2013年に制作された映画で『はじまりのうた』という作品がある。第80回グラミー賞歌曲賞を受賞した『ONCE ダブリンの街角で』の監督ジョン・カーニーが監督した音楽映画だ。劇中、主演のキーラ・ナイトレイとマーク・ラファエロがお互いのスマフォに入った歌をスプリッターで繋がれたイヤホンでニューヨークの街を歩くシーンがある。音楽があるだけで、街中がライブハウス、あるいはミュージカル・シアターに変わる。そんな印象に感じた。それは日本でも同じだろう。街中だけでなく、混雑した電車でも、ひとりの部屋の中でも、イヤホンには聞く者に音楽という魔法をかけてくれる力がある。
ポートランドで生まれた「キャンプファイア オーディオ」のイヤホン
「ATLAS CAM-5225」
“Campfire Audio(キャンプファイア オーディオ)”は、アメリカ・ポートランドに生まれたイヤホン・ヘッドホンブランドだ。ポータブルオーディオの業界で実績のあるケン・ポール氏が2015年に立ち上げたブランドで、2016年には従来のイヤホン設計を覆すチューブレス設計を取り入れた「Andromeda」など、次々を斬新な設計のイヤホンやヘッドホンを発表してきた。
2018年、高級時計などに使用される高品質のステンレススチールの筐体でデザインを一新したモデルを発表した。それが「ATLAS」だ。
直径8.5mmのA.D.L.Cコーテッド・ダイナミックス型ドライバーを採用した「VEGA」をベンチマークとし、そこからブラッシュアップを図り、力強く、壮大なサウンドを目指したのが「ATLAS」。A.D.L.Cコーティング・ダイナミックス型ドライバーを直径10mmに拡大、筐体を前日の重厚感あるステレススチールを用い、ケーブルも「ATLAS」のためにつくられた銀導体で採用、同ブランドのフラッグシップモデルをつくり上げた。
ステンレススチールの筐体は、「落とし鋳造」という製法で形成された後、高精度なCNC加工を経て、煌びやかな鏡面仕立てで仕上げられたもの。驚くことにイヤホンは自社のワークショップで、熟練した職人によって、ハンドメイドで組み立てが行われているという。イヤホンという極めて現代的なツールの中に込められた職人芸。私たちを魔法にかけるだけの情熱がたっぷり込められている。
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- 小暮昌弘 エディター