【目次】

【「国際ノウルーズ・デー」とは?いつ?】

■そもそも「ノウルーズ」とは?「意味」

「ノウルーズ[Nowruz]」は、ペルシャ語で「新しい[Now]」「日[Ruz]」を意味し、イラン(ペルシャ)暦における元日、つまり「新年」「お正月」を意味しています。

■「国際ノウルーズ・デー」とは?「いつ」「意味」「目的」

イラン暦において最も重要な祝日であるお正月(ノウルーズ)は、春分の時期にあたり、人々は新年と春の始まりを盛大に祝います。2010年の国連総会では、ノウルーズが持つ文化的価値や、異なる国や民族が共有する伝統を称えることを目的に、3月21日が「国際ノウルーズ・デー」として定められました。「ノウルーズ国際デー」とも呼ばれる国際デーです。

また、ノウルーズは2016年にユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

■英語表記は?

[International Day of Nowruz]です。

■「国際デー」とは?

国際連合(国連)は、さまざまな国際デー、国際年を定めています。平和と安全、開発、人権・人道の問題など、ひとつの特定のテーマを設定して、国際社会の関心を喚起し、取り組みを促すのが目的です。国連総会やさまざまな国連専門機関によって、宣言されます。


【なぜ3月21日?ノウルーズと春分の関係】

「ノウルーズ」は、少なくとも紀元前6世紀にまで遡る儀式で、現在の主要宗教が成立する以前から、中央アジアとイランの多くの国の文化の一部となっていたといわれています。なかでも古代ペルシャの宗教であるゾロアスター教の伝統に基づく年末年始の儀式には3,000年もの歴史があり、中央アジア、西アジア、コーカサス、バルカン半島などで祝われてきました。現在は宗教の枠を超え、春の訪れと自然の再生を祝う文化的行事として定着しています。

■なぜ3月21日?

ノウルーズが毎年3月21日頃に祝われるのは、この日が天文学的な「春分」にあたるためです。

古代ペルシャの暦において、春分は「冬の終わり」と「生命の再生」を象徴する極めて重要な転換点でした。昼と夜の長さが等しくなるこの瞬間を境に、太陽の光が強まり、厳しい冬(闇)に打ち勝って自然が芽吹き始めることから、この日を「新しい日(ノウルーズ)」として一年の始まりに定めたのです。

■「春分の日」って、年によって変わるのでは?

現在、イランなどで使われている太陽暦(ヒジュラ太陽暦またはジャラーリー暦)では、春分が起きる瞬間を含む日を正確に計算し、その日を元日としています。そのため、年によって3月20日になることもあれば、3月21日になることもありますが、国際連合では便宜上、3月21日を「国際ノウルーズ・デー」として固定しているのです。


【ノウルーズはどこの国で祝われる?】

「ノウルーズ」は「ペルシャの新年」として知られていますが、その祝祭の輪はイラン一国にとどまらず、シルクロード沿いの多くの国々で祝われています。現在、「ノウルーズ」を公的な祝日として、あるいは民族的な伝統行事として盛大に祝っているのは主に以下の国々です。

  • ・西アジア・中東: イラン、イラク(主にクルディスタン地域)、トルコ(主に東部・南東部)、アフガニスタン

  • ・中央アジア: カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン

  • ・コーカサス: アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア

  • ・バルカン半島・その他: アルバニア、インドの一部(ゾロアスター教徒コミュニティ)、パキスタン、ロシアの一部(タタールスタンなど)


【ノウルーズの「祝い方」】

「ノウルーズ」の祝い方は地域によって異なりますが、「再生と希望」という共通のテーマをもっています。

■宗教的な背景

「ノウルーズ」は、ゾロアスター教において最も神聖な日のひとつです。寒冷な季節には地下へ追いやられていた「正午の精霊(ラピスウィナ)」を、春の再来とともに迎える儀式でもありました。これは「善が悪に、喜びが悲しみに打ち勝つこと」を象徴しています。単なる一日限りのイベントではなく、数週間前から準備を始め、新年を迎えた後も続く一連の儀礼を伴います。

■大掃除「ハーネ・テカーニー」

新年の前に、家の中を徹底的に掃除する習慣があります。これをペルシャ語で「ハーネ・テカーニー(家を揺らす)」と呼びます。単なる掃除ではなく、古い年の埃や邪気を払い、新しい運気を迎えるための精神的な浄めとしての意味を持っています。

■チャハールシャンベ・スーリー(日の儀式と焚き火)

新年前最後の水曜日の前夜(火曜日の夜)、多くの地域で火を飛び越える伝統儀式が行われます。人々は焚き火を焚き、その上を飛び越えながら「私の黄色(病気や不運)をあなたに、あなたの赤(健康や活力)を私に」と唱えます。浄化と活力を意味する象徴的な行事で、冬の名残を捨て、春の温かさと活力を人生に呼び込むと言われています。

■家族との食事のあとには「お年玉」も!

新年の瞬間(春分の瞬間)には特別な料理をつくり家族全員が正装してテーブルを囲みます。新年が明けると、年長者が若者に「エイディー」と呼ばれるお年玉(新札の紙幣など)を贈るのが一般的です。その後、親戚や友人の家を順に訪問し、互いの健康と多幸を祈り合います。

■シーズダ・ベダル

「ノウルーズ」の締めくくりは、元日から数えて13日目に行われます。13という数字は不吉とされるため、その不運を避けるために家を空け、家族や友人と自然豊かな公園や山へピクニックに出かけます。この日を最後に、一連の新年の行事は終了です!


【ノウルーズの象徴「ハフト・シーン」とは】

「ノウルーズ」の時期、それぞれの家庭で用意される、最も象徴的な飾りは「ハフト・シーン(Haft Sin)」と呼ばれています。「ハフト」はペルシャ語で「7」、「シーン」はペルシャ語アルファベットの「S」を意味しています。その名の通り、頭文字が「S」で始まる7つの品物を美しく飾るのが伝統です。これらはそれぞれ、新しい年への願いや象徴的な意味を持っていますので、簡単に解説しますね!

■「S」で始まる7つの品物

サブゼ(Sabzeh):小麦やレンズ豆の新芽。「再生」や「生命力」を象徴しています。

サマヌー(Samanu): 小麦の芽から作られる甘いスプレッド。「豊かさ」や「豊穣」を象徴します。

セニェド(Senjed): ホソバグミの乾燥果実。「愛」を象徴します。

シール(Sir): ニンニク。「薬」や「健康」を象徴します。

シーブ(Sib): リンゴ。「美」や「健康」の象徴です。

ソマーク(Somarq): ウルシ科のスパイス。「悪に対する善の勝利」を象徴します。

セルケ(Serkeh): 酢。「年齢」と「知恵」の象徴です。

■そのほかの縁起物

7つの「S」以外にも、さらに縁起を担ぐために以下の品々が添えられることが一般的です。

・鏡: 自己省察と光の象徴。

・金魚: 生命の象徴。

・色付けされた卵: 豊穣の象徴。

・本: 知恵の象徴(詩集『シャー・ナーメ』や宗教聖典など)。

・ろうそく: 明るい未来と啓蒙。

これらの品々は単なる装飾ではなく、純粋さ、輝き、幸福、そして豊穣を願う家族の祈りが込められた空間となっています。


【ノウルーズの「料理」と「食文化」】

「ノウルーズ」のお祝いでは、料理が中心的な役割を果たします。特別な料理を囲んで、家族が一体感を感じるのです。麦芽料理がその代表で、炭水化物やタンパク質、脂肪分は重要視されてきませんでした。何世紀にもわたって、シンプルでありながら非常に効果的な方法で、長い冬の後のビタミン不足と戦ってきたのですね!

■スマラック

中央アジアでは「スマラック」と呼ばれる甘い小麦のプディングを何時間もかけて煮込みます。これは「ゆっくりと、でも確実に」春が訪れ、新しい出発を迎えることを象徴しています。夜、女性たちは大鍋を囲んで歌を歌い、物語を語り、願いごとをしながら「スマラック」をつくります。ここでの願い事は必ず叶うとされていますよ。

■ハリム(ハリーム、ハリッサ)

女性がスマラックをつくるのに対して、男性はハリム(ハリーム、ハリッサ)と呼ばれる、肉と麦芽汁のお粥をつくります。

サブズィー・ポロウ・マヒー

 ハーブ(サブズィー)をたっぷりと炊き込んだご飯(ポロウ)に、揚げた魚(マヒー)を添えた料理です。緑のハーブは「再生」「春の芽吹き」を、魚は「生命」を象徴しており、新年の初日に食べる最もポピュラーな料理のひとつです。

■レシュテ・ポロウ

細い麺(レシュテ)を混ぜて炊き込んだご飯です。麺は「人生の糸」に例えられ、これを食べることで「新年の物事が円滑に進むように」という願いが込められています。

■ノウルーズ・ケジェ

キルギスなどの中央アジアでは、雄牛の肉や穀物などを使って作る特別なスープが公の儀式として振る舞われます。


【ビジネス雑談に使える「ノウルーズ」の豆知識】

■今年(2026年)の「ノウルーズ」は?

国連では便宜上、3月21日を「国際ノウルーズ・デー」としていますが、実際には多くの国の新年は「春分の瞬間」に始まりますそのため、毎年「何時何分に新年が明けるか」が秒単位で計算され、その瞬間を家族全員で食卓を囲んで待ちます。2026年の春分は、日本時間で3月20日の23時46分です。この瞬間に、世界中で約3億人の人々が同時に新年を祝います。

■グレゴリウス暦を超えるイラン暦を編纂したウマル・ハイヤーム

11世紀の著名な学者(数学・天文学)であり詩人でもあったウマル・ハイヤーム(1048-1131)は、現在のイラン暦の元となるジャラーリー暦の編纂に関わり、春分を正確に特定するための計算を行いました。この暦は33年に8回の閏年をおくもので、高い精度をもつ暦として知られています。当時の科学水準の高さを物語るエピソードのひとつです。

■麦芽料理の栄養素

麦芽は、ビタミンやミネラルを豊富に含み、栄養価が高いとされています。さらに麦芽には、エネルギー生産や赤血球の生成などの身体機能に欠かせないビタミンB群が豊富に含まれています。チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、葉酸(ビタミンB9)などです。また、カリウム、鉄、亜鉛、カルシウム、リン、セレン、マグネシウム、ナトリウム、銅、マンガンなどのミネラルも豊富に含まれています。

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日本が「春分の日」に春の訪れを祝うように、世界各地でも約3億人の人々が「ノウルーズ」で新年を迎えます。ビジネスパートナーがノウルーズを祝う地域の方であれば、ひとこと挨拶を添えるだけでも、会話がより円滑になるでしょう。

「ノウルーズ・モバラク(Nowruz Mobarak!)」(ノウルーズおめでとう!)

かつてシルクロードが文明を結んだように、ノウルーズは今もなお国や文化をつなぐ役割を担っています。「国際ノウルーズ・デー」をきっかけに、春の訪れとともに新たな始まりに思いを寄せてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) :