俳優として、かっこいい女性を演じることの多かった中村アンさん。最新ドラマで演じているのは、“残念な夫”を、有名脚本家へと育て上げ、家事・育児も担ってきたスーパーウルトラ・デキる妻の朝子。アンさん自身は、実は「こういう作品を待っていた」と語ります。その意気込みは、どんなところに現れているのでしょうか。

中村アンさん
(なかむら あん)1987年、東京都出身。主な作品に、ドラマ『SUITS/スーツ』『グランメゾン東京』『青島くんはいじわる』『大奥 Season2「幕末編」』、『約束 〜16年目の真実〜』映画『名も無き世界のエンドロール』『グランメゾン・パリ』、舞台「笑ってもいい家」など。2022年、『DCU~手錠を持ったダイバー~』で
第4回アジアコンテンツアワードの助演女優賞にノミネートされた。最新作『こんばんは、朝山家です。』では、脚本家の夫(小澤征悦)のために事務所を設立し、社長を務める妻・朝子を演じる。本作は地上波ゴールデン・プライム帯の連続ドラマで初主演となる。

人はいろんな面をもっている。私だって、猫をかぶっているかもしれません(笑)

中村アンさん
俳優の中村アンさん

―俳優としてのキャリアを重ねるとともに、最近は母親役も増えてきた中村アンさん。その中でも異色の「朝山家」は、ご自身にはどう映っているのでしょうか。

「キレる妻に残念な夫。キャッチフレーズはとてもパワーワードですけれど、それでちゃんと成り立っているのがこの夫婦です。罵倒したりキレたりといっても、ネガティブなわけではなくて、いいバランスでチームとして日常を送っている。こんな絆もあるんだなと思えてきました」

―ほかに、ドラマが進むにつれて気づいたことはありましたか?

「当初は、母親の経験がない私が、演じきれるかどうか不安がありました。妻の気持ち、子供を想う母親の気持ちを完全に理解するのは、難しいのかもしれないと。

続けていくうちに気付かされたのは、『人はいろんな面をもっている』ということ。普段中村アンとして人前に出ているときは、無意識にちょっと猫をかぶっているかもしれないし(笑)、一方、自分の地でいられる相手にならなんでも打ち明けられる。

朝子さんも、家族と接するときの自分、仕事仲間に対するときの自分、夫のために営業を頑張る自分…。いろいろな面を見せていて、少しずつ自分と同じような要素がある。私だって気が許せる間柄なら口が悪くなるときはありますし、怒りたくなるときもあります。“キレたとき”“口が悪いとき”の朝子には、自然と寄り添える部分もありました。

自分のイメージとは違う役で日常を表現することの難しさを、あらためて実感しました。でも私自身はこういう作品を待っていたんです。これまでのイメージからかけ離れた役こそ、挑戦したかった。そんな新しい役に出会えた2025年は、本当にラッキーだったと思っています

中村アンさん
新しい役に出会えた2025年は、本当にラッキーだった(中村アンさん)

罵倒するのがだんだん気持ちよくなってきました(笑)

―とはいえ、とてもエネルギーがいる演技ではないでしょうか。

「演技に喜怒哀楽は不可欠ですが、特に『怒』を表現することは難しく、自分にその気持ちがないと相手にぶつけることができません。朝子さんの場合、積み重なったものが爆発することがあれば、夫の余計なひと言にイラっとすることもある。そこには、相手のお芝居を受けつつ、テンポとリズム、そして感情が必要です。

しかも朝子さんは、夫の話に対して、けっこう食い気味にいくんですよ(笑)。繰り返すうちに、罵倒するのがだんだん気持ちよくなってきました(笑)」

―そのモデルとなった足立晃子さん(脚本家・足立紳さんの妻)からは、どのようなアドバイスがあったのでしょうか?

「撮影に入る前、私は母親の気持ちをどう理解すればいいのか分からず、正直に不安をお伝えしました。それに対して晃子さんは、『晃子そのものになる必要はなくて、自分なりの解釈で』、『アンさんの不安な気持ちのままで』とおっしゃってくださって。そして『私自身も、いまだに“お母さん”はわかりません』と。だから『そのままやってもらえればいい』と話してくださって、安心したのと同時に、すっと腑に落ちました。

同時に、演じるうえで晃子さん自身からヒントを得ることもありました。実際の晃子さんは落ち着きがあって、そこにいるだけで現場が明るくなって、ひまわりのような存在です。こうして家族を支え、脚本家であり監督である夫を支えているんだな、と。その雰囲気を参考にしつつ、私なりにドラマの朝子さんをつくっていきました」

中村アンさん
『そのままやってもらえればいい』と話してくださって、安心したのと同時に、すっと腑に落ちました(中村アンさん)

「初めて顔を合わせて、すぐに“家族”となって2か月半を走り抜ける…。これまでドラマで子供と接する機会は多くなかったので、家族としてどう関係を築けばいいのか手探りのスタートで、お互いに必死だったと思います。
現場では蝶子と晴太がすぐに『母ちゃん』って呼んでくれて、いい雰囲気をつくってくれたので助かりました」


こうして出来上がったドラマのなかの朝山朝子は、口の悪いなかにも「優しさ」があって、家族への深い愛を感じさせる人物に。脚本家の夫(小澤征悦)のために事務所を設立し営業に奔走し、反抗する娘・息子たちのことも決して見放さず、とことんつきあいます。

中村アンさん
ドラマ『こんばんは、朝山家です。』は毎週日曜よる10時15分より放送中

インタビューVol.2では、こんな魅力あふれる朝子によって中村アンさん自身に起きた変化を語ります。どうぞお楽しみに。

【番組詳細】

ドラマ『こんばんは、朝山家です。』
毎週日曜よる10時15分より、ABC・テレビ朝日系放送中

俳優の中村アンさん主演のTVドラマ「こんばんは、朝山家です。」
 

朝山家は、脚本家として売れている夫の賢太(小澤征悦)、夫が所属する事務所で社長を務める妻の朝子(中村アン)、高校1年の長女・蝶子(渡邉心結)と小学6年の息子・晴太(嶋田鉄太)の4人家族。

ドラマの始まりは、賢太が執筆した朝の国民的ドラマ『ムキムキ』初回放送の朝を、家族と一緒に見ようとそわそわしながら迎える話から。しかし、居間には賢太以外、誰の姿もなく…。発達障がいの特性から朝が弱い晴太はぐずって起きてこず、朝子はそんな晴太の世話と家事、そして仕事に出かける準備で大忙し。だが、それは朝子から見れば、夫が一日中エゴサーチに明け暮れる、悪夢のような一日の幕開けだった!

子どもの面倒も見ず、自分の承認欲求を満たすためエゴサーチに没頭する賢太と、そんな賢太を長年夢見る映画監督としてデビューさせるため、家庭と仕事を切り盛りしながら営業に勤しむ朝子。どこまでも自己中心の夫と、そんな夫にキレまくりながらも自分以外のことを優先する妻の、愛しくも奇妙な家族の物語。

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