のんびりとお酒を味わってほしいから、アットホームなソファ席に
外苑西通りを少しだけ麻布方面に歩くと、遊歩道へ下る階段が見える。そのまま進んでいくと、空の酒瓶がのったバカルディの樽が見える。これが、これから訪れる『ブーツ』の目印だ。
店に足を踏み入れると、目の前にカウンターがある。ハードリカーがバックバーを埋め尽くす様は正統派のバーそのものとも言える。
しかし振り向くと、友人宅に遊びに来たような寛ぎを感じる空間が広がっている。
これはオーナーの奥山雄介氏の、カジュアルにお酒を味わってほしいという思いが形になったもの。
「アメリカの友人宅で、のんびりカウチポテトを楽しんでいるようなコージーな雰囲気を意識しています。普段時間に追われている方にも、ゆっくりとした時間をすごしてほしいですからね」
店とゲストが相思相愛の関係を築く
奥山氏もネクタイは締めず、気軽な雰囲気を醸し出している。そんな親しみやすい空間だからか、一見客も分け隔てなく大切にしているからか、一人で訪れる女性客も多いという。ゲストを大事にする思いは店名にも表れている。
「靴は両足揃って初めて1足になりますよね。片方はお客様で、もう片方は店と考えると、お客さまがいて初めて店は成立します。お互いが欠かせない存在が靴であり、靴の中でも特に重量のあるブーツに強い絆を感じ、店名としました」
その思いは伝わっているようで、ゲストが『ブーツ』に宛てたメッセージを書いたコースターが数多く飾られている。
手慰みで書いたコースターも飾る奥山氏の律儀さ。この人柄が心安くするのだろう、数年ぶりにふらっと現れるゲストも多いという。
味わうべきは『ホテルニューオータニ』で薫陶を受けたマイタイ
『ブーツ』は内装ともてなしにギャップがない。こういうと、ざっくばらんで気軽な接客を想像するが、そうではない。奥山氏は『ホテルニューオータニ』のバー『トレーダーヴィックス』で研鑽を積んでいるため、親しみやすさはありながらも、名門ホテルバーならではのわきまえた接客が感じられる。例えば、こちらが少し咳き込んでいたらジンジャーを効かせたカクテルを出してくれる。そのさりげなさが心地いい。
『ホテルニューオータニ』仕込みはスペシャリティでも味わえる。『トレーダーヴィックス』が発明したカクテルがマイタイ。それと同じ味を提供している。
『トレーダーヴィックス』と同じ味を目当てに訪れるゲストも多いという。
「やはり『ホテルニューオータニ』での経験はかけがえのないものです。一流の方をはじめ、様々なお客様に接したからこそ、今もすべてのお客様に一流のサービスを、という信念も持ち続けられていると思います」
問い合わせ先
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ブーツ TEL:03-3475-7717
住所/東京都港区南青山3-2-4 セントラル青山ナンバー6 B1F
営業時間/平日18:00~26:00、土曜18:00~24:00
定休日/日曜、月曜が祝日の場合(他の祝日は終電まで営業)
- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター
- PHOTO :
- 帆刈一哉
- COOPERATION :
- ARTS