スタイリスト 押田比呂美さん流「チェックイン・エレガンス」の奥義|リアルな体験からひもとく、ラグジュアリーかつスマートな旅スタイルとは── 

旅先でどんなファッションを纏うのか。それが旅の満足度を左右するものだと知ってはいても、チェックイン時の装いに焦点を当てたことはあるでしょうか。スタイリングからふるまいまで、押田さんによる熱い語りをお届けします。

 
押田比呂美さん
スタイリスト
「Precious」をはじめ、映画やドラマの俳優のスタイリングも担当。どんな人物がどんなロケーションで洋服を纏うのか、想像を巡らせながらコーディネートを行う。自ら「チェックイン・エレガンス」を命名。

「その土地になじむスタイリングで優雅にチェックイン。すると、心がゆっくり満たされていきます」(押田さん)旅先の空気感までスタイリングに取り入れて

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「大自然と溶け合うリゾートではハイエンドな素材を吟味」ファーの帽子やアウターに、カシミアのストールやスエットパンツを合わせた極上の旅スタイル。ニュアンスカラーのレイヤードに、トレンドのチョコレートブラウンを足せば、今年らしい雰囲気に。ファーをあしらったブーツも小粋。

旅におけるさまざまなシーンがあるなかで、「チェックインのときこそ、エレガンスを香らせることが大切」と語るのが、スタイリストの押田比呂美さん。旅先はリゾートなのかシティなのか、ホテルのムードはクラシックなのかモダンなのか。それらの要素をすべて鑑みて、しっかりイメージしてからコーディネートを整えていくそう。その名も「チェックイン・エレガンス」です。

「今なお恋しいのが、20年ほど前に本誌のロケで訪れた、アメリカ・ワイオミング州にある『アマンガニ』。国立公園を見渡す大自然に囲まれたホテルで、その迫力に心が震えたのをよく覚えています。圧巻は、エントランスから大階段を下りた先に広がる吹き抜けのロビー。天井まである大窓から雄大なるティトン山脈を眺めることができ、まるで自然と一体化したような感覚に陥ります。木材と石を使ったブラウンの色調が美しいこの空間で、いざチェックイン。さて、どんなスタイリングがふさわしいのでしょうか。私が選んだのは、リラクシングなラグジュアリースタイル。まず大切なのは色味です。大自然に溶け込む、グレーとブラウンのグラデーションを意識。次に厳選すべきは素材です。カシミアとファーをレイヤードすれば、その至極の肌触りが心身を存分に解放してくれることでしょう。まるで自然界を写し取ったような、洗練と温もりのスタイルに身を包み、一面の雪景色を眺めながらラグジュアリーステイをスタートさせる。これぞ冬旅の理想のチェックインではないでしょうか」

「想像力を働かせたファッションで堂々とふるまう。旅を愛する女性の最高に美しい姿です」(押田さん)堂々たるふるまいが旅のクオリティを上げる

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「シティの最高級ホテルはグッと感度の高い着こなしで」空港から直行することを考えて、機内でも着心地のいいニットワンピースをセレクト。そこにエッジの効いた小物を重ね、洗練度の高い「チェックイン・エレガンス」が完成。ピアスやブーツバックルのゴールドが都会的な雰囲気に。

さらにもうひとつ、押田さんが愛してやまないのがヨーロッパ、それもロンドンへの冬旅です。冷たい石畳に霧が美しく煙る街。かの地ではどんな「チェックイン・エレガンス」を思い描いているのでしょうか。

「あれは7年前のこと、現地に留学していた娘のナビゲートで『ザ ロンドン エディション』を訪れたことがありました。そのときはバーを利用したのみでしたが、その重厚かつモダンなムードに心を完全に奪われたのです。このホテルに泊まるのならば、英国へのオマージュは必須でしょう。ツイード素材のハット、シャーロック・ホームズを連想させるケープコート、そして “グローブ・トロッター” のラゲッジ。古典的なブリティッシュに陥ってしまわないよう、今どきのバッグやブーツで旬のオーラをプラスするのもお忘れなく。サインのために、チェックインデスクで優雅にグローブを外す…。その姿にフロントスタッフも一目おくでしょう。本物の富裕層を日々出迎えている彼ら彼女らは、やはりゲストをしっかりと見ています。だからこそ考え抜いたファッションで堂々とふるまう。そのアティチュードを介してコミュニケーションを図る。旅を愛する大人の女性の知的なたしなみ、それこそが『チェックイン・エレガンス』だと考えています」

 

ILLUSTRATION :
緒方 環
EDIT :
兼信実加子、安村 徹(Precious) 
取材&文 :
本庄真穂