連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、登山家で看護師の渡邊直子さんにインタビュー! 日本人女性として初めて8000m峰全14座を制覇された渡邊さんに、これまでの活動についてお話しをうかがいました。

渡邊直子さん
登山家・看護師
(わたなべ・なおこ)3歳から登山やサバイバルキャンプに単身参加し、アジアの子供たちと海外登山やキャンプへ。中学1年生で初めてパキスタンの4700m登山を経験。大学卒業後、看護師として働きながら、8000m峰遠征を重ねる。日本人女性初の世界トップ3座登頂ほか記録多数。'24年10月、42歳で、日本人女性初の8000m峰全14座登頂を達成。現在、東京在住。

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登山家・看護師の渡邊直子さん
登山家・看護師の渡邊直子さん

エベレスト、K2、カンチェンジュンガの世界トップ3座に登頂したのも、8000m峰14座を制覇したのも、日本人女性初。K2に3回、マナスルに4回登頂したのは、女性史上初。登山家としてものすごい経歴である。なぜ登るのか。

「休憩のためです(笑)。ヒマラヤに行くことは “癒やし”。私は日本の社会で生きていくことに向いていなくて、ストレスを感じることも多いので、それを、ネパールに行くことでリセットしてるんです。記録に挑もうという気はなく、ただヒマラヤが楽しい。シェルパたちに会いたい。それだけ」

これまで看護師として働き、収入はすべて山に注ぎ込んできた。少し前までは居住費節約のために自宅をもたず、カプセルホテルなどを転々としていた。「初」がつく数々の記録について「すごい」と称賛されるけれど、「私は普通の人間です。ただ、自分で稼いだお金で、登山の手配も全部自分でやって、8000m峰に31回登って、そして大きな怪我や凍傷もなく無事に下山している。そのことのほうが、『〜初』という冠よりも『すごい』ことなんだって、世間が気づいてくれたらいいなと思いますね」と笑う。

「登山って、困難や苦しさを乗り越えて達成するものだというイメージですよね。でも、本来、山は楽しい場所だと思うんです。私も幼い頃からヒマラヤに登ってきましたが、『こんなに素敵な場所に、どうしてみんな来ないんだろう』って思ってました。だから、多くの人にヒマラヤを知ってほしい」

’23年からは、初心者もOKの「ヒマラヤトレッキング」を開催。渡邊さんが信頼する超一流のシェルパたちと過ごしながら、ヒマラヤのベースキャンプに滞在する。

「私は、参加者には失敗したり思い通りにいかないこともおもしろい経験になることを知ってほしい。ふだんの仕事から解放されてか、ヒマラヤでの経験に感動して泣く人がたくさんいます。そして帰国時はスッキリ。その表情を見るのも楽しみなんです」

◇渡邊直子さんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
私の中には “やる気のない渡邊直子” と “やる気のある渡邊直子” がいます。毎朝、やる気のある渡邊直子が出てきて活動的な一日が始められるのを待ちます。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「おもしろい」。失敗談やハプニングも笑いに換えるのが好き。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
おしゃれなカフェや雑貨店に行きたい。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
動画編集が得意な気がするので、やれたらいいな、と。撮りっぱなしの2TBの動画もなんとかしたい。
Q.10年後の自分は何をやっている?
ネパールに関わる仕事がしたい。そしてネパールに住んでいたい。
Q.自分を動物に例えると?
カメ。コツコツと時間をかけて信頼を得ていくタイプなので。

※本記事は2025年11月上旬の情報に基づきまして、加筆・修正しております。

PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
剣持亜弥