ゲストを知るには会話することが一番

2杯目を悩んでいたところ、「熟成したテキーラをゆっくりと飲んでもらいたい」と岡村氏に手引きされたのがカサ ノブレのアネホ。

『カサ ノブレのアネホ』1,700円
『カサ ノブレのアネホ』1,700円

「テキーラは飲んでも気分が落ち込まないような気がするんですよ」と笑う岡村氏が勧めるカサ ノブレは、まろやかですっと飲める。

今晩は一人で飲むと決め込んで、カウンターに腰を落ち着けたのに妙に人恋しくなって手持ち無沙汰を感じたことはないだろうか。行きつけの店ならともかく、初見の店ではバーテンダーとの会話のきっかけを探るのも面倒くさい。

その点、バーは人と人をマッチングさせる場で、リカーは付属品と考える岡村氏のため、会話のきっかけになるものを店内に散りばめている。

カウンター席に置かれた手書きのメニュー
カウンター席に置かれた手書きのメニュー
岡村氏やゲストの本を並べた本棚
岡村氏やゲストの本を並べた本棚

「お客様の所作などから、求めているものを察することも大切ですが、お客様の情報を得るにはやはり会話が一番だと考えています。そのため、きっけになるツールを用意しています」

このセリフから岡村氏の素直さが感じられる。いろいろと駆け引きをしても、交わすひと言には勝てない。真剣にゲストと向き合っているからこそ出てくる言葉だろう。

人間的なコミュニケーションを取りたい夜に

岡村氏と会話を続けていくと、ずっとカウンターに立ち続けたい思いが伝わってくる。

「店には自分の生き方が出てきます。年齢を重ねていって、どういう風に店が変わっていくのかにも興味があります。だから基本中の基本ですが、心身ともに健康でいないと。不健康だとカクテルの味もバラけますしね」

店を存続させるため、挑戦も続ける。

自身の店の在り方について話す岡村氏
自身の店の在り方について話す岡村氏

独自の試みをするのも、店とゲストを大切しているからだ。

「リピーターの多い店だとは思いますが、うちが一番とは思っていません。お客様にとって最高の店はどういうものか、その自問自答はずっと続いています。きっとそれは店を仕舞うまで変わらないと思います」

自分の型を決めて、それに向かって突き進める人間ばかりではない。迷いがあるからこそ、人間らしいとも言える。答えのない会話を通して、岡村氏とコミュニケーションを取りたい夜に相応しい店ではないだろうか。

問い合わせ先

  • バー ライペン
    住所/東京都港区南青山3-2-6 セントラル青山No.5 2−A
    営業時間/平日19:00〜26:00、土曜・祝日19:00〜24:00
    定休日/日曜(月曜が祝日の場合は日曜営業。月曜が休み)
この記事の執筆者
フリーランスのライター・エディターとして10年以上に渡って女性誌を中心に活躍。MEN'S Preciousでは女性ならではの視点で現代紳士に必要なライフスタイルや、アイテムを提案する。
PHOTO :
渡邉茂樹
COOPERATION :
ARTS
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