アルファロメオが守り続けてきた名門ブランドの古き良き味わいと、最新テクノロジーとを絶妙にバランスさせたスポーツサルーンとして多くの支持を集めるジュリア。確かに電動化もないし、エンジンの存在を隠そうともしないその姿勢は、世の趨勢に反しているかのように見える。だがそこにはアルファロメオを支持する人々へのオマージュがあった。
イタリアの名門はこの先どうなっていくのか
世の趨勢が持続可能性を求めて進化を続ける中で、現在のアルファロメオには、その流れに沿うべきモデルはない。だからと言って、電動化に背を向けているわけではない。去る2月8日、アルファロメオ初となるプラグインハイブリッドである新型SUV「ALFA ROMEO TONALE(アルファロメオトナーレ)」のワールドプレミアがオンラインで開催された。これは昨年、ブランドを統括するステランティスが「2027年以降、欧州、北米、中国で投入するアルファロメオ・ブランドの新型車はEVのみにする」と発表したことへの、ひとつの回答でもある。今後は電動化が加速度的に進んでいくことになる。
そうなると現在発売されているジュリア、そしてSUVのステルヴィオといったエンジン車は、消えていくことになる。
アルファロメオにはブランドをこよなく愛する「アルフィスタ」と呼ばれる、熱狂的な人たちが存在する。彼らはモーターに対する耐性は多分持ち合わせていないだろうから、最後までエンジンにはこだわり続けるだろう。だが一方で、時代に合わせた決断を下し、アルファロメオの電動車を認めざるを得なくなるだろう。過去から現在までのアルファロメオの歴史も伝説も、そしてプロダクトも、すべてを愛し、受け入れるアルフェスタたちに取って、それは運命なのかもしれない。その上で「歴代最良のアルファはどれか」とか「最近のスタイルは」とか、さらには「これからの電動化はどうする」とか、なかなかに賑やかな議論を繰り広げるはずだ。
ジュリアと過ごす幸福を噛みしめて
一方で最近は、華やかなイタリアンデザインに目を奪われ、魅了された人たちも確実に存在している。ごくごく一般の、たとえば女性ライフスタイル誌を助手席に置きながら「マークがとっても可愛い。メーターが針だから、なんかメカメカしていてもカッコいい」という人たちである。確実にアルフェスタ以外に人たちにとっても、重要なアイテムになってきている。そうした人たちに取ってみれば電動化は素直に受け入れられるだろうし、重要なのはハッとするほど華やかなスタイリングがあれば、パワーソースにはこだわらないのかもしれない。
いや、むしろ後者のような人たちこそ、今後のアルファロメオを支えていく事になる。当然ながら革新的なエンジン、理想的な前後重量配分、独創的技術、優れたパワーウェイトレシオといった数値的なパフォーマンスに支えられた上の「走りがいい」とか「コーナリングが楽しい」とかのレベルの話はしないかもしれない。仮にアルフェスタとそうした普通の人たちとの唯一の共通認識があるとすれば、洗練されたイタリアンデザインが内外を仕上げている、と言うことぐらいだろうか。いや、それこそ近未来のアルファロメオには必要な大きな魅力。これまでは大きな魅力と言われていた官能的なエンジンの存在感が希薄になっても、見目麗しき永遠の美しさがあればブランドの“魂”を宿した新世代アルファは、重要なファッションアイテムとしても、捉えられるだろう。
しかし、だからこそ美しき姿と、官能的なエンジンを併せ持ったスポーツセダン、ジュリアは、いっそう愛おしくなる。最新の安全と快適装備を備え、上質で快適なスポーツドライブを追求したジュリア。エンジンの世紀の幕引きを、こんなクルマと過ごせたら最高に幸せかもしれない。
【アルファロメオジュリア2.0ターボヴェローチェ】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,655×1,865×1,435mm
車両重量:1,630kg
駆動方式:FR
トランスミッション:8速AT
エンジン排気量:1,995cc
最高出力:206kw(280PS)/5,250rpm
最大トルク:400Nm/2,250rpm
価格:¥5,980,000
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- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター
- PHOTO :
- 篠原晃一