イタリア料理はクセになる

春の訪れを間近に感じた3月の初め、イタリア旅行から戻ってきた。それ以来、私の食欲は止まらない。

イタリアに滞在した1週間ほどの間に、濃厚なチーズ、熟したトマト、滋味深い野菜、そして芳醇なワインに、胃袋を刺激されたからだ。なかでも、知人のイタリア人ファミリーに招かれ、そこで食した、いわゆる「マンマの味」は、どんなレストランにも勝るおいしさだった。

大きなテーブルに並んだ大皿にダイナミックに盛られた色とりどりの料理は、目からの刺激はもとより、家族みんなでテーブルを囲むことの幸せに満ちていた。これこそが、イタリアならではの「食文化」の豊かさなのだろう。そして、日本に戻ってから2か月以上もたった今でも、イタリアでの“美味しい記憶”が頭から離れない――。

そんな私のもとに、『ミッソーニ家の料理本』なる一冊の美しい本が届いた。

『ミッソーニ家の料理本』表紙

色彩の魔術師・“ミッソーニ”の美意識

“ミッソーニ”は、今年創業65周年を迎えるイタリアを代表するブランドだ。色鮮やかなジグザグ模様のニットウエア…といえば、思い出す人も多いだろう。

その“ミッソーニ”の創設者であるタイ&ロジータ・ミッソーニ夫妻の孫であり、現在のクリエイティブ・ディレクター、アンジェラ・ミッソーニの息子、フランチェスコ・マッカパーニ・ミッソーニが、ファミリーに伝わるレシピを丹念に集め、一冊の本にまとめたのだ。

Ⓒ MISSONI

大家族のなかで育ち、美食家としても著名なフランチェスコの料理に対する情熱と、“ミッソーニ”ファミリーの美意識が、ここに凝縮されたというわけだ。

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ミッソーニ家の垂涎のライフスタイル

マルチカラーのモザイク模様の表紙を明けると、四季折々の美しい料理が次々と目に飛び込んでくる。全編英文による料理本だが、まるで写真集のような美しさだ! 自宅の庭で、海辺の別荘で、そしてクリスマスパーティでのおいしそうなテーブル…。4世代にわたる家族たちと、そこに招かれたゲストたちの笑顔を収めた数々の写真によって、私たちは、ミッソーニファミリーたちの“垂涎のライフスタイル”を垣間見ることができる。

木漏れ日が美しい別荘のテラスは、豊かな週末を送るファミリーの姿を想像させ、そして、たびたび登場する10人以上は座れそうなビッグテーブルをもつ食堂は、ファミリーがいかに多くの人たちに愛されてきたかを教えてくれる。インテリアはラグジュアリーだけれど、決して華美な印象はなく温かい雰囲気にあふれて…、そんなところも、彼らの“趣味のよさ”と“生活の豊かさ”が伝わってくるのだ。

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コレクションのあとのディナーは評判に

さて、主題のミッソーニファミリーに伝わるレシピだが、“その味”はファッション業界ではすでに“伝説”となっている。毎回、ミラノコレクションのあとに行われるディナーでふるまわれる料理が評判となり、今ではディナーパーティへの招待は、ファッションウィーク中にみんなが一番に待ち焦がれているものでもあるそうだ。そんな噂のミッソーニ家の味の秘密がわかるなんて! これはもしかしたら、3ツ星イタリアンのレシピを知るよりも、すごいことなのかもしれない。

じっくり読んでみると……、材料は多くが6~8人前。さすが大家族とゲストたちをもてなす料理だけあって、大人数でガツンというのがなんだかかっこいい。そして、それぞれのレシピに添えられている、母アンジェラとフランチェスコの「これは簡単よ」とか、「バターの代わりにオリーブオイルにしてもいいわね」とか、「私はビネガーだけであっさり食べるのが好き」といったひと言コメントも微笑ましい! 料理はいたって簡単(そうに見えるが…)かつ、大胆。私にもできそうだ。

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盛り付けの色彩感覚もさすが“ミッソーニ”

例えば初夏の庭先での料理といえば、「アスパラガスのミラネーゼ風」。プリプリに太った白とグリーンのアスパラガスをスチームし、たっぷりのパルミジャーノチーズをかけ、上からアツアツのバターと細かくした炒り卵をかけて…。コツはアスパラガスに火を通しすぎずアルデンテに仕上げること。そして、アンジェラからのひと言コメントには「私はよく目玉焼きをつくって、それに絡めて食べるわ」ですって!

うーむ、今にもとろけるようなチーズの香りが漂ってきそうだ。アスパラガスのグリーンと白に卵の黄色が彩りよく、さらに、料理を引き立てる食器やクロスのセレクトもパーフェクト! 美しくて楽しい色彩感覚は、さすが“ミッソーニ”と感心するばかりだ。

料理好きの私としては、写真を見ただけなのに、俄然やる気にさせられる。ちょうど、今は日本でもアスパラガスが美味しい季節。今度の週末には、誰かを呼んで、つくってみようかな…。

『THE MISSONI FAMILY COOKBOOK』
仕様:英語版のみ
ALL Photos Ⓒ MISSONI  
出版元 : Assouline
購入先 : Assouline社公式ホームページ
※MISSONIブティックでの取り扱いは現状ありません。オンラインのみでの発売。
この記事の執筆者
小学館にて女性誌編集に携わる。その後、フリー編集者を経て、1992年に編集プロダクション・オフィスHATSUを設立。雑誌『Precious』のエディトリアル・ディレクターとして、創刊号よりファッションを中心に、編集企画・構成を担当している。
WRITING :
喜多容子