自分がつくった特集って、自分の子供・・・というよりもひり出した○○○みたいで、いつ見返しても恥ずかしいんですよね。しかしそんな中にあっても、「これは我ながら見事だったな〜」と唸らせられる特集がいくつかあります。その中のひとつが2014年春号の「ドルチェ&ガッバーナ×シチリア特集」。当時ドルチェ&ガッバーナはデザイナーのルーツであるシチリアをテーマにしたコレクションを発表しており、僕はその涙腺を刺激しまくる世界観に一目惚れ。こちらの洋服をパレルモに持って行き、現地の人々・・・漁師から貴族にまで着せてモノクロフォトで撮影する、という試みにチャレンジしたのです。

まあ神殿柄のスーツやTシャツなど、正直いってリアルクローズとは言い難い洋服ばかりだったのですが、シャイながらも豊かなホスピタリティと情熱を秘めたシチリアの人々、そしてダイナミックな景色にはそれらが見事に似合う。僕はほかのイタリアとは全く違う、シチリアという土地の持つ強烈な個性にっすっかり惚れ込んでしまいました。

そして2018年6月。出張の合間にできたオフを利用して、そんなパレルモに再び訪れることができました。今回宿泊したのは「グランドホテルエデパルメ」。1874年創業でかつてワーグナーも宿泊したという、歴史のある5つ星ホテルでした。とはいっても宿泊料は6月の宿泊だというのにダブルルームが1泊1万2000円程度。そう、パレルモは他のイタリアの都市とくらべても、だいぶ物価が安いのです!

風格は抜群ですが、室内は若干ボロいかも!? 僕のように古いものが大好きな方にはおすすめです。

パレルモ、旧市街を歩く

今までいろいろな都市を旅してきましたが、結局いちばん楽しいのは観光名所と化した壮麗な建築物でも華やかなビーチリゾートでもなく、庶民がひしめく旧市街をひたすら歩き回って、みんなが食べているものを食べること。今回もそんなテーマで、3日間歩き倒しました。

旧市街のど真ん中にある壮麗な四つ角、「クアトロ・カンティ」。
子供が元気よく遊びまわる、東京でも失われてしまった下町の風景。
旧市街ではいまだにこんな買い物スタイルも!
まるでアラブのマーケットを彷彿させる、猥雑なエネルギーを放つ朝市。
新鮮なフルーツやフルーツや海産物が激安!
現地ではラーメン感覚で食べられている、いわゆるモツバーガー。脂っこいですが味自体はあっさり。ラードマシマシで食べるのが好みです
こちらはストリートのモツ焼き。客層は日本とほぼ同じ、じゃりん子チエ系!

「ニューシネマ・パラダイス」の村へ

着いた瞬間脳裏に流れだす、エンニオ・モリコーネの曲! 映画館「パラダイス座」こそ撮影用のセットだったため残っていませんが、ほかはほぼ映画公開当時のまま残されているとのこと。

約2000人が暮らす静かな村は、古い歴史はあるものの、観光資源と呼べるものは乏しく、「ニューシネマ・パラダイス」ファンの観光客が数日に1組来訪する程度。2軒程度のカフェと1軒のレストラン、1軒のB&Bがあるくらいの規模でしょうか。したがって外国人観光客の来訪はちょっとしたイベント。

映画の資料館、村の博物館、映画のロケ地etc.出会った人たちみんなが、それぞれの自慢の場所へ僕たちを案内してくれます。といっても、「お金を落としてくれる」お客さんだから歓迎しているわけじゃありません。だってこの村には、観光客向けのカフェやレストランはもちろん、土産物屋すら皆無。絵葉書1枚売ってないわけですから、そもそもお金を落とす場所がないのです(それくらいつくればいいのにね)。つまり純粋たるホスピタリティ。

役所の方が案内してくれる、小さな映画の資料館。来訪者が来ると映画のテーマを流してくれます。ちなみにトト君は現在スーパーマーケットのオーナーだとか。
喜んで写真に収まってくれる、心温かなおじいさんたち。
「年寄りばかりじゃなんだから、そこの若者の写真も撮っていきなさい!」と若い女の子に呼びかけるも、「準備してないんだから勘弁してよ!」と怒られてしょんぼりの図。
お巡りさんですらこの村ではフレンドリー!

これらの写真をFACEBOOKにアップしたところ、映画公開当時にこの村を訪れた方から「30年前と全く変わってないなあ」というコメントを頂戴しました。今までも、そしてこれからも変わらぬ素朴な人々が暮らす、まるで桃源郷のような村、パラッツォ・アドリアーノ。この村は映画が魅力的だったから素敵なのではなく、素敵な村だから映画が魅力的だったのでしょう。前回はカメラやバッグを盗まれたり、今回はフィレンツェ→ロンドン行きの飛行機が欠航したり、イタリア旅行にトラブルはつきものですが、こんな素敵な風景や人々との出会いがあるから、嫌いになれないんですよね。

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
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