甘味と酒。日本では一般的に相反するアイテムのように思われ、両方とも好物だというと相当、酔狂な人だと見られがち。しかし、それぞれモノを選べば、絶妙にマッチすることはある。
例えば、チョコレートとウイスキー。樽由来の甘い香りとカカオの味わいは、口中で幸福な融合を遂げ、鼻腔から喉の奥まで豊かで長い余韻を残す。
ザ・リッツ・カールトン東京|ラ・ブティック
欧州の菓子には、洋酒を使用しているもの多いし、フレンチやイタリアンのデザートには、シャンパンやブランデーも合わせやすい。 私が初めてパリを訪ねた頃は、まだクレープの屋台がたくさんあり、カルチェラタン界隈では行列もよく見かけた。
本場のクレープを味わってみようと列に並んでみたら、目の前でフランス人の紳士が「グランマニエ!」と注文。どんなクレープができあがるのかと見ていたら、焼けた生地にグラニュー糖をパラパラとまき、その上からリキュールのグランマニエを適当に振りかけるだけ。
満面の笑みでほおばる紳士を見て、私も同じものを注文。クレープといえば、チョコやクリーム、イチゴなどが入るものと思っていた私には、衝撃的なカルチャーギャップだった。 甘い酒を甘いスイーツに合わせることは、欧州では当たり前。
イタリアのジェノバでは、ジェノベーゼパスタで有名な店で、最後にこれを食べろと、揚げた牛乳ドーナツのようなドルチェが出された。絶対に合うからと一緒にサービスで提供されたのは、ミュスカデという品種を使ったヴィーノ・ドルチェ、つまりデザートワイン。グラニュー糖にまみれた揚げ菓子に、このさらりと甘いヴィーノ・ドルチェは、満腹なのにさらに幸せな気分を高めてくれた。
以来、日本でも甘い物にお酒を個人的に実践してきたが、ようやくそれをコンセプトにしたようなお店が誕生した。場所は、都内随一のラグジュアリーホテル、ザ・リッツ・カールトン東京。この3月、レストランフロアがリニューアルし、従来からある「アジュール フォーティーファイブ」「タワーズ」のほかに、「ラ・ブティック」というチョコレート&ペストリーが加わった。
高層階ならではの眺望でスイーツをいただく
キューブ型のフルーツケーキ
この「ラ・ブティック」のペストリーシェフ、ジミー・ブーレイ氏はパリの「フォション」や最高級ホテル「ル・ムーリス」で経験を積んだ強者。スイーツは一見してハートマークが目から飛び出そうなほど、魅力に富んだビジュアルに仕上げられている。全てがキューブ状のケーキでチョコレートも小さなキューブ状だから、統一感もあり、ディスプレイからして美しい。
ここでは高品質のグランクリュ・コーヒーが6種類用意され、それらも大変魅力的なラインナップではあるが、特筆すべきはスイートワインがずらりとグラスで用意されているところ。フランス・ローヌ地方のミュスカ、アルザスのヴァンダンジュ タルティブ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、そして、ソーテルヌはあのシャトー ディケム2005が! 自家製ヴェルモットや甘口シェリー、ポートワインもある。これは砂糖いや左党には堪らない。ケーキやチョコレートと、こうしたワインとのペアリングも提案している。
「アジュール フォーティーファイブ」や「タワーズ」でランチを済ませてから立ち寄るのもいいが、夕方日が陰り始めた時間帯に、ちょっと早めのスイーツ&ワインというのも一興。そうだ、最近すっかり忘れていたプレミアムフライデーには、まずここでキューブのケーキとスイートワインから始めるというのがいいかも。地上45階でちょっと贅沢なスイートタイムが楽しめるといえば、女性の部下も付き合ってくれそう(笑)
【お問い合わせ】
■ラ・ブティック
東京都港区赤坂9-7-1 東京ミッドタウン
ザ・リッツ・カールトン東京 45階
TEL:03-6434-8711(レストラン予約受付時間 10時~21時)
営業時間/11時~23時(イートインラストオーダー 22時30分)
定休日/無休
アクセス/地下鉄六本木駅8番出口より地下通路直結。乃木坂駅より徒歩約5分。
http://www.ritz-carlton.jp/restaurant/jp/new-culinary-experience/
- TEXT :
- インディ藤田
公式サイト:インディ藤田 のキッチン