成田 凌さん
俳優
(なりた・りょう)1993年生まれ、埼玉県出身。2013年にモデルとして活動を始め、2014年にドラマ『FLASHBACK』(CX)で俳優デビュー。2019年に映画『スマホを落としただけなのに』(18年/東宝)、『ビブリア古書堂の事件手帖』(18年/20世紀フォックス映画・KADOKAWA)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2020年に、主演を務めた『カツベン!』(19年/東映)で第74回毎日映画コンクール男優主演賞を受賞する。さらに映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(20年/ファントム・フィルム)、『糸』(20年/東宝)などの演技で第63回ブルーリボン賞助演男優賞に輝く。以降も『くれなずめ』(21年/東京テアトル)、ドラマ『降り積もれ孤独な死よ』(24年/NTV)、配信ドラマ『1122 いいふうふ』(24年/Amazon Prime Video)、『ブラック・ショーマン』(25年/東宝)など幅広いジャンルで存在感を発揮。現在ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(NTV)にヒロインの恋人・佐伯ゆきお役で出演中。沢尻エリカさんとタッグを組んだ主演映画『#拡散』(株式会社ブシロードムーブ)が2月27日に公開。

“どこにも芯のない人間”をリアルに生きてみようと

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成田さんが演じる主人公の浅岡信治は、富山県の小さな町で介護士として働く寡黙な青年。SNSでの動画配信にハマる妻の明希とのささやかな生活は、彼女が地域のクリニックでワクチン接種を受けた翌日、突然、帰らぬ人となってしまったことから一変します。深い喪失感と疑念から、妻の遺影を首から下げクリニックの前に立ち続ける信治の姿が地方紙の記者・福島美波(沢尻エリカ)の目に止まり、“泣ける記事”を狙う彼女に取材されます。するとそのネット記事が“夫婦愛の象徴”として話題となり、拡散されるうちに、信治はいつしか反ワクチンの象徴として利用されていき…というセンセーショナルなストーリー。

――『#拡散』の脚本を初めて読んだときの、率直な感想を教えてください。

「企画書を読んでチャレンジングな内容だなと思いましたが、脚本が港岳彦さんという時点で、自分の中ではとてつもない信頼感がありました。港さんがこの題材をどう描くのだろうというワクワクもありましたし、実際に本を読ませていただくとものすごく面白くて、出演を即決しました」

――いちばんの決め手は何だったのでしょう。

「映画としての面白さもちゃんと満たしながら髄に入っていく脚本というか、人が誰しももっている“本当は触られたくない部分”を触られているような感じがしたんです。情報があふれるこの時代に何を信じるべきか、見極めることは簡単ではありません。そのことを今一度考えるきっかけになればと、そういった意味で映画としてみなさんにお届けすることに意義がある作品だと確信がもてて、自分がやりたいと思えました」

承認欲求やストレス状態は、誰もが“触られたくない”本質的なもの

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“触れられたくない部分”は人それぞれ違うと思う(成田さん)

――“触られたくない部分”について、もう少し教えてください。

「なんていうんでしょう…主人公の信治は配偶者を失うという、とてつもないストレスがかかっている状態で世間から祭り上げられた結果、自ら破滅的な道を歩み出してしまうんですね。その過程でかいま見える、SNSに依存してしまう弱さだったり、承認欲求をこじらせてしまうあやうさ、などでしょうか。

“触れられたくない部分”は人それぞれ違うと思うので、すべてを明確に言語化するのは難しいのですが、信治の中にある承認欲求やストレスは決して特別なものではないと思うんです。観ているこちら側も“そうなるのは、わからなくもない”と理解できてしまう側面がある。そこがこの作品の怖さであり、リアルである気がしています。“本当は隠しておきたい部分”を多方面から突いてくる作品なので、観る方によって刺さる箇所が異なるかもしれませんね」

――映画の怖さを際立たせる要素として、信治という人物がどんどん変化していく様子も印象的でした。

「信治の内面の設計として意識したのは、信治は生きることに対してあまりパワーを使っていない人であるということ。ちょっと力が入っていない感じというか、妻を失ってからはより地に足がついていない感じを意識しました」

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ちょっと力が入っていない感じというか、地に足がついていない感じを意識しました(成田)

――確かに信治は妻の生前から、彼女のなすがまま、ふわふわと生きている印象がありました。

「おそらく彼は、記憶に残っていかないくらい平穏な日々を送ってきた人だと思うんです。自然に囲まれた刺激の少ない地方都市でスローライフを送っている。ときおり、ソロキャンプでひとり静かに疲れを癒したり。

そんな日常の中である日突然、妻の死というものすごい強度のストレスが降り掛かるんです。諸説あるかもしれませんが、人間が最もストレスを感じるのは配偶者の死だと見たことがあって。そんなにも大きな負荷がかかった状態で、妻の死の真実を求めてスマホを開いてしまうんです。そしてSNSという場所に飛び込み、想像を遥かに超える数の味方がいることを知った彼はその世界にのめり込み、翻弄され、変貌していく。

喜びも悲しみも、全てが宙に浮いたふわふわした状態で感じるから、感情の浮き沈みの触れ幅も極端に大きくなる。その不安定さを大事にしたいと思い、信治に気持ちの安定感はもたせませんでした。

また“信治はこういうキャラクターだ”と芯みたいなものを据えてしまうと逆に身動きが取れなくなるので、今回はあえてどこにも軸を置かない状態で演じてみました」


繊細な役づくりの舞台裏、とても興味深かったです。Vol.2では、まるでASMR状態な成田さんの繊細な語り口から、繊細な役づくりのさらなる実際を伺ったのでご期待ください。

◾️映画『#拡散』2月27日(金)全国公開!

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(C)2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE
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■あらすじ:「あの時、虚実あふれる情報に翻弄された男の物語」 コロナ禍を乗り越えてもなお、真偽不明な怪情報やフェイクニュースが世に溢れ、ネット上で瞬く間に拡散され、真実が覆い隠された時代。現代社会のカオスな実像を空恐ろしくなるほどのリアリティと圧巻のエネルギーで痛烈に描き切った、衝撃のヒューマンドラマが誕生した。地方の小さな町で静かに日々を積み重ねていた介護士・浅岡信治(成田凌)の人生は、妻・明希(山谷花純)がワクチン接種の翌日に突然この世を去ったことで、その慎ましい生活は音を立てて崩れ去る。 「なぜ、彼女は死んだのか?」 答えを求めて浅岡は、担当医・高野(淵上泰史)に対する抗議活動へと踏み出す。その姿が記者・福島美波(沢尻エリカ)の目に留まった瞬間、物語は加速する。地方の片隅で始まった小さな声は、メディアからSNSへ、リアルからネットへと火が付き、浅岡の意志とは裏腹に、彼はいつしか“反ワクチンの象徴”として祭り上げられていく。その渦中で浅岡自身もまた、世間の熱狂に呑み込まれ、やがて、かつての彼とはまるで別の人物へと変貌していく。

■出演
成田 凌、沢尻エリカ 淵上泰史、山谷花純、赤間麻里子、船ヶ山哲、DAIKI、高山孟久ほか
■原案・編集・監督:白金(KING BAI)
■脚本:港岳彦
■配給: 株式会社ブシロードムーブ
公式サイト

問い合わせ先

PHOTO :
高木亜麗
STYLIST :
カワセ136(アフノーマル)
HAIR MAKE :
高草木剛 (VANITÉS)
取材・文 :
谷畑まゆみ