今月のMs.Precious……東京・目黒区の外国人向けヴィンテージマンションに、クルマ好きの人気作詞家の夫と暮らす50歳。子供は関西の大学に通っているため、現在は夫婦だけの生活。子供が高校生の頃までは夫の個人事務所の経理サポートをするくらいだったが、現在はNPOの事務局でほぼボランティアのようなパートをしている。勤務先には夫の職業を伏せているので高級車で乗り付けるわけにもいかず、電動自転車と電車で通うという「過剰に控えめ」なタイプ。服装もクワイエット・ラグジュアリーを地で行く方向性で、「映え」とか「盛る」は苦手である。電気自動車に興味津々で、「そのうち、子供の住む関西エリアにクルマで行けたらいいなと思って」と、カタログを見る時には、つい航続距離の長さを気にしてしまう心配性。

今月のクルマ……【Audi S6 Sportback e-tron】
1909年から続く老舗ブランドの4つの輪が重なるブランドロゴは、1930年代に4つの異なる個性の会社が統合された名残。そのため、当初は「このブランドの核は何?」という曖昧な時期がありましたが、その後の優れた経営者の手腕によって「技術開発にプライドのあるメーカー」として認知されるようになりました。古くはフェルディナント・ポルシェ博士設計の芸術品レベルのレーシングカーは有名でしたし、高性能な四輪駆動quattroや、アルミ合金を贅沢に使った軽量ボディ、はたまたモンスター級のラリーカーが人気者であったり、ともかくアウディのニュースはいつも技術の話題が傍にありました。その一方、1980年代の二代目アウディ80などで顕著だった「アウディっておしゃれ」という見え方もありました。技術と並んでデザインが洗練されていることは、アウディの大事なブランドコアです。バウハウス的デザインの傑作と言われた初代TT、端正なプロポーションで評価が高かった3代目A6など、アウディには美しいデザインヒストリーが多く見つかります。プロポーションの美しさに特長があるアウディの流れは、今回のSportbackにも象徴されています。伝統的なサルーンだったA6を、新しいクーペ風のスポーツバックに大胆に仕立て直すメーカーなど、アウディをおいて他にないでしょう。しかもスポーツバックは「e-tron」のみの設定と、電動化にも前のめりです。ちなみにS6は四輪駆動quattro。かつて雪道最強と言われたクワトロが緻密な電気モーターという武器を得て、さらに高性能に。新しい技術を使ってさらなる高みを目指したあたりも、「技術による前進」を掲げるアウディならではの好例です。

松任谷正隆が選ぶ「いま、このクルマで聴きたい音楽」……スティング『English man in New York』

「アンダーステイトメント志向な人に似あいそう」――松任谷

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「オーセンティックなセダンよりもスポーティなイメージがしますね。素敵!」(Ms.P)

Ms.Precious きれいな色ですね。海のよう……。

松任谷 珍しい色ですよね。マルペロブルーメタリックと言うらしいです。メタリックには見えないですよね。

Ms.Precious このプロポーションがイルカみたいに見えますよね。

松任谷 ヌルッとしていますよね。

Ms.Precious なぜアウディを選んでいただいたんですか?

松任谷 そうですね。なんとなくアンケートの中からアンダーステイトメントがお好きなのかなあ、と。

Ms.Precious あ、好きなブランドの項ですか?

松任谷 まあ、それだけではないのですが、ところどころにどこか芯のようなものを感じたというか。

Ms.Precious アンケートからそんなものを読み取られるんですか?

松任谷 これがPCの文字でなく書き文字だったら、もっとよく読み取れる自信があるんですが。

Ms.Precious 文字には自信ないです。

松任谷 ああ、それは同じですね。どうして自分の文字って嫌なんでしょうね。

Ms.Precious 私の文字は女子高生の頃から全く進歩がなくて。

松任谷 脱線するようですが、小さい文字を書かれますか?

Ms.Precious ええ、小さいですね。斜めってます。

松任谷 そういう文字を男が書いたらどうなんですかね。

Ms.Precious 気持ち悪いと思います。

松任谷 まあ、そうですよね。で、ドイツ車がいいということですが。

Ms.Precious まあ、これは主人の好みなだけで。私はどこの国でもいいんです。

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「電気自動車だからか、前から見ると先進的な感じがしますね」(Ms.P)

松任谷 とはいえ、やはり一緒に暮らされている訳だからそういうところはね……。

Ms.Precious 我が家には2人乗りのスポーツカーしかないんです。

松任谷 ポルシェということですが、現在はそのクルマを共有されているんですか?

Ms.Precious いえ、あれはマニュアルで主人専用。子供が家を出てからあれになってしまって、それ以来私は運転をしてなくて。

松任谷 なるほど、それまでは運転をなさっていた訳ですね? 運転歴は結構長い、と書かれてましたもんね?

Ms.Precious はい。運転は好きで長距離とかいつも私がハンドルを握っていましたから。

松任谷 クルマの種類は書かれていませんでしたが、複数、とありました。どんなクルマにお乗りになっていたんですか?

Ms.Precious 割合大きなクルマが多かったですね。

「最近、マンションに充電設備ができて、電気自動車に俄然興味が」――Ms.Precious

松任谷 ああ、そうでしたそうでした。クルマの好みのところに小さいクルマではない方が、と書かれていました。

Ms.Precious やはり、スポーツカーがあるので、もう1台は少し大きめな方がいいかと思って。

松任谷 電気自動車にも興味がある、と書かれていましたが、一軒家なのですか?

Ms.Precious いえ、マンションなのですが、最近充電設備が出来て、なのに誰も使ってないんです。

松任谷 なるほど、それはもったいないですね。このクルマが気に入っていただけるといいのですが。

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「電気自動車ってどんなものかしらって思っていたけど、スーッと滑らかな走り出しがクセになりそう。イートロンという名前も響きがいいし覚えやすい」(Ms.P)

Ms.Precious もう見た目から好きです。

松任谷 それは嬉しいな。ドイツ車といってもいろいろありますからね。

Ms.Precious ベンツとかBMWとか、ですか?

松任谷 そうですね。ワーゲンもあるし、ポルシェもありますね。

Ms.Precious ポルシェはもういいです。

松任谷 正直に言うと、アウディとポルシェは兄弟メーカーなんですよ。このクルマの土台部分はポルシェのマカンエレクトリックと同じものを使ってます。

Ms.Precious マカン?

松任谷 SUVです。小さい方の。

Ms.Precious そうなんですね。ではどこが違うんですか?

松任谷 土台以外は全部、と言いたいところだけれど、8割は違うんじゃないかなあ。

Ms.Precious 質問なんですが、なぜベンツやBMWではなかったんですか?

松任谷 まあ、最初に言ったようにアンダーステイトメントな感じだったらこれかなあ、ということでしょう。

Ms.Precious ちなみにベンツはどういうイメージを持たれていますか?

松任谷 そうですね。今はゴージャスという言葉が似合うクルマになってますよね。それに宇宙的なデザインが足されている感じですかね。乗り味は柔らかくてトロトロなものが多いでしょうか。

Ms.Precious ではBMWは?

松任谷 ひと言で派手なデザインですよね。最近特にその傾向が強いように思います。これは最初にないな、と思いました。

Ms.Precious そうですか……。

松任谷 あれ? がっかりされてます?

Ms.Precious いえいえ、全然。そんなに違うんですね。

松任谷 ま、これは個人的な意見ですので気にしないで下さい。

Ms.Precious では乗ってもいいのでしょうか?

松任谷 もちろん、そのために持ってきたので。

Ms.Precious ドアハンドルが面白いですね。普通に見えて普通じゃないです。

松任谷 電気式みたいな感じですよね。使いやすいかどうかは長く使わないと分かりませんね。

Ms.Precious 座った感じはいいです。なんだか運転しやすそう。

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「バーガンディのシックなシートは、ステッチも効いていてモダンな印象」(Ms.P)

松任谷 電気自動車は初めてですか?

Ms.Precious はい。少しドキドキしてます。

松任谷 基本的には同じだと思って下さい。エンジンの音が聞こえないだけで。その小さなレバーを下に押し下げるとドライブに入ります。

「アウディのステアリングフィールは僕の最も好きな部分のひとつ」――松任谷

Ms.Precious はい。ではスタートします。

松任谷 どうですか?

Ms.Precious いいですね。スッと動くんですね。やっぱり電気自動車はどこか違う感じがします。

松任谷 そうかもしれませんね。

Ms.Precious 不思議な音がするんですね。宇宙音のような……。

松任谷 ああ、やっぱり聞こえますか? 僕はこれは作った音ではなく、モーターの音かもしれない、と思っていたんですけど。でも囁くようなレベルですよね。

Ms.Precious ハンドルが軽くていいです。

松任谷 アウディのステアリングは僕の最も好きな部分のひとつで、なんだかスッキリしていますよね。粘り気がないというか。それにこわばった感覚もないでしょ?

Ms.Precious いい感じです。でもこの画面というんですか? メーターというのか、こんな複雑そうなもの使いこなせる自信はありません。

松任谷 パソコンは苦手ですか?

Ms.Precious はい。

松任谷 僕も苦手です。でもこれは慣れれば大丈夫。便利なところだけ覚えればいいんです。

Ms.Precious 変なボタン押したら飛んで行ってしまうなんてことはないですよね?

松任谷 007じゃないので。

Ms.Precious ハンドルの下の左右についている平べったいのは?

松任谷 これはパドルですね。エンジン車だとこれでシフトアップとかダウンとかするんですが、これの場合は回生ブレーキの具合を調整するんです。

Ms.Precious やってみても怖くないですか?

松任谷 やってみてください。全然大丈夫ですから。

Ms.Precious どっちをどうするんでしょうか?

松任谷 ではまず左の方を手前に引いて下さい。少しエンジンブレーキに似た感じがすると思います。

「回生ブレーキっておもしろい仕組みですね。電気自動車初心者には新鮮」――Ms.Precious

Ms.Precious あ、本当だ。

松任谷 もう一回引いてみて。

Ms.Precious あ、面白い、もっと強くブレーキが掛かりました。

松任谷 これ、高速道路とかでスピード調整をしたい時にブレーキの代りに使うと便利です。ブレーキランプがつかないから下手くそに見えないんです。

Ms.Precious あれ、でもアクセルペダルを踏んだら元に戻っちゃった。

松任谷 そうなんですよね。燃費というか電費を稼ぐために、出来るだけ抵抗をなくしているんですよね。アクセルから足を離してもまだ踏んでいるみたいな感覚になりませんか?

Ms.Precious そう言われればそうですね。で、右のパドルでしたっけ? これは?

松任谷 左の逆ですね。回生ブレーキが弱くなります。でも、はっきり言ってアクセル踏めば同じ事ですから必要なのかどうなのか……。

Ms.Precious そうとう気に入りました。なんだか使いこなせそうな気がしています。

松任谷 ではこのクルマの二重人格性をお見せしましょう。そのまま同じように運転していて下さいね。ではこのモードスイッチをスポーツにします。

Ms.Precious わっ、びっくり。急にバネがなくなった感じ。

松任谷 そうなんですよ。これはA6ではなくS6なので実はスポーツカーもびっくりなハンドリングを見せるんです。

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「慣れてきたら、ドライブセレクトボタンで乗り味と加速感を変えたら運転も楽しそう。電気自動車特有の宇宙音みたいなものも、ここでオン・オフできるですね」(Ms.P)

Ms.Precious ポルシェもこんなに硬くないです。

松任谷 そうですよね。モード切替でここまで極端に乗り心地が変わるクルマも珍しいんですけどね。

Ms.Precious でも慣れてきました。高速とかだとこの方が安心なのかもしれませんね。

松任谷 そうかもしれませんが、僕はこのノーマルのコンフォートモードの方が好きです。峠道でもこれで全然オッケーだと思います。

Ms.Precious スキーには行けるんでしょうか。

松任谷 もちろん。雪道といえばアウディですから。それにS6はアウディが先駆をつけたクワトロ、つまり四駆ですから。それにしてもA6のベースモデルを前輪駆動をやめて後輪駆動にしたのか謎なんですよね。

Ms.Precious 全然分かりません。

松任谷 失礼、わからなくていいんです。パンツ派だった人が急にスカート穿いたというだけの話ですから。

Ms.Precious へえ、そういうことなんですね?

Ms.Precious この天井のガラスは面白いんですよ。曇りガラスと透明ガラスを電気的に瞬時に変えることが出来るんです。それを部分的にも出来るんです。

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「お天気がいい日はルーフから光を感じたい。でも紫外線が気になる……なんて思っていたけど、UV対策されているのであれば安心!」(Ms.P)

Ms.Precious 透明といっても少し色がついていますよね?

松任谷 これは有害な紫外線をカットしているらしいです。女性にとっては当たり前のことかもしれませんが。

Ms.Precious ありがたいです。このグラスルーフのおかげで明るいですよね。それとさっきから音楽が耳のそばから聞こえてきているんですが。

松任谷 これはオプションのテクノロジーパッケージを選ぶとついてくるヘッドレストスピーカーのせいですね。オープンカーとかにはよくありますが、個人的にこういうクルマでは初めて見ました。

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「音源が耳の近くにあるって、不思議なサラウンド感があっていいですね」(Ms.P)

Ms.Precious なんだか現実を忘れさせてくれますね。このクルマ。

松任谷 それはいい意味でしょうか?

Ms.Precious もちろん。それで偉そうでないところがとても好感が持てます。

松任谷 よかったよかった。

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今月のクルマ
【Audi S6 Sportback e-tron】

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,930×1,925×1,465mm
車輌重量:2,370kg
車両本体価格:¥14,400,000(ベース価格)~

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

アウディ ジャパン

TEL:0120-598106

 

この記事の執筆者
1951年、東京都生まれ。1974年 慶應義塾大学・文学部卒。4歳からクラシックピアノを習い始め、14歳の頃にバンド活動を始める。20歳でプロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド「キャラメル・ママ」「ティン・パン・アレイ」を経て、数多くのセッションに参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして松任谷由実、松田聖子、ゆず、いきものがかりなど多くのアーティストの作品に携わる。1986年には音楽学校「MICA MUSIC LABORATORY」を開校。ジュニアクラスも設け、子供の育成にも力を入れている。松任谷由実のコンサートをはじめ、JUJU、平原綾香など様々なアーティストのコンサートやイベントを演出、映画、舞台音楽も多数手掛ける。2021年よりバンド「SKYE」に参加。日本自動車ジャーナリスト協会に所属し、長年にわたり『CAR GRAPHIC TV』(BS朝日・毎週木曜23:00~)のキャスターを務める他、『日本カー・オブ・ザ・イヤー』の選考委員でもある。ラジオ『松任谷正隆のちょっと変なこと聞いてもいいですか?』(TOKYO FM・毎週金曜17:30~)にも出演。好きなもの:朝のお茶の時間、夜の昼寝。
PHOTO :
小倉雄一郎(小学館)
WRITING :
松任谷正隆
EDIT :
三井三奈子