連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、嵐の中でも炎が消えない、高い耐久性を誇る唯一無二の『ハリケーンランプ』を製造している、大阪の株式会社「WINGED WHEEL」代表取締役の別所由加さんにインタビュー。

闘病しながらひとりでランプ会社を経営していた母の会社に、大学を中退して20歳で就職した別所さん。その数年後、中核を担っていたランプ職人が急逝され、まさに家業が途絶える危機に直面します。

いつもは弱音を吐かない母が吐露した言葉をきっかけに、曽祖父が立ち上げた会社を継ぐ決意をした別所さん。そこまでの決意とともに、約200もの製造工程を経て完成する唯一無二の『ハリケーンランプ』についても、今後の展望もあわせて詳しくお話しをうかがいました。

別所由加さん
株式会社「WINGED WHEEL」代表取締役
(べっしょ ゆか)1989年大阪生まれ。音楽好きで進学した大阪芸術大学を中退し、20歳のときに母親の経営する「WINGED WHEEL」に就職。1924年に曽祖父が製造を始めたハリケーンランプの技術を受け継ぎ、’13年代表取締役に就任。唯一残る日本製のランプを継承する。’16年に新たなブランド “FLAME SENSE” を立ち上げ、新しいランプの創作にも力を注ぐ。

【Osaka】「炎の揺らめきは恋も生み出す」人の心を温かく照らすランプ職人

株式会社「WINGED WHEEL」代表取締役の別所由加さん
株式会社「WINGED WHEEL」代表取締役の別所由加さん。

「シングルマザーの母は病気でほとんど家におらず、『あなたが20歳になるまでは生きられない』というのが口癖でした。そのため『20歳までに人生の方向性を決めないといけない』と考えるようになり、20歳で大学を辞め、母が経営するランプ会社に就職しました。その数年後、とても優秀なランプの組立職人が急逝。うちは曽祖父が立ち上げた会社ですべて手づくり。技術は代々口伝で継承してきたので、まさに家業が途絶える危機に直面しました。弱音を吐かない母が『もうあかんかもしれん』と漏らしたとき、自然と『私が継ぐから心配しないで』と答えていました」

別所さんがつくるハリケーンランプはその名のとおり、嵐の中でも炎が消えないよう、高い耐久性を誇っているのが特徴。約200の製造工程があって、今もそのすべてをノートに書き留める作業を続けている。金型や機械はまるで生き物のようで、日々少しずつ状態が変わるから、その変化も漏らさずに記録。時代と共に修理職人が減っていくなか、大切に従来の機械を使い続け、昔ながらの製法を守ることにこだわっている。

「祖父はとてもロマンティックな人で、『恋人たちは炎の揺らめきが映った瞳に恋をする』『ランプの炎を見つめながら語り合えば、きっと素敵な家族になれる』という言葉を残しているんです。私はその理念が好きで、ランプを感情的な商品だと考えてきました」

この秋には、オイルを入れて灯すタイプではなく、より気軽に扱えるキャンドルタイプを発表予定。アウトドアだけでなく、インテリアアイテムとしての認知度も高めていく。

「今、さらなる挑戦として、海外展開を進めています。祖父の代は輸出がメインで、そこに再チャレンジしようと。狙っているのはEU、それも火を灯す文化が生活に残っている北欧エリアです。私にとって仕事は人生そのもの。国内唯一のハリケーンランプメーカーとして、プライドをもってつくり続けていきます」

◇別所由加さんに質問

Q 朝起きていちばんにやることは?
前向きな言葉を見る。今は母が落書きみたいに書いた「とにかく行け!」という内容のシンプルな言葉。

Q 人から言われてうれしいほめ言葉は? 
やはりハリケーンランプに関するコメント。ロマンティックなシチュエーションで使っているなど、感情の商品として使われるのがわかるとすごくうれしい。

Q 急にお休みがとれたらどう過ごす? 
休みという概念がなさすぎて…。美術館か本屋へ行こうかな。

Q 仕事以外で新しく始めたいことは? 
「料理」と言い続けて何年も経ってしまいました。

Q 10年後の自分は何をやっている?
次のランプ職人を育てていたい。

Q 自分を動物に例えると?
チャッピーに聞きました。警戒心が強いのに好奇心旺盛なキツネだそう(笑)。

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PHOTO :
内藤貞保
EDIT&WRITING :
喜多容子 ・木村 晶(Precious)
取材 :
木佐貫久代