「削り出しの凄い技をもつ職人がいるハンガーメーカーがある」

そう教えてくれたのは、アパレルメーカー〝ワールド〞の、店舗インテリアVMD開発部の上本修司マネージャーだった。自分のブランドに誇りと個性をもつデザイナーたちは、店頭で什器として用いるハンガーに強いこだわりをもつ、と上本氏は言う。

一生物だからこそ最高のものを使用したい!

一流ホテルでも使われる中田ハンガー

左は従来の名品をさらに進化させたNHシリーズ。NH-2¥30,000。右は長く使ってもらいたいという思いでつくられたオーセンティックシリーズ。AUT-02¥12,000。共に名入れ可能。

胸の張った凜々しいスーツに見えるか、肩の力を抜いたリラックスしたジャケットに見えるか…。服の表情は、ハンガーの厚みや曲線によって変わってくる。つまり、ハンガーは、ブランドのコンセプトやイメージの具現化に、重要な役割を果たすということなのだ。

そのためには、ブランド独自のハンガーをオーダーすることになる。そして、この抽象的ともいえる注文に見事に応えるのが、前述の凄い技をもつ職人のいる創業60余年を数えるハンガーメーカー、〝中田工芸〞なのである。

国内のアパレルメーカーがこぞって、日本で木製ハンガーをつくる確かな技術をもつのは中田工芸だけと言う。しかし、一般の人にはほとんど知られていなかった。

使い手の顔が見えるハンガーづくりを願う社長の中田孝一さんは、2000年11月にウェブサイトを立ち上げる。昨年には青山に、ショールームもオープンさせた。展開する製品の中で、ひときわ目を惹くのが、重厚なつくりのハンガー。中田工芸が本社を置く兵庫県豊岡市の川沿いにある工場で、そのハンガーは生まれる。

手作業だからこそ実現できた、スーツやジャケットにフィットする曲線美

切り出した1枚のブナの板から、南京カンナと呼ばれる独特な工具で、首や肩の絶妙な曲線を削り出していくのは山口守さん。数多くのブランドが認める、特別注文のハンガーを手がける職人である。その手を経ても、一日にできるのは、せいぜい7、8本という。

考えてみるとスーツは、着ている時間より、クローゼットの中にある時間のほうが長い。とすれば、型崩れを防ぐのが、スーツをしっかりと支えるように掛けられる、このハンガーの曲線。その形状も、塗装の仕上がりも美しく、まさに、一生モノの趣である。

「このハンガーで、服を大切にする気持ちとともに、豊かなライフスタイルが提案できればと思っています」と中田社長は語る。

老練の職人が現役を退いた今、工場では、若手職人たちが寡黙な職人の手元を見つめ、技を盗んでいる。こうして、中田工芸のハンガーづくりの技は伝承されていくのだ。

※価格はすべて税抜です。※2008年秋冬号取材時の情報です。

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