気仙沼ニッティングの事務所兼工房は、JR一ノ関駅から車で1時間ほどのところにある。「編み手さん」と呼ばれる地元の女性たちが、思い思いのペースで商品のニットを編み、週に1度気仙沼ニッティングの「編み会」で工房に集まる。編み上がったニットの検品と納品のほか、難しい部分は先生役の大ベテランから技術指導を受ける場だ。
主力の商品は、オーダーメイドの太いケーブル模様が象徴的なカーディガンタイプの『MM01』と、既製で展開するクルーネックの『エチュード』。どちらも糸づくりから開発した商品。御手洗氏が企業秘密と思える、素材のこだわりを話す。
「アランセーター」を凌駕する手編みのクオリティ
まず手に入れたい人気の『エチュード』
「糸は、スペイン産のメリノウール、イギリス産のブルーフェイス。そしてイギリス産のチェビオットは、『ホゲット』のみを使って紡いでいます。配合までは秘密です」
「ホゲット」とは、羊の生後2年未満で刈り取るウールをいい、3種類のブレンドで、張りのあるやわらかな糸になる。御手洗氏は、気仙沼ニッティングをはじめてすぐ、アイルランドのアラン諸島を訪ね本場のセーターを見た。手編みの魅力を最大限に生かすには、素材もデザインも思いっきりいいものにしなければならないと。
「一生ものと感じられる手編みニットの販売。手間だけではなく、お客さまがうれしいと思えるようなものにしたいのです」
現在、約60人の編み手がいる。手編みならではの、味わい深い編み目が絶品のニットは、でき上がると編み手の似顔絵が入ったタグを付ける。つくり手が責任を持って編んだ証拠のタグに、安心感が生まれる。
気仙沼ニッティングは今、しっかりとリピーターをつかんでいる。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2017年冬号、知られざる「手づくりの名品4」より
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- クレジット :
- 撮影/小池紀行(パイルドライバー/静物)構成・文/矢部克已(UFFIZI MEDIA)