「フォション」は、いわずと知れた創業1886年の高級惣菜、スイーツ、贈答品などを販売する老舗。この歴史あるメゾンが迎える新たな展開はどういうものなのだろうか。

「フォション・ロテル(Fauchon l’Hotel )」は、かつて「バカラ」のブティックがあったマドレーヌ広場の角とその周辺に位置している(ちなみに「バカラ」は昨年、中国企業が買収)。「フォション」の惣菜を販売していたブティックとちょうど対角線上にある位置。現在、工事が続けられているところだ。

公開された資料によると、全館、フーシャ・ピンクがアクセントになった内装で、カフェ・スペースの椅子から、壁にかけられたコンテンポラリーな絵、客室のピローに至るまでピンクの差し色が印象的。内装の好みはわかれるかもしれないが、立地は最高だし、カフェはもとより、名門コスメ・ブランド「カリタ」のスパも併設され、宿泊客以外も大いに利用できそう。

フォション初のホテル「フォション ロテル パリ」

ブランドカラーのピンクが印象的な内装

デザイン・コンシャスなレセプションがゲストを迎える。
1階カフェは、待ち合わせや打ち合わせの場所として重宝しそう。
フーシャ・ピンクが効果的に使われているインテリア・デザインの客室スーペリエール。
フーシャ・ピンクと黒を組み合わせたシックなムードの客室ドゥリュクスも。

だが、食料品店がなぜホテル業に乗り出すのだろうか。「フォション」側に尋ねた。彼らによれば「ホテルはフォションの価値の延長線上にあります。オスマニアン様式の外観とコンテンポラリーな内装のこのホテルで、未来の顧客に、ライフスタイルとガストロノミー(高級料理)から生まれるオーダーメイドの経験をご提供したい」とのこと。ホテルは、食、住を兼ね備えた空間だけにビジネスとして広がりが期待できるというわけだろう。

ゆったり空間を使ったスイートのサロン。

実は、パリでは畑違いの分野からホテル業に乗り出すケースが増えているのだ。カクテル・バーからスタートし、レストラン、さらにホテルへとビジネスの場を広げているエキスペリモンタル・グループもそのうちのひとつ。すでにパリに2つのホテルを持ち、ロンドン、ヴェニスと海外展開も積極的だ。

「ホスピタリティやフランス風のライフスタイルを展開し、培ったノウハウを使って『エキスペリモンタル』というブランドを前面に押し出すためにホテル業が適している」とはエキスペリモンタル側のコメント。

高級モードグループのLVMHもすでにリゾート地のサントロペやクールシュヴェルにホテルを展開しており、パリでも旧サマリテーヌ百貨店をホテルとして生まれ変わらせているところ。現在、大規模な工事が続けられている。設計を担っているのが日本の妹島和世と西沢立衛によるSANAAだけに、素晴らしい建築物が出来上がり、パリの新名所となるのはまず間違いない。

意外だが、世界ナンバーワンの観光地の割には、ホテルが足りていないと以前から言われているパリ。2024年にパリ・オリンピックを控え、ホテル需要がますます増えることが予想されているだけに、他業種からのホテル業参入が今後も続くのではないだろうか。

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この記事の執筆者
某女性誌編集者を経て2003年に渡仏。東京とパリを行き来しながら、食、旅、デザイン、モード、ビューティなどの広い分野を手掛ける。趣味は料理と健康とワイン。2013年南仏プロヴァンスのシャンブル・ドットのインテリアと暮らし方を取り上げた『憧れのプロヴァンス流インテリアスタイル』(講談社刊)の著者として、2016年から年1回、英語版東京シティガイドブック『Tokyo Now』(igrecca inc.刊)を主幹として上梓。
公式サイト:Tokyo Now