■長い歴史を誇るメゾン「ヴァシュロン・コンスタンタン」が挑んだ『世界一』の称号
メゾンの歴史は18世紀半ば、1755年のジュネーブに始まります。創業者は腕利きの時計師ジャン=マルク・ヴァシュロン。スイスは当時すでにウォッチメイキングの世界的な中心地で、のちに経営パートナーとしてフランソワ・コンスタンタンが迎え入れられ、メゾンは国際的な舞台に躍り出ました。
これまでさまざまな技術革新を推し進めてきたメゾンは「世界で最も複雑な機械式時計」を生み出したことで知られ、時計の歴史にいくつもの金字塔を打ち立ててきました。それはレディスウォッチでも同様で、1889年にメゾン初の女性用懐中時計を仕立て、1979年には当時「世界で最も高価な時計」とされた豪奢なダイヤモンドウォッチ「カリスタ」を発表してセンセーションを巻き起こしています。
また、複雑機構を搭載した懐中時計にフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》を描き、喝采を博したことも。名画をエナメルで再現するには2年もの月日が費やされたそうです。
「ヴァシュロン・コンスタンタン」は、今も昔も時計業界において最先端にいるマニュファクチュールなのです。
■トップクラスの美術館と次々にパートナーシップを締結
他の時計ブランドとは一線を画したさまざまな取り組みを行うメゾンにとって、メティエ・ダールは重要な柱。パリのルーヴル美術館、ニューヨークのメトロポリタン美術館、北京の故宮博物院の教育機関など、世界最高クラスの美術館と強固なパートナーシップを築き、芸術の域に到達したウォッチを生み出して、時計愛好家たちの熱い賞賛を浴びています。
例えば2020年に行われたオークション“Bid for the Louvre”では、ユニークピースである「レ・キャビノティエ」を出品、ルーヴル美術館の所蔵品から好きな美術品を落札者が選び、それを文字盤にあしらう、という贅沢なもの。落札者はルーヴル美術館の学芸員によるプライベートツアーに訪れ、メゾンの専門家たちとミーティングを重ねて、巨匠ルーベンスがダ・ヴィンチの絵を模写したとされる貴重な素描を選んで時計をオーダーしました。
極めて複雑な機械式時計をつくることと、芸術品に等しい美しさで時計を装飾することは、メゾンにとっては切り離せない要素。常に最高を目指すための大切なこだわりなのです。
■「ヴァシュロン・コンスタンタン」の磨き抜かれた職人技が完成させる、小さなアート
時計を美しく装飾する工芸の技は、古くからスイスで発達しています。メゾンはそうした技を継承し、ときには進化させて時計製造に用いています。
なかでも極めて高いレベルにあるのは、エナメルを使った表現。釉薬を高温の炉で焼き上げる「グラン・フー・エナメル」など多彩な技法を駆使し、文字盤に色とりどりの絵を自在に描き出します。彩色には極細の筆だけでなく、サボテンの小さなトゲまでも使うそう。驚くほど細密なマイクロアートの至芸です。
また、メゾンには彫金やギヨシェ装飾、ストーンセッティングなど、さまざまな専門分野の熟達した職人たちが常駐。本社のアーカイブには1600点以上のヒストリカルピースが所蔵され、時計の最高峰を生み出す知識を受け継いでいます。
こうしたメティエ・ダールの職人技こそ「ヴァシュロン・コンスタンタン」の存在感を輝かしいものにしているのです。
創業に関わったフランソワ・コンスタンタンがかつて記した、
「できる限り最善を尽くす。そう試みることは少なくとも可能である」
という言葉。これは今なおメゾンのモットーとなり、「ヴァシュロン・コンスタンタン」の時計製造には、この精神と探求心がしっかりと息づいています。
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- EDIT&WRITING :
- 本間恵子