メアリー皇太子妃とフレデリック王子の運命的な出会い

開かれた王室、気さくなロイヤルファミリー、庶民から王室に嫁ぐハイスペックなキャリアウーマン。現代のシンデレラストーリーには、これまでの保守的で格式ばった王室のイメージを刷新する出来事が多々起こっている。

だが、このデンマークのメアリー皇太子妃とフレデリック皇太子の出会いは、ある意味抱腹絶倒、ありえないでしょ! からの始まりであった。

時は2000年、シドニーオリンピックの年。観戦のためシドニーを訪れていたフレデリック王子はお洒落で庶民的なパブ「スリップ・イン」でビールを楽しんでいた。ところが、店に入って来た見るからに聡明な美人にひと目惚れ。自ら「フレッド」と自己紹介し、握手から始まったふたりのおしゃべりは弾みに弾んで、あっという間に1時間ほど経った。ほどなく、メアリーは周りにいた人から「あの人たちが誰だか知っているのか」と聞かれ、そこで初めてメアリーは、「フレッド」が単なる「フレッド」ではなく、デンマーク王室のフレデリック王子であることを知らされたのだ。

パブで出会った外国人から声をかけられ、始まった恋。庶民でいうナンパである。数あるシンデレラストーリーの中でも、友人の介添えでも、パーティーで紹介されたでもなく、正真正銘のロイヤルナンパから始まったのは、この恋物語がおそらく初めてだろう。

メアリー皇太子妃こと、メアリー・エリザベス・ドナルドソン。1972年2月5日にオーストラリアのタスマニア州で誕生、現在46歳。数学者の父ジョンと母ヘンリエッタは、スコットランド人だが、オーストリアへ移住し、国籍を取得。メアリーは、タスマニア大学で「商業及び法律」(Commerce and Law)を専攻。卒業後、首都メルボルンに移り、世界的な広告エージェンシーDDBニーダムに勤務しながら大学院へ。修士号取得後は、同社でアカウント・エグゼクティブのポジションを得て、絵に描いたようなキャリアウーマンの出世街道を駆け上っている。その後、シドニーに移住。そして、運命の出会いが待っていた。

恋に落ちたふたりには、大きな障害もなく、交際は順調に進み、フレデリック王子がお忍びで何度もオーストラリアを訪問したりして、超長距離恋愛を育んでいった。ちなみにフレデリック皇太子は気さくな人柄で、国民の人気投票でも、常にナンバーワンという好男子。そして2001年、メアリーはパリに移り、ビジネス英語の先生として働き始め、翌年には、コペンハーゲンに移り、ナヴィジョン・マイクロソフトに勤務し、結婚まで自分のキャリアを貫いた。

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メアリー皇太子妃のウェディングドレス姿

婚約から半年後、2004年5月14日に、ふたりはコペンハーゲン大聖堂にて挙式。オーストラリアから初めて欧州の王室に入ったプリンセスにオーストラリア中が熱狂したという。

メアリー皇太子妃と子どもたち
メアリー皇太子妃と子どもたち

現在は長男長女、その下に双子という4人の子どもの母親である。記録的なスピードで難解なデンマーク語をマスターするという才媛ぶりも発揮した。

メアリー王妃のコーディネートは「ハイ&ロー」のバランスが絶妙!

メアリーのファッションも、常に注目の的だ。庶民出身のキャリアウーマンだったために、全身をブランド物や退屈なロイヤルファッションで固めるなどということは決してなく、働いていたときと同様に、ハイブランドと低い価格のブランドを上手に組み合わせた「ハイ&ロー」のコーディネートを基本に、賢い着まわしを見せている。なかでもスペインのファストファッションブランド「ザラ(ZARA)」は驚くほどたびたび公式の場でも、愛用されている。

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スーツスタイルのメアリー王妃

例えば、OECD(経済協力機構)のフォーラムに出席するためパリを訪れたメアリー皇太子妃は、なんとザラの99.9ドル(約1万700円)の黒いコートとおそろいのパンツスーツに、ヒューゴ・ボスのペールピンクのブラウスという着こなしで、女性と若者の社会的地位の向上をテーマにしたスピーチを行った。

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ピンクベージュのワーントーンコーディネート

これまでにも、ザラのパンツスーツに、ジャンヴィト ロッシのパンプスとプラダのバッグをすべてベージュのトータルカラーでシックにまとめ、かつ「ハイ&ロー」のメリハリの効いたコーディネートで登場し「かっこいい!」と絶賛されている。

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白ジャケットが爽やかなキャリアスタイル 
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全身ホワイトのスーツを着こなすメアリー皇太子妃
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ホワイト×ネイビーの上品キャリアコーデ

公務はあくまでも、ワーキングウーマンの延長として捉える姿勢が、大きな共感を呼んでいるのだ。その一方では、晩餐会などではデンマークのデザイナーのドレスを着用、デンマークファッションの広告塔としても存在感を見せている。来日した際には「桜柄」のドレスを着用するなど、気配りも怠らない。見事なバランス感覚である。

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レースのドレス
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ボヘミアンスタイルもお手のもの!

公務で装うシンプルなドレスやパンツスーツのキャリアスタイルから、プライベートで見せるボヘミアンなスタイルまで、健康的でオージー(オーストラリア人)らしい抜け感を感じさせる着こなしは、親しみやすく、まさに「働く女性」のワードローブそのものだ。

そこに身に付いた品位と、王族らしい堂々たる振る舞いが加わり、新しい時代のロイヤルファッションを体現するアクティブな皇太子妃として注目されている。

この記事の執筆者
1987年、ザ・ウールマーク・カンパニー婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
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Getty Images
EDIT :
渋谷香菜子