日本人にとってなじみのあるサヴィル・ロウのテーラーといえば、白洲次郎氏が愛した「ヘンリー・ プール」や英国陸海軍の制服を仕立てる「ギーヴス&ホークス」あたりだろう。実はサヴィル・ロウには、それぞれに個性のある、新旧のテーラーがあふれているのだ。

細かいこだわりが輝く三者三様のサヴィル・ロウのテーラーたち

アンダーソン&シェパード

まずは、「アンダーソン&シェパード」。サヴィル・ロウのなかでも、とりわけ、やわらかいスーツづくりが得意。「イングリッシュ・ ドレープ」と呼ばれるくびれたウエストラインは、幾多の伊達男たちを魅了したスタイルだ。1990年前後、ナポリのスーツブランドは、「アンダーソン&シェパー ド」のスーツを研究していたほど、サヴィル・ロウにあって独特なやわらかさを貫いている。

名門アルバート・サーストンのブレイシス(=サスペンダー)を合わせたスタイリングも様になる1着

Detail Check!

背中側に肩線をふる、伝統的な仕立て技術を確認。粋ななで肩ラインが実現するだけでなく、肩にかかるテンションも格段に変わる
名品DATA
1906年、ペール・アンダーソン氏によって創業。1920~30年代のハリウッド映画黄金期には、フレッド・アステア、ゲイリー・クーパーといったスターをはじめ、伊達男の作家ノエル・カワードも足繁く通った。現在では、チャールズ皇太子が贔屓にするテーラーとして知られるだけでなく、クリエイティブ・ディレクターのトム・フォード氏が絶妙なシルエットに魅せられた名店だ。「キルガー」は、いくつかの変遷を経て、現在のブランドに落ち着いている。前身は、「キルガーフレンチ&スタンバリー」として長くサヴィル・ロウの中心的なテーラー。かつて、同店のルイス・スタンバリー氏は世界的に認められた裁断師として、日本でプロを集めた技術講習会も開き、スーツづくりの基準に大きな影響を与えてきた。
鎧を着たような構築的なフォルムに、そでを通すたびに背筋が伸びます。しかし、クラシックなスーツの方程式に沿った着こなしは性に合わないので、派手な色のタイやチーフを無造作に挿すなど、常に自己流のスタイリングで楽しんでいます。あえて洗濯機で洗うことで、より着古した味わいを出すこともします。

Detail Check!

クラシックなデザインが生きる、ベルトレス仕様に。すっきりしたウエストラインが特徴的で、大人のお洒落の余裕も感じさせる
名品DATA
1882年創業。元々は、T.フレンチ氏が創立したテーラーだが、後に裁断師のA.H.キルガー氏が加わり、店名は「キルガー&フレンチ」となる。さらに、フレッドとルイス・スタンバリー氏が参画して、「キルガー フレンチ&スタンバリー」として長くサヴィル・ロウの名店を担う。2003年から「キルガー」に。かつて、ビートルズの仕立て職人、トミー・ナッター氏も加わった革新的老舗。

ファーラン&ハーヴィー

サヴィル・ロウから道を1本隔てた場所に居を構える「ファーラン&ハーヴィー」は、通好みのテーラー。顧客の好みに応じて、ポケットなどに趣味性の強いディテールも手がける。スーツは、オーソドックスなスタイルなものの、カッティングの美しさは、サヴィル・ロウの名店からも評価が高い。

英国的な胸まわりのドレープ感や、絶妙に絞られたウエストラインなど、どんな時代にも合う着こなしができるタイムレスな一着。最近は、赤いパンツに「レペット」の『ジジ』を合わせて、個性的な大人のクラシックスタイルを楽しめる。
ミニマリズムを超越した黒ジャケットには、限りなく控えめなシルバーボタン使い。お洒落を熟知した男の引き算の美学だ!
名品DATA
1976年創業。サヴィル・ロウに近いサックヴィル・ストリートに店舗を構える。創業者のキース・ファーラン氏とピーター・ハーヴィー氏は、サヴィル・ロウの名門「ハンツマン」で腕を鳴らしたふたり。2003年キース・ファーラン氏他界。現在はピーター・ハーヴィー氏が中心となり、世界各地でトランクショーも開催。日本では、加藤和彦氏が愛用していたテーラーとして知られている。

※2011年夏号取材時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Precious2011年夏号より
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
Faceboook へのリンク
Twitter へのリンク