高性能スポーツカー作りに長けた古豪
1910年にミラノで創業したアルファロメオは、ヨーロッパのスポーツカーブランドがしのぎを削る20年代のレースシーンで圧倒的な速さを誇ると同時に、DOHCエンジンを積む高性能スポーツカーブランドとして確固たる地位を築いていた。第二次世界大戦後は大衆向けの実用車を軸とした経営に舵を切るが、50~60年代には小型高性能車の「ジュリエッタ」シリーズを成功させるなど、スポーツカーへの情熱が失われることはなかった。また、マルチェロ・マストロヤンニやソフィア・ローレンといったスターが主役を張ったイタリア映画や、フランスのヌーベルバーグを牽引したジャン=リュック・ゴダール監督の映画などでもアルファロメオは頻繁に登場し、イタリア文化のアイコンとして今も我々の脳裏に焼き付いている。

名門の輝き、ふたたび

だが、70年代以降は大量生産時代にそぐわない理想主義的、(相対的に)生産効率の悪い体質が仇となり、経営不振に陥る。そんなアルファロメオを救ったのは、同じイタリアのフィアットだった。新生アルファロメオは「156」(97年)、「147」(00年)で息を吹き返し、09年には60年代に人気を博した「ジュリアエッタ」の名を冠したニューモデルを発表。さらに2015年には新世代「ジュリア」まで登場し、日本への導入を多くのファンが待ち望んでいる。現在、日本で買えるアルファロメオは3車種。そのなかで唯一のピュア・スポーツカーが、「4C」とその派生モデル「4Cスパイダー」だ。

悦楽のスポーツドライブはオープンで極まる

全長4mを切るコンパクトなボディを支えるシャシーはカーボンファイバーをはじめとする複合材が使われ、それ単体でわずか65kgほどしかない。エンジンは1・75リッターの4気筒ターボで、座席の背後に搭載して後輪を駆動させるミッドシップレイアウトだ。そのパフォーマンスは軽量・高剛性ボディの効果もあって排気量を感じさせないパワフルさを誇るが、特筆すべきはフィーリングとサウンド。走行モードを「ダイナミック」にすると、背後から突き抜けるような高音が轟き、気持ちよく回転計の針が上がっていく。この快感をダイレクトに味わうなら、ソフトトップを脱着できる「4Cスパイダー」に限る。空力性能を磨き上げながらも艶やかさにこだわったスタイリングといい、伝統的なイタリアの不良性が顕著に現われたこのスポーツカーは、名画の主人公たちに憧れた紳士の心を掴んでやまない。

〈アルファロメオ・4Cスパイダー 〉
全長×全幅×全高:3990×1870×1190㎜
車両重量:1060kg
排気量:1742cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:240PS/6000rpm
最大トルク:350Nm/2100~4000rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6AT(DCT)
価格:798万円
(問)アルファ・コンタクト ☎0120-779-159
(撮影/小倉雄一郎)

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。