その高さ4m超! 圧巻のエントランス

「住宅街に店を出したかった」と話す『ル ジェアン』オーナーの細田修司氏。幸いなことに独立するまで働いていた『ウェスティンホテル東京』や『ザ・リッツカールトン』からも近い南青山エリアで、惚れ込んだ物件が見つかった。その店は赤坂郵便局から外苑東通りを六本木方面に進んだ地にある。

琥珀色に灯る『ル ジェアン』のサイン
琥珀色に灯る『ル ジェアン』のサイン

周囲に店はほとんどなく、ビルやタワーマンションが並ぶ都心の住宅街といった景色の中にある『ル ジェアン』の外観はどこか異質な雰囲気を放つ。それは日が暮れるとぼうっと灯る琥珀色のサインだけではない。4mを超す一枚ガラスの扉が圧倒的だからだ。

4m超のガラス扉
4m超のガラス扉

これが単なる住宅街だったら完全に浮いていたかもしれない。異質でありながら、街に溶け込むようにある。これはセンスが光るものであれば、何でも受け入れる南青山が持つ懐の広さがあるからかもしれない。

選ばれた者しか開けられないような錯覚に陥る大きなガラス扉を押して店内へ。いわゆるうなぎの寝床と言われる奥行きのある店内なのだが、天高4mを超えているため、中2階があり、広さを感じさせる。

中2階から1階を見下ろす
中2階から1階を見下ろす

天井が高いせいか、どこか非現実的な印象を受けるが、壁はグレー、チェアやソファ、カウンターは黒い革張りで統一されたシックな内装で紳士が腰を落ち着けて飲める雰囲気だ。

革張りのカウンター。手触りが心地いい
革張りのカウンター。手触りが心地いい
1階のソファ席
1階のソファ席

盛り場にあっても遜色ないどころか、感度の高い大人のアンテナには必ず引っかかってくる店だと思うのだが、細田氏は控えめにこう言う。

「マイペースで大人しいタイプなので、繁華街にあると自分が飲み込まれていくような感覚になります。それに長くホテルのバーで働いていましたから、お客様の嗜好に合わせるスタイルが性に合っています」

オーナーの細田修司氏。
オーナーの細田修司氏。

細田氏は194cmもの長身。店も男っぽい作りなのに威圧感がないのは、彼の穏やかな性格によるところが大きいのだろう。

「映画や本、音楽、伝統芸能などを勉強していますが、自分はまだまだ。お客様が深いお話をしてくださると、自分も成長できます」と謙虚な細田氏の接客スタイルは、ホスピタリティに尽きる。ゲストが1度言ったことは忘れないなど細部に至るまで目が行き届いている。

ジントニックの氷が唇に当たらない理由とは?

その丁寧な仕事ぶりにはカクテル作りにも見受けられる。さっそくジントニックを作ってもらおう。 液体そのもののテクスチャーを感じてほしいと、ジントニックで使うグラスは薄口。

ジントニックを作る細田氏
ジントニックを作る細田氏

炭酸を抜けにくくするため、グラスに氷を入れて少し冷やしたあとに氷を取り出す、グラスの内側にそわせるようにトニックウォーターを注ぐなど、慎重な手付きで作業を進めていく。

)『ジントニック』1,200円。氷で軽く冷やしたグラスにタンカレー40mlとライム果汁10mlを入れ、よく混ぜ合わせる。そこにグラスのサイズに合わせて切り出した3つの氷を3つ入れる。なるべく氷に当てないようにフィーバーツリーのトニックウォーター120mlを注ぎ、軽くステアする。ライムの果肉をグラスの内側に添わせ、香りをつける。絞ったライムを入れる
)『ジントニック』1,200円。氷で軽く冷やしたグラスにタンカレー40mlとライム果汁10mlを入れ、よく混ぜ合わせる。そこにグラスのサイズに合わせて切り出した3つの氷を3つ入れる。なるべく氷に当てないようにフィーバーツリーのトニックウォーター120mlを注ぎ、軽くステアする。ライムの果肉をグラスの内側に添わせ、香りをつける。絞ったライムを入れる

一口飲むと炭酸がまろやかで、トニックウォーターの苦味が感じられる。ジントニックは夏に飲むのが一番うまいと思っていたが、これなら季節問わず飲んでもいい。飲み進めるうちにあることに気づく。氷が唇に当たらないのだ。

「氷が滑って液体が急に口の中に入ってこないよう、最後に入れたライムがストッパーの役割を果たすようにしています」

どこまでもゲストのこと考えている。

「おいしいカクテルをお出しするのは当たり前です。そのうえでお客様が口に出されないニーズを汲み取って、満足していただくことが大事だと思います」と、とことん殊勝だ。

問い合わせ先

  • ル ジェアン
  • 住所/東京都港区南青山1-8-15 カーサ南青山1F
    営業時間/18:00〜28:00
  • 定休日/日曜
この記事の執筆者
フリーランスのライター・エディターとして10年以上に渡って女性誌を中心に活躍。MEN'S Preciousでは女性ならではの視点で現代紳士に必要なライフスタイルや、アイテムを提案する。
PHOTO :
帆刈一哉
COOPERATION :
ARTS
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