今月のMs.Precious……渋谷区在住、55歳。短大卒業後、新卒で総合商社の一般職に就くも、「ファッションに関わる仕事がしたい」と外資系ラグジュアリーブランドのPRアシスタント職に転職。ステップアップのためにいくつかのブランドを渡り歩いたのちに独立し、PRエージェンシーを興す。今年で20期目を迎え、海外ブランドの広報支援やプロモーションをサポートする。10年前に離婚。現在はトイプードルと暮らすが、「そろそろパートナーがほしいかも……」と婚活し、昨年より8歳年下の公認会計士と交際中。
今月のクルマ……【LEXUS LBX Bespoke Build】
ホンダのアキュラ(ACURA)、日産のインフィニティ(INFINITI)のように、海外展開のために用意したブランド名を冠することも多く、レクサス(LEXUS)も同様、トヨタが1989年に北米でスタートしたブランド。伝統的な高級車の世界に、日本車の特徴である信頼性や機能性を武器に挑戦した。新しい試みに寛容なアメリカ市場において「次なる高級車像」を求めるリベラル層から絶大な支持を受けて成功を収めたのには、トヨタならではのマーケティングの巧さがあった。日本では2005年から本格展開、美意識や匠の技を追求する「純度の高い」高級車を投入してきた。レクサスが提案する高級車像を日本市場の価値観のなかで浸透させること、つまりは「ブランドの確立」にはトヨタといえどもそれなりに年月を要したものの、その結果は街で見かけるレクサスの多さを見れば明白だ。高級セダンやクーペ、SUVが多かったラインナップに、2023年末に加わったのが、いわば「小さな高級車」のLBX。多角化するレクサスブランドの象徴的モデルは、これこそが満を持して登場した、もっとも日本市場を意識したレクサスなのかもしれない。

「これはかなり自分の好みが反映出来ると思います。なにしろ"ビスポークビルド"ですから」――松任谷
Ms.Precious はじめまして。よろしくお願いします。
松任谷 はじめまして。このクルマを持ってきました。
Ms.Precious はあ……黄色ですか……それもかなり強い黄色ですね。
松任谷 そうですね。色ばかりは広報から借りてくるクルマだからなかなか選べなくて……すみません。
Ms.Precious いえ、なかなか新鮮ですよ。モノトーンのクルマにばかり乗ってきましたから。
松任谷 ファッション関係のお仕事ですよね。失礼ですけれどどういった内容のお仕事をされているんですか?
Ms.Precious 私も広報ですね。PR会社をやってます。
松任谷 あっ、そうなんですか……僕の知り合いにもファッション関係のPR会社をやっている女性がいます。割合、押しが強い人が多いイメージですけど。
Ms.Precious 私、そういう意味では経営は向いてないかもしれませんね。頑固ではあるんですけど。
松任谷 では、ブランドから頼まれて広報活動をやるわけですね?
Ms.Precious そうですね。長くやっているといろいろと横の繋がりも出てきて、さらに言えば、この業界は割合移動が多いんですよ。ブランドから引き抜かれたりとかね。だから、なんだか気がついたらいろいろなブランドのPRやってます。
松任谷 なるほどね。
Ms.Precious ところでお知り合いってどなたですか? この業界は割合狭いから知っているかもしれない。
松任谷 いやいや、ここではやめておきましょう。押しが強くて評判悪いかもしれないし、でも、その人結局ポルシェ911を買ったんですよ。
Ms.Precious あ! わかった。わかっちゃいました。
松任谷 最初500万円くらいでないか、って聞かれて、いろいろ探していくうちに高年式の方が良くなっちゃって、最終的には1000万くらいで購入したらしいです。
Ms.Precious あのクルマ、松任谷さんの推薦だったんですか……。
松任谷 いえいえ、僕は薦めてません。だいいち、あの年式であの値段は高いと思います。でも、どうしても好みの色だったらしいです。

Ms.Precious ああ、女性はそういうのってありますよね。エクステリアカラーとインテリアカラーがピンと来ちゃうっていうか……。
松任谷 そういう意味ではこのレクサスはかなり自分の好みが反映出来ると思います。なにしろ”ビスポーク ビルド”ですから。
Ms.Precious どのあたりまでビスポーク出来るんでしょうか?
松任谷 外装色は9色ありますね。ルーフはこのクルマみたいに黒にすることも出来ます。でも、やっぱりインテリアでしょうか。特にシートはステッチとかの種類もびっくりするくらい多くて、選べば人と被ることはないかもしれませんね。

Ms.Precious これ、カタログですか? 確かに凄いですね。こんなシート作るの大変そう。
松任谷 まあ、その分、お値段も上がりますが……って僕、セールスマンみたいですね。
Ms.Precious いやいや、まだまだです。それでは押しになっていません。
松任谷 やっぱり向いていませんか。音楽家で良かった。
Ms.Precious 人には向き不向きがありますからね。
「このクルマはちょっと相手を幻惑させることも出来るかも」――Ms. Precious
松任谷 とはいえ、どうですか? このクルマ。ぱっと見の印象でいいんですけど。
Ms.Precious かわいらしいですね。小さくて。
松任谷 小さくて高級というところがミソなんですよね。この企画で以前ミニを持ってきたんですけど、ミニには昔からロールスロイスの人が担当したバージョンとかあったりするんですよ。もっと言えば、英国車は昔からそういうクルマが必ずあったんです。
Ms.Precious レクサスと書いてなければ高級には見えないかもしれない。
松任谷 そう、その高級英国車もそうです。そこがポイントです。
Ms.Precious なるほど、高そうに見えないところがいい、と?
松任谷 しかも国産車ですから。
Ms.Precious そうですね。輸入車ばかり乗ってきた人間からすると、国産車に乗り換えるのには勇気が要りますよね。
松任谷 そうかもしれません。でも、それは服でも言えませんか? 僕なんか戦後すぐの世代だから、アメリカものに洗脳されて20世紀を過ごし、21世紀になってようやく国産服に目覚めましたからね。
Ms.Precious 確かに今の日本の服は面白いとも言えますよね。男物は特に面白いかも、ですね。
松任谷 気がついたら僕のクローゼットは国産服ばかりです。死んでも着ない、なんて思っていたくせに、20世紀の自分に見せてやりたいです。
Ms.Precious そういうブランド的な見方をすれば、このクルマはちょっと相手を幻惑させることも出来るかも、ですね。
松任谷 この人、ひょっとして一周回ってものすごく出来る人なのかも、ってね。
Ms.Precious ああ、何だかわかってきました。
松任谷 ポルシェ1000万で買う人よりも出来そうでしょ。
Ms.Precious あ、それは言っちゃダメです。
松任谷 そうですね。では乗ってみてください。
Ms.Precious コージーですね。小さいけど居心地は良さそう。いい時間が流れそうです。

松任谷 それにこのサイズだから運転はしやすいです。運転が憂鬱にならない。
Ms.Precious 私は運転が好きだから大丈夫ですよ。
松任谷 では走りましょうか。
Ms.Precious なんか作りはいいですね。どこもかしこもカッチリと作り上げている感じ。仕上げの良さはさすがに日本の匠って感じですね。
松任谷 そこはレクサスクオリティですから。
Ms.Precious これでもう走るんでしょうか? エンジンはかかっていないけど。
松任谷 ハイブリッドだからモーターで動き始めます。そのうちエンジンもかかるので大丈夫です。
Ms.Precious なるほど。ちなみに馬力はどれくらいですか?
松任谷 3気筒エンジンで、エンジンは91馬力、電気モーターのアシストがありますからね。ちょっと少なく見えるけど、動けばこれで充分なのは分かりますよ。
Ms.Precious あっ、本当だ。しかもモーターは静かですね。
松任谷 遮音材とかもレクサスクオリティになっているはずですから。モーターだけでなく、外からの音もかなりシャットアウトしていますよね。
Ms.Precious 小さな高級車ってコンセプト、案外好きかも。

松任谷 聞いていなかったけど、今までは何にお乗りだったんですか?
Ms.Precious アウディA6です。かなり好きだったんだけど。
松任谷 それはまたずいぶん違うワールドになりますよね。
Ms.Precious 今、運転していて世界が違うなあ、と思っていたところでした。
松任谷 どう違いますか?
Ms.Precious アウディが弦楽4重奏とかを聴きたくなるとするなら、こちらはボサノバが聴きたくなりますね。
松任谷 ノリが軽い、と?
Ms.Precious 軽快な感じ? リズムがあるというか……。
松任谷 クルマの中で音楽はよく聴かれるんですか?
Ms.Precious そうですね。割合よく聴くかもしれません。
松任谷 どんな音楽を聴かれますか?
Ms.Precious たった今はナラ・レオンが聴きたいです。
「ものすごく今、って感じがします。国産車に乗りたいムードはあります」――Ms. Precious
松任谷 クルマに求める一番大きなものはなんですか?
Ms.Precious さあ、何でしょうね。やはりピンと来ることでしょうか。そう考えると、基準はいつも動いているかもしれませんね。節操がないというか……。
松任谷 でもファッションもそうですよね。何年も前と同じテーマなのにどこか違う、というような。
Ms.Precious 世界は常時動いてますよね。だから面白いんだけど、怠けているとすぐに置いて行かれちゃいます。

松任谷 このクルマは現在、どんな風に映っているんでしょうか?
Ms.Precious ものすごく今、って感じがします。世界情勢を見ても、国産車に乗りたいムードはありますよね。
松任谷 海外ブランドのPRをしていても、ですか?
Ms.Precious クルマは自分のプライベートですからね。でも私ならグレーにするかな、やっぱり。
松任谷 僕もグレーかなあ。最近、全身同じ色にしたいムードなんですよね。
Ms.Precious そういえば松任谷さん、最近カラフルなバッグパックをお作りになってますよね?
松任谷 まあ、コラボレートして、欲しいバッグを作ってもらったんですけど。
Ms.Precious イメージと違ってずいぶんカラフルだからびっくりしちゃいました。
松任谷 全身同じ色の場合、どこかにポイントを置きたくなるんですよね。それがバッグだった、ということかな。
Ms.Precious だったらこの黄色いクルマもポイントになりますね。黄色ってありかも……。
松任谷 僕も黄色好きです。

今月のクルマ
【LEXUS LBX Bespoke Build】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,190×1,825×1,545mm
車両本体価格:¥5,500,000(ベース価格)~
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先

- TEXT :
- 松任谷正隆さん 作編曲家、音楽プロデューサー
- PHOTO :
- 小倉雄一郎(小学館)
- WRITING :
- 松任谷正隆
- EDIT :
- 三井三奈子