出国審査を済ませた後の航空会社のラウンジは、これから始まる旅への期待感と、旅の思い出が交錯する不思議な空間だ。どこの国にも属さない空間。そこで過ごす搭乗前の数時間は、たとえ出張でも、何だか「ソワソワ」した不思議な気分になる。
だが大体どこのラウンジも似たり寄ったりで、搭乗客にフライト前の時間潰しをさせる場所でしかない。どんなにデザインに気を遣っていたとしても、そんな空間にあまり長く留まりたいとは思わないものだ。「ザ・クラブハウス」と命名された、そのラウンジを目にするまでは、の話であるが。
ヴァージン・アトランティック航空が用意するのは紳士のためのテーマパーク
酒、理容、靴磨き……男のすべてがそろう
そう、そのヴァージンアトランティック航空のロンドン・ヒースロー空港ラウンジは、そんな一般的な常識を徹底的に覆してしまう空間だ。総面積2500平方メートルという、今まで目にしたことのないような光景に、初めて訪れる人は言葉を失くすだろう。この丁寧にデザインされた上質な空間に身を置くことが、秘かな愉しみである。
モダンブリティッシュ・デザインとはかくあるべし、というコンテンポラリーで居心地のよい空間は、一種のテーマパークといえる。ヘアカットもできれば、エステサロンやスパ・スペースもある。気が向けばオフィスで仕事もこなせるし、14mもの長さを持つカウンターのバーで、特別なカクテルをつくってもらい、ビリヤードを楽しむこともできる。大画面でクリケットを観戦している間に、靴を磨いておいてももらえる。
伝統的なジェントルマンズクラブと一線を画す、ヴァージンらしい遊び心とイングリッシュ・ユーモアが満載なのだ。「ずっとここに居たい!」と思わせる、その仕掛けと雰囲気には、正直脱帽である。
※2011年夏号取材時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2011年夏号より
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