キャリアが上がれば上がるほど、おしゃれの悩みも切実になるもの。そこで、各界で活躍するエグゼクティブ女性から絶大に支持されているスタイリストの犬走比佐乃さんが、トップキャリアと呼ばれる女性リーダーたちの仕事服悩みを一気に解決!
今回は、どうしてもマンネリ化してしまう仕事服からの脱却法を伝授。人の上に立つ女性が抱えるさまざまな約束事をクリアしつつ、より魅力的に見せるスタイリングを対談形式でお伝えしていきます。
ファッションのプロ直伝「仕事服がマンネリになる悩みの解決法」
■スーツスタイルが無難なコーディネートばかりになる悩みを解決したい
相談者は、外資系コンサルティング会社のパートナー(役員)として1日に5~6回のミーティングをこなし、リクルーティングやリーダーシップ育成など、多岐にわたって活躍されている、超多忙な安田結子さん。
犬走さんは数年前から、彼女のパーソナルコーディネートを担当しているのだそう。今回、無難なコーディネートばかり選んでしまうことを悩む安田さんに対して、犬走さんは「ビジネスシーンでももっともっときれいな色を着てもいいんですよ!」とアドバイス。
多くのキャリア女性は目上の男性からの見え方を気にするあまり、ベーシックカラー地獄に陥りがち。そんな状況から脱却するために、犬走さんはキートンのピーコックグリーンのセットアップ×キートンのマスタードイエローのボウブラウスの組み合わせを提案します。
好感度の高い色使いで、いつものスーツスタイルを刷新! リボン結びにしがちなボウタイをスカーフみたいに結んだり、襟にブローチをつけたりすると、さらに色々な広がりが出てきます。
■ピーコックグリーンのセットアップでベーシックカラー地獄から脱却!
安田さん(以下Y)「犬走さんと出会う前は、仕事服というとほとんど黒を着ていました。そうしたら『安田さん、きれいな色を着ていいのよ』とおっしゃって! 衝撃でした(笑)。その後、水色のジャケットとグレーのブラウスを合わせ、日本企業のCEO(年上の男性)にお目にかかったら『今日は爽やかだなぁ』と誉められて。きれいな色って、悪目立ちすることなく、いい印象を残せるんだ、と実感しました」
犬走さん(以下I)「それまでの安田さんは、ベーシックカラーで無地が多く、ブラウスも白が多かったのかしらね……。ジャケットはベーシックカラーでもよいけど、ブラウスでもっと遊んでもいいのよ」
Y「仕事柄、初対面の方、しかも目上の男性にお会いすることが非常に多いので、どうしてもコーディネートが無難になりがちだったんです。クライアントにもよりますが、例えば株主総会に出席する際、ダークスーツに白いブラウスを着てほしいとあらかじめ通達があったり……」
I「エグゼクティブになればなるほどいろいろな制約が出てきますよね。でも制約があるなかでも、おしゃれを楽しむ道はあります」
Y「もともとファッションが大好きなので、配色や素材合わせのおもしろさを教えていただき、幅が広がりました。特にブラウスの量が格段に増えました。この色とこの色は合う、とかブラウス合わせで頭の体操をするように……(笑)。私の会社は、外資系とはいえ、クライアントの80%は日本の企業で、年上の男性が多いことからみなさんダークスーツ。おしゃれはしたいけれど、浮いてしまうのも困るので、いつも悩んでいましたね」
I「セットアップスーツをそのままくずさず着ていたしね(笑)」
Y「上下絶対一緒でないといけないと思い込んでいたところ、『別々に着てもいいのよ』と。あれは本当に目からウロコでした(笑)」
I「安田さんはテーラードジャケットが多いけれど、ノーカラーも似合うはず。キートンのピーコックグリーンのセットアップなんてどうかしら? 一見派手な印象がするけれど、着てみると落ち着いたトーンだからきちんと感もあり、知的な印象。袖が広がるベルスリーブのシルエットも華やかで、それこそ上下別々でも活用できるから本当に便利よ」
Y「なるほど! この色、私では絶対にできないチョイスですね」
I「そこにマスタードイエローのブラウスを合わせると、ほら、素敵でしょう。最初は勇気がいるけれど、意外としっくりハマるし、顔映りもパッと華やかになるの」
Y「わ、びっくり。本当ですね。最初『マスタードイエロー!?』としり込みしたのですが、肌なじみもいいし、素敵ですね~」
I「シルクの素材感も上質で艷やかなキートンのボウブラウスは、タイが長いのでアレンジしやすく、いろいろな結び方ができるのがいい」
Y「私、ボウタイはリボン結びをするものだとばかり思っていましたが、こうやってスカーフみたいに結ぶと、甘すぎなくていいですね」
I「スーツスタイルだと遊べる部分が少ないから、襟元のアレンジや色をプラスすることで、もっともっと広がりが出てくるんですよ」
Y「ブローチをつけるのはどうでしょう?」
I「素敵だと思うわ。このジャケットにつけるなら、ちょっと高めの位置がかっこいいんです。自分ではちょっと上すぎるかな、というくらいがちょうどいいんですよ」
Y「また勉強になりました!」
I「安田さん、パンツも似合うと思うけれど、普段ははかないわよね」
Y「まだダメなんです。自分の思い込みがたくさんあって(笑)。週末ははきますが、仕事では…」
I「マニッシュなものだとちょっと抵抗があるかもしれないけれど、きれいな細身のパンツならタイトスカート感覚ではけるし、挑戦しやすいんじゃないかしら? このジャケットならグレーのパンツもお似合いになるはず」
Y「なるほど、そうですね。今までも『自分には似合わない』という頑な思い込みを、どんどん犬走さんに解きほぐしていただいていますしね(笑)。次回の出張のときから挑戦してみようかしら」
I「移動も楽だし、パンプスが似合うシルエットで選べば、パンツもエレガントに着こなせますよ」
Y「パンツ=カジュアルという固定概念も覆さないと、ですね。これからもいろいろ挑戦して、おしゃれの幅を広げていきたいです」
安田さんのようにベーシックカラー地獄に陥っている女性は、脱却するために目上の男性からの見え方ばかり気にしないできれいな色を選んでみてはいかがでしょうか。スーツが黒やグレーばかりになっているなら、勇気を出してピーコックグリーンを取り入れてみるのもひとつです。セットアップなら上下別でも使えて、マスタードイエローのブラウスとも相性抜群! ぜひ参考にして、いつものスーツスタイルを刷新してみてください。
- TEXT :
- 犬走比佐乃さん スタイリスト
- BY :
- 『Precious12月号』小学館、2018年
- PHOTO :
- 佐藤 彩(静物)、篠原宏明(取材)
- STYLIST :
- 犬走比佐乃
- HAIR MAKE :
- 岸 順子
- COOPERATION :
- キートン 六本木ヒルズ店
- EDIT :
- 土橋育子、喜多容子(Precious)