麗しきおしゃれプリンセスの先駆者、ヨルダンのラーニア王妃

ヨルダン・ハシミテ王国のラーニア王妃。1970年生まれ48歳。今続々と誕生している民間出身の美しいプリンセスたちの先駆者として、もはや伝説的なファッションアイコンだ。

美貌は年齢とともに、ますます洗練され、スタイルも抜群で、ニコール・キッドマンやスーパーモデルなどと並んでも遜色なく、よくこういう女性が存在するものだと感嘆するほどのビジュアルの完璧さである。

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ヨルダンのラーニア王妃

パレスチナ人の医師の娘として、故郷パレスチナから紛争を避けて移住した、クウェートで誕生、そこもまた戦火に追われヨルダンへ移住。大学を卒業後、アンマンのシティバンクに勤務。知人のパーティで出会ったアブドゥッラー王子と1993年に恋愛結婚。現在は2人の王子と2人のプリンセスの4人の子供を持つ母親である。

王妃としての活動もパワフルだ。ビジネスウーマンとしてのキャリアを生かし、女性のための職業訓練校を作り、児童虐待防止計画などを推進、社会的弱者の地位向上のために貢献している。ユニセフ親善大使も務め、子供の地位向上のため、国を点々とした自らの経験をもとにした絵本を出版して、その売り上げを学校の整備に当てるなど、チャリティ活動も目覚ましい。

美しさと知性の両輪を備え、ヨルダンという中東の小国の王妃にも関わらず、世界の社交界の花形と言ってよいのは、中東の戦乱とともに、シュプールを描く活動が人々に深い共感を呼ぶからである。

デザイナー、ジャンバティスタ・ヴァリをも魅了するラーニア王妃の美貌

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ファッションウィーク時のジャンバティスタ・ヴァリ

ファッション界の憧れでもある。パリコレクションの期間中にデザイナーのアトリエを訪れたときにもそれを実感した。

それは、ジャンバティスタ・ヴァリ。初めて会う話題のデザイナーだった。ドキドキしながらドアを開けたのだが、そこから覗いたアトリエ中に貼られたヨルダンのペトラ遺跡の写真に圧倒された。

デザイナーはコレクションのコンセプトをまとめるためにイメージマップをまず作成する。華やかなコレクションの舞台裏といえるのだが、「今回のインスピレーションはヨルダンなの?」と聞いたら、ジャンバティスタ・ヴァリは我が意を得たりとばかりに「遺跡の景観が素晴らしく、そのうえなんと言っても、美しいラーニア王妃がいる国だからね」と笑いながら答えたのだ。「なんてエレガントで素敵な女性なんだ」と夢見るような眼差しを見せた。

その後、ラーニア王妃がジャンバティスタ・ヴァリの服をよく着用しているのを知った。もちろん、彼の作品ばかりではなく、数ある愛用のデザイナーブランドのひとつであるが、容姿にも、イメージにも文字通りあつらえたようにぴったり合って、そのマッチングのよさに、ファッションとイメージモデルとの「相思相愛」の関係はある意味「唯一無二の魔法の美」を生み出すのではないかと感じた。

ラーニア王妃の気品ある着こなしの鍵は「ホワイト」の取り入れ方にあった!

王妃の職務として、ヨルダンの民族衣装を身につけることもあるが、彼女の公務のスタイルの基本は、フェミニンな単品コーディネートとワンピースドレスである。

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フェミニンな装飾のシャツワンピースを着たラーニア王妃

娘と来日した折の深紅の着物姿は、女優顔負けの美しさで話題になったが、明るいロイヤルブルーや、深いライムグリーンなど彫りの深い顔立ちに似合う服とともに、最も意識して選ばれるカラーは「ホワイト」である。

白は爽やかでクリーン、清潔な美しさとシンプルさを感じさせるカラーである。白いブラウス、白いドレス、白いジャケット、白のニットカーディガン。カジュアルからフォーマルの装いまで、公務やプライベートのあらゆる場で、ラーニア王妃は、コーディネートの基本にホワイトを身につけている。むしろ、あらゆる着こなしを彼女らしく際立たせているのが、ときには優美で清潔感に富み、ときには強烈なインパクトのある「白の力」と言っても過言ではないだろう。

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Peter Pilotteのドレスを着用したラーニア王妃

このカラーの選択が、彼女をプリンセスの中でも特別な存在に見せる秘訣であると思う。

カラーにはそれぞれ特有の印象があって、心理的なイメージを大きく左右する。白は明るい色でありながら、原色にも負けない強い印象という特徴をもつ。そのうえ、カラーにはプラスとマイナスイメージの両面がつきものだが、「ホワイト」に関しては、マイナスイメージがほとんどなく、瀟洒(しょうしゃ)な特別感が漂う特殊なカラーなのだ。

そのカラーを、さりげなく装いに取り入れ、パンツ姿からかっちりしたスカートなどに合わせ、清楚さと同時に王妃ならではのスペシャルなハレの雰囲気をつくりだす。それがなによりラーニア王妃の着こなしの王道である。

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カンヌ国際映画祭2017でのラーニア王妃

白いシャツブラウスにマキシのレーススカートでレッドカーペットを歩いたこともある。

最近、6月末にホワイトハウスを訪問した折にも、アメリカに敬意を評し、アメリカ人デザイナーによるシャキッとした白シャツにフェンディのネクタイストライプの巻きスカートを合わせた、クールでフェミニンな着こなしを見せ、またニューヨークで活躍する日本人デザイナーのADEAMのパンタロンドレスも着用。ほとんどホワイトに近いペールピンクで、華やかさを加えていた。

庶民の親しみやすさと王室の気品を併せ持ったラーニア王妃のファッションセンスは、さりげなくも絶対のスタイルがある。その鍵を握る「ホワイト」を駆使した特別感の演出こそ、今一番私たちがお手本にしたいものである。

この記事の執筆者
1987年、ザ・ウールマーク・カンパニー婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
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Getty Images
EDIT :
渋谷香菜子