大阪を代表する格式をもつリーガロイヤルホテルのバーは、地元政財界人や文化人たちから贔屓にされ、大切にされてきた。その常連客の中には、膨大な数の著書を残した小説家・司馬遼太郎も名を連ねている。
司馬遼太郎は食事後に必ずリーチバーを訪れた
バーナード・リーチが手がけた空間
全国各地を取材で飛び回りながらも、執筆をする場所として、決して大阪から離れることがなかった司馬遼太郎は、会合などでよくこのホテルを利用していた。メインダイニングで食事をした後は決まって、みどり夫人や知人と一緒に「リーチバー」の奥のテーブル席に座っていたという。司馬遼太郎はそれほど多く飲む人ではない。だから、バーを訪れた主目的は酒を飲むことよりもむしろ、余計な飾りを排したバーがもつ独特の雰囲気に惹かれていたのだろう。
「リーチバー」の構想は、前身のロイヤルホテルを開業する際、日本に造詣の深いバーナード・リーチにまかせられた。コンセプトを固めたのは「用の美」を重んじた民藝運動の先駆者・柳宗悦。さらに、設計を数寄屋建築の大家・吉田五十八が担当して昭和40年に完成したバーは、まさに民藝運動が追求したシンプルで飾り気のない意匠そのもの。
民藝運動の真髄がちりばめられ、まるでミュージアム
その様子は開業のころからほとんど変わっていない。カウンターのスツールやイスは、木製でありながらやわらかい座り心地で、つい長居してしまうほど。夜の照明を暗くする店が多い昨今、照明の調節ができない店内は若干明るく感じられるが、それもこのバーのよさである。
頑固なまでに守られた古いスタイルを、本格を知る大人たちは愛してきたのだ。などというと入りにくい雰囲気のようだが、そこは大阪。バーテンダーの応対をはじめ、集う客には大阪特有の軽やかさがある。緊張を強いることはなく、心からくつろげる。
名作と酒、その密なる関係
問い合わせ先
- リーチバー TEL:06-6441-0983
- 住所/大阪府大阪市北区中之島5-3-68 リーガロイヤルホテル1F
営業時間/11:00~24:00 L.O. 無休
席数/60
アクセス/JR「新福島」駅、阪神電車「福島駅」より徒歩約8分。JR「大阪」駅よりシャトルバスか車で約10分
※2008年秋冬号取材時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- PHOTO :
- 小西康夫