映画への登場は、丁重に辞退された。一体なぜ? 

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2025年5月(59歳)アメリカン・ミュージック・アウォード

2026年6月、ジャネット・ジャクソンが来日、熱狂のうちに三公演が終わったが、60歳ともなるのに歌にもダンスにも衰えがなく、年齢を重ねてからのパフォーマンスには不満が出るのが常なのに、ジャネットはやっぱり凄いと再評価する声が多く聞かれた。 

しかし同じような時期に公開された映画「マイケル」にジャネットの姿はなかった。言うまでもなくマイケル・ジャクソンの生涯を描いた伝記的映画、他の兄弟姉妹はそれなりに顔出していたが、極めて重要な存在であった妹ジャネット・ジャクソンはなぜそこにいなかったのか? 

プレミアでは、姉のラトーヤ・ジャクソンが「ジャネットは丁重に登場を辞退した」と説明しているが、その理由は、一切明かされていない。それだけに、いろんな憶測が飛び交ったのは確か。 

 一方で、マイケルが「母であり姉であり精神的な支え」でもあると心から慕ってきたダイアナ・ロスも、演じた女優の撮影は終わっていたと言うのに結局その部分はカットされ、マイケルの娘のパリスもプレミアには姿を現わさず、この映画そのものに批判的だったととも報道されているのだ。 

それぞれに事情も思いも違ったはずだが、マイケルの幼少期からの、ジャクソン一家を描いた映画だけに、その末っ子であるジャネットにはより重く深い思いがあったはず。 

マイケルは、もっと複雑で、もっと緻密な人物だった? 

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1972年12月(6歳)自宅にて 兄のマイケルと

 一家の貧困、父親によるマイケルへの虐待、大成功してからもプロモートにおける妨害があったことなど、ジャクソン家の一員として改めて見たくない場面もあったのだろうが、逆に美しく描かれすぎているという不満があったのではないかとの見方をする人が少なくない。 

 かと言って、事実をもっとリアルに描いて欲しいという意味ではなく、兄たちの中でもとりわけ親しく、尊敬もしていたマイケル・ジャクソンは、もっと複雑で、もっと緻密な人物だったことに、思いを残してしまったのではないかと言われるのだ。 

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1982年8月(16歳)ポートレイト・セッション

それも、ジャネット・ジャクソン自身が感受性が強く極めて繊細な心の持ち主だったからとも言われる。生まれた時すでにジャクソン家は有名で、ある意味、作られたルートを歩くように子役となり、海外の人気ドラマにも出ていたと言われるジャネットだが、撮影現場ではおとなしく、自己主張などできるタイプではなかったと言う。ましてや歌手より女優志望だったと言うのに、16歳で歌手デビューするのは本意ではなかったとの説もあるのだ。

また太りやすい体型を揶揄されることもあって、拒食症と過食症を繰り返すような精神的な不安定さも噂された。 

また、大ブレイクするのが、自立への意志を歌う「コントロール」であったこと、またその後も差別や貧困問題などを意識した社会性のある曲にこだわったことなど、ジャネットは知的で思慮深く、信念を持って生きている女性であることが、若い頃から垣間見えていたといっていい。

世界のトップスターにして、謙虚で冷静、 控えめであるというギャップ 

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1993年2月(26歳)第35回 グラミー賞授賞式 兄のマイケル・ジャクソンと

 世界のトップアーティストに躍り出た後も、謙虚で冷静、穏やかな人柄が際立ったが、一方で意志が強く頑固なところもあるともされる。私たちが世界的なポップスターに抱いているイメージとは全く違う。家族思いで努力家、控えめな性格だったというのである。どちらにせよ、その性格でトップに上り詰める才能と魅力は、やはり格別なものだったと言っていい。 

忘れていた人も多いと思うが、全米が観るスーパーボールのハーフタイムショーの、ジャスティン・ティンバーレイクとの絡みで、彼が衣装を剥ぎ取る振り付けで、乳房が露出してしまい、なぜかジャネットだけが猛批判を受け、グラミー賞からも締め出されるなど完全に干された状態となった時期がある。20年以上前のこと、まだジェンダーや人種等への差別が大きかった頃でもあるが、ジャクソン家への偏見といったものが根底にあったことは明らか。これを黙って乗り越えた上に、半ば責任を彼女1人に押し付けたジャスティンを責めるどころか、良い友人であるとサポートするような場面もあったことから、逆に今、差別が強く問題視される時代となって、その態度が改めて賞賛されていたりするのだ。 

 2度目の結婚は、10年近く秘密にされた 

 3度の結婚をしているが、1度目は18歳の時の家出に近い形での駆け落ちで、すぐに解消されたが、2度目の結婚は9年間も続きながら、世間には知られていなかった。いや自ら公表を拒み、一緒にアルバムを作るような仕事上のパートナーでありながら、結婚はずっと伏せられていたのだ。仕事と私生活を完全に分け、公私混同することもなかった訳だが、言い換えれば、私生活の自分、素顔の自分が注目されることを極端に嫌う人でもあったのだ。 

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1991年に結婚したレネ・エリゾンドと。1997年9月 アルバム『ザ・ヴェルヴェット・ロープ』リリースパーティー。

3度目の結婚は中東の大富豪とのもので、イスラム教徒に改心、50歳で初めての出産をしているが、その数ヶ月後に離婚、しかしその一人息子を今、本当に愛情深く育てているとも言われる。 

あれほどの大成功を果たしながら、傲慢になることもなく、むしろ傷つきやすい心をどこにも収めることができずに苦悩するのは、兄のマイケルと非常によく似ている。そういう意味でもまだ、兄を失った心の空白を埋めることはできずにいるのかもしれない。そんな中で、綺麗に作られすぎたドラマに自分を投影ことができなかったのは、とてもよくわかる。 

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2015年6月(49歳)BET アウォード

映画「マイケル」はかなりの確率で続編が作られるはずで、一作目でほとんど描かれなかった児童虐待問題を描かないわけにはいかないが、その時またジャネットのそうした高潔な人柄が示されるのかもしれない。映画のヒットで思いがけず注目を浴びたジャネットの人となり、この人なりの愛情深さに改めて心を寄せる人が少なくないのである。 

この記事の執筆者
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『大人の女よ!も清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
PHOTO :
Getty Images
WRITING :
齋藤薫