「蛍狩り」から「蛍祭り」という言葉に変わっていったのだと思われます。

■日本で生息する蛍は何種類?

ホタルの仲間は世界中に2000種類くらい存在し、日本では約40種類が確認されています。そのうち、発光するのは8種類。ゲンジホタル、ヘイケボタル、ヒメボタルなどがその代表格ですね。ゲンジボタルは体が大きく、大きくゆっくり光ります。一方、ヘイケボタルはとても小さな光をすばやく明滅させます。このほか、多くの種類のホタルは、幼虫のときには発光するものの、成虫してからは発光しないのだそうです。ご存知でしたか?

■蛍はどんな場所に生息している?

ゲンジボタルは「流水性」と呼ばれる、細い川など、流れがあるところに生息します。一方でヘイケボタルは「止水性」といって、水田やため池など流れのない場所にいることが多いそうです。水温は15度~20度が適温です。

■蛍の一生は…?

蛍は幼虫の状態で約1年ほど過ごします。ふ化してから水中で9か月過ごしたのち、上陸してサナギになるまで5週間。その後、2週間程してから羽化します。成虫期間は1~2週間と短い期間です。蛍が舞う姿は幻想的で美しいものですが、実際、とても儚い命なのですね。

■何を食べて育つ?

ゲンジホタルの幼虫は巻き貝の一種であるカワニナを、ヘイケホタルはカワニナやタニシ、モノアラ貝などを食べて育ちます。肉食なんですね! 成虫となり、飛び交うようになってからは、何も食べず、夜露だけで生きているそうです。

■どうして光るの?

ホタルが発光するのは、プロポーズ(求愛信号)だと考えられています。つまり発光しながら飛んでいるのはオスだけで、光ることでメスにラブコールを送っているのです。メスは草の木や葉にじっと止まっていますが、オスに応えてメスも光れば婚約成立。交尾、産卵をしてお互いの一生を終えます。

ホタルが光る仕組みは、ホタルの体の中で起こる化学反応です。ホタルはおしりの部分に発光器をもっており、そこにはルシフェリンという物質と酵素(ルシフェラーゼ)が入っています。このふたつが反応すると、酸化して光る特性があるのです。

ホタルの多くは成虫になると口が退化し、ほぼ水分しかとらなくなります。つまり蛍は、幼虫時代に体に蓄えた栄養を燃やして光っているのですね…。

■蛍の活動時間帯は?

ホタルが見られる確立が高まるのは、風のない、どんより曇った蒸し暑い夜(目安は20度以上)。川や水田の草むらで、日没後の1~2時間をピークに活動するので20時台が目安となります。雨や風の強い日、気温が低い日、月の明るい日はあまり活動しません。

■種類によって見られる時期は違うの?

ゲンジボタルは6月中旬ごろに、そして7月中旬になるとヘイケボタルが飛ぶそうです。

■蛍祭りのマナー

ホタルの命はとても短いうえに、非常にデリケートな生き物です。「蛍狩り」が「蛍祭り」という名称に改まったことからもわかるように、「蛍祭り」はあくまで蛍を観賞するもの。当然、捕まえたりするのは厳禁です。蛍が警戒しないよう、静かに観賞し、明るい場所が苦手な蛍のために、懐中電灯やカメラのフラッシュも控えましょう。そして、ホタルが生育できる環境を守るために、草むらに立ち入ったり、汚したりせず、ゴミも必ず持ち帰るようにしてくださいね。

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ホタルが舞い飛ぶ情景はとても幻想的で美しいものですが、あの光は命をかけたプロポーズ。日本では過去、水田の減少や農薬、生活排水などの影響で、ホタルをはじめとする水生昆虫たちが激減してしまいました。その後の保全活動により、再びホタルが観察できるようになった場所もあるそうです。ホタルが暮らせる環境は、人間にも優しいものであるはず。人間も、水辺の生物も、安心して暮らせる環境を守っていきたいものです。

この記事の執筆者
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参考資料:日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) 「じゃらんnet」(https://www.jalan.net/news/article/167945/) :