毎年テーマを変えて人気シェフとコラボレート

エクスクルーシヴな美食体験を味わってもらうことを目的に「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフのルカ・ファンティン氏がスターシェフとコラボレートして珠玉のディナーをサーブする「エピクレア」。

今回の「エピクレア 2018」で提供された料理
今回の「エピクレア 2018」で提供された料理

1年目はイタリアから招いたイタリア人シェフ7人、2年目は世界各地で成功を収めているシェフ、3年目は女性シェフのみと毎年コンセプトを変えて行われている。4年目となる今年の「エピクレア 2018」はアジアで独創的な母国の料理を提案する2人のシェフとコラボレート。今回は彼らの本拠地である香港とシンガポールにルカ氏が出向き、また「ブルガリ 東京レストラン」にも2人が訪れ、日本と海外のIn&Outのコラボレーション・ディナーを披露した。

母国の料理をアレンジしたコンテンポラリーなキュイジーヌ

一人目のシェフは香港のモダン・フレンチ・レストラン「アンバー」を指揮するリチャード・エッケバス氏。伝統的なフランス料理をベースに、モダンなひねりを加えた軽やかでコンテンポラリーな料理が評判だ。

もう一人のカーク・ウェスタウェイ氏はシンガポール「ジャーン」のヘッドシェフ。イギリス理の再構築を料理哲学に掲げ、英国での幼少期を想起させる自然なフレーバーに深く根付いた、革新的な料理を提供している。ミシュランガイド シンガポールが刊行された2016年以来3年連続で1つ星を獲得している。

カーク氏が作った「エアルーム・ビーツ ブラッターチーズ」
カーク氏が作った「エアルーム・ビーツ ブラッターチーズ」

インタビュー当日、シンガポールでの「エピクレア 2018」は開催されており、ルカ氏とカーク氏の息の合った話がうかがえた。

見た目は革新的に、フレーバーは伝統的に

「エピクレア 2018」が行われたブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
「エピクレア 2018」が行われたブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」
ーールカ氏が今回の2人とコラボレートした理由を教えてください
ルカ まずは「エピクレア」のコンセプトに合うスターシェフであること。もう一つは私がコンテンポラリーなイタリア料理、ウェスタウェイ氏はリノベートした英国料理、エッケバス氏はコンテンポラリーなフレンチを提供しているところが共通していると考えたからです。
カーク 仲良くなったのは最近ですが、それまでも食のイベントなどでも会い、面識はありました。一緒に何かしようと話をしていて今回の実現に至りました。
ルカ すでに香港、シンガポールで「エピクレア 2018」を開催しましたが、お客様の反応はどちらもすばらしいものでした。とてもポジティブに受け止めてもらいました。
ルカ氏が作った「帆立のヴァポーレ 根セロリのヴァリエーション」
ルカ氏が作った「帆立のヴァポーレ 根セロリのヴァリエーション」
ーーメニューをコラボレーションするにあたり、何かルールを設定しましたか?
ルカ 開催時期に合わせ、テーマを秋に。もちろん旬の食材を使い、話し合いながら料理の組み立てをしました。
カーク シンガポールと東京ではメニューを変え、それぞれの土地ごとの独自性も意識しています。
ルカ氏が作った「ラヴィオリ プッタネスカソースと鮪のタルタル」
ルカ氏が作った「ラヴィオリ プッタネスカソースと鮪のタルタル」
ーールカ氏の「ラヴィオリ プッタネスカソースと鮪のタルタル」は斬新な鮪の使い方をされていました。これは伝統的なイタリアンの手法で調理されているのでしょうか。
ルカ トマト、ケッパー、アンチョビが入ったプッタネスカはイタリアの伝統的なソースで、パスタをはじめ、様々な料理に合わせられます。オールマイティなソースですが、生のタルタルに温かいラヴィオリを組み合わせたアイデアはオリジナル。だけど全体として召し上がっていただいた時にバランスがいい。
自分の記憶にあるイタリア料理の味であることをベースに、伝統的なイタリアの調理法から発展させていますね。
ーーカーク氏の「フィッシュ&チップスのタルト」も革新的で驚きました。このアイデアはどこから湧いてきたのでしょうか?
カーク 英国を代表する料理だからこそ、新しい面を表現したいと思いました。ビネガーのすごく効いた子どもの頃の記憶に残る味ではありますが、基本的な味わいは同じ。味わいは同じだけど見た目を大きくアレンジしました。
カーク氏が作った「エッグ イン アン エッグ」
カーク氏が作った「エッグ イン アン エッグ」
ーー「エッグ イン アン エッグ」の見た目は、日本の茶碗蒸しのよう。英国らしさはどこに込めていますか?
カーク 日本でも半熟卵を食べるように、英国でも柔らかくボイルした卵にパンをつけて食べるスタイルがあります。それを私なりにモダンにアレンジしました。
ーーウェスタウェイ氏のイノベーティブな英国料理の基本となる、デヴォン州はどのような地域でしょうか?
カーク 私が20歳まで住んでいた小さな町です。品質の高い農産物が数多くあり、特にチーズとバターが名産です。子どもの頃から品質の高い農産物が食体験に重要な影響を及ぼすのか、深い関心を寄せてきました。だから食材本来の完璧さをそのまま活かすテクニックを確立させることに力を注いできました。
ルカ氏が作った「ラズベリーとヴァニラのコンポジション」
ルカ氏が作った「ラズベリーとヴァニラのコンポジション」
ーーお二人が共鳴し合っているのが料理を通して伝わってきます。お互いの料理が影響し合うことはありますか?
ルカ 影響はしていないと思いますが、考え方は似ているように感じます。プロフェッショナル2人がお客様に最高の食体験を提供したいと思った時、その結果として当然同じ方向に向きますから。
カーク 同じ食材を使い、シンプルな調理をする2人なので料理哲学は同じでしょう。気持ちの部分で自然とつながりが生まれているのではないでしょうか。

どの料理もエクセレントの一言に尽きた『エピクレア 2018』。今年は終了したが、来年も素晴らしいシェフとのコラボレーション・ディナーを楽しみに待とうではないか。

ルカ・ファンティンさん
シェフ
ミラノの名店『クラッコ』、スペインの『アケラレ』や『ムガリッツ』など、トップクラスのレストランで経験を積む。2006年、ローマの三ツ星レストラン『ラ ペルゴラ』の副料理長に就任。2009年秋に『ブルガリ イル・リストランテ』のエグゼクティブシェフに就任。以来、イタリア料理を現代的な解釈で創り出す料理で、イル・リストランテを東京における最も洗練されたダイニング・エクスペリエンスが得られる場所のひとつに築き上げる。
カーク・ウェスタウェイさん
シェフ
シンガポールのアイコニックな『スイスホテル ザ スタンフォード』の最上階にある国際的に 知られるレストラン『ジャーン』のヘッドシェフ。英国での子供時代を想起させる自然なフレーバーに深く根付いた料理で『ジャーン』の名声を高める。英国を再発明するという哲学の下、進化し続けるメニューは季節ごとに哲学を具現化し、現代的で、軽やかな英国式ダイニングを紹介している。
この記事の執筆者
フリーランスのライター・エディターとして10年以上に渡って女性誌を中心に活躍。MEN'S Preciousでは女性ならではの視点で現代紳士に必要なライフスタイルや、アイテムを提案する。
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