スマートとは、隙がないということである。着こなし、身のこなしの洗練であり、おしゃべり、お作法にいたるまで完璧のペキというヤツで、それでいてユーモアのセンスまで備えている。

ケイリー・グラントはカッコよすぎるのだ!

グラントの主演映画のひとつ『シャレード』で相手役のオードリー・ヘプバーンがグラントを詰るシーンがある。

「あなたは自分の欠点に気がついていて? それはね、『欠点がない』ことなのよ!」

この場面を見ているすべての女性客は、ここで〈そうよ!〉と相づちを打つはずである。

稀代の伊達男のリゾートスタイルが本当にまぶしい!

グレース・ケリーの美貌に惚れた『泥棒成金』

『泥棒成金』。原題‘TO CATCH A THIEF’。1955年パラマウント映画。リヴィエラを舞台に繰り広げられる、ヒッチコック作品。アカデミー賞撮影賞も受賞した、カラー映画草創期の名作である。イーディス・ヘッドデザインの衣装をまとったグレース・ケリーは息をのむほど美しい! 『泥棒成金 スペシャル・コレクターズ・エディション』発売元・パラマウントジャパン

そのスマートさがいかんなく発揮されていて、ロマコメとしても一級の仕上がりになっているのが1955年のアルフレッド・ヒッチコック作品『泥棒成金』だ。グラント扮するフレンチ・リビエラで隠棲する元義賊(金持ちしか狙わない泥棒)が、ヌレギヌをはらすために現役復帰するというストーリーで、相手役は当時世界最高の美貌を誇っていたグレース・ケリー。

ニット、スポーツコート、スーツにディナースーツ、グラントの南仏流ワードローブはどれも軽やかで、上品で、それは伊達男としか呼びようのないものだ。

映画冒頭に登場する、素肌に縞のクルーネックのニット、襟もとにスカーフをあしらうコーディネーションは、ニットとは、冬に着るセーターのことである、と信じて疑わなかった平凡な東京の高校生だったぼくの服装常識を覆すスタイルだった。そこには紛れもなく欧州の、それも贅沢というものの香りがあったのだ。

ヒッチの信頼厚いグラントは、その衣装をすべて自前で揃えていたそうで、こう説明している。

「なに、普段着ているようなシンプルで味わいのある服を選んだだけですよ」

困るなあ、そうさらっと言われても。やっぱりこういう男と酒は飲めないんだよ。

Cary Grant
1904年イギリス生まれ。’50年代の映画界を代表する名優。オードリー・ヘップバーン、イングリッド・バーグマン等の名女優たちとの共演多数。代表作に『北北西に進路を取れ』『シャレード』などがある。スーツの着こなしの伊達っぷりは、まさに伝説。
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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2010年夏号、シネマの中の伊達男たちより
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