電気シェーバーで知られるドイツの家電ブランド、ブラウンは1921年にマックス・ブラウンによって設立された。1950年代になるとデザイナーのディーター・ラムスが中心となり、機能を優先したドイツモダンデザインによるオーディオ機器が脚光を浴びる。
このディーター・ラムスと、同社でクロックセグメントのチーフデザイナーなどを務めたディートリッヒ・ルブスが手掛けたブラウン初のアナログリストウォッチが、1989年に発売された「AW10」だ。
実用重視の機能的なデザインが施された中三針モデルは、ディーター・ラムスとディートリッヒ・ルブスのデザイン哲学の集大成とも称され、装飾性の高いスイスウォッチがメインストリームであった当時、「AW10」の革新性は一際異彩を放った。その機能美は世界中で称賛され、生産が終了するまでの15年間、1度もモデルチェンジされることなく、開発時のコンセプトを守りながら生産が続けられることになった。
ドイツの家電ブランド「ブラウン」初のアナログリストウォッチ
ブラウン「AW10」
「AW10」発売から2年後の、1991年に発表された「AW50」は、ディートリッヒ・ルブスがデザインを担当。「AW10」から、文字盤のアラビア数字と分単位のスケールまでも取り除かれ、ケースとベゼルのカラーを統一することにより、ブラウンがデザインのフィロソフィーとして掲げる”less but better” (より少なく、しかしより良く)と”フォルムを超越する機能性”というコンセプトを見事に表現した。日付機能を強調するためにセットされた赤いシェブロン紋章は、それ以降、ブラウンリストウォッチのアイコニックな意匠となった。
ブラウン「AW50」
ディーター・ラムスとディートリッヒ・ルブスというドイツデザインの巨匠が開発に関わったこともあり、廃盤になった以後も、2策の復活の声は絶えることがなかったが、2016年のバーゼルワールドで、2つのモデルの復刻プロジェクトが発表。約1年半の歳月をかけ、1つ1つのパーツに至るまで正確、精密にオリジナルデザインを再現し、当時の化粧箱まで復刻された。
現在でも色褪せることのないタイムレスなデザインと「Made in Germany」の伝統。1モデルで、ふたたび傑作の称号を手に入れた。
問い合わせ先
- TEXT :
- 安藤政弘 ライター