紳士服の聖地サヴィル・ロウはなぜ今も聖地と呼ばれるのか。それはこのスーツ発祥の地にビスポークの名門店が集結し、かつ伝統が守られている、ただそれだけではない理由がある。ここは常に時代の先端となるメンズウェアを創造してきた場所であり続けているからなのだ。「リチャード ジェームス」はその代表ともいえるブランドだ。

 1992年、デザイナーのリチャード・ジェームス氏とショーン・ディクソン氏によってサヴィル・ロウに創立された「リチャード ジェームス」。今までと全く異なる、現代的でスタイリッシュなセンスとサヴィル・ロウのクラフツマンシップを融合した新たなブリティッシュスタイルを提案。それは『ニュー・ビスポーク・ムーブメント』と呼ばれ、’90年代のサヴィル・ロウとメンズウェアに新たな改革をもたらした。

 今回は創業よりの歴史を知るマネージングディレクターのショーン・ディクソン氏、さらにデザイン&ブランドディレクターのトビー・ラム氏を迎え、「リチャード ジェームス」の魅力について語ってもらった。

サヴィル・ロウの改革者

「リチャード ジェームス」でマネージングディレクターを務める、ショーン・ディクソン氏。
同じく、デザイン&ブランドディレクターのトビー・ラム氏。

 まず、サヴィル・ロウの改革者と呼ばれることをどんな風にディクソン氏は捉えているのだろうか?

「サヴィル・ロウの改革者と言い切ってしまうと周囲の人にお叱りを受けるかもしれませんが(笑)、私たちがサヴィル・ロウにブランドを設立した1992年当初はメンズウェアにとって非常に難しい時期でした。このインタビューを受けている部屋より小さい部屋からスタートしたんですよ。その時から私たちのメッセージは明確でした。サヴィル・ロウが持つスーツ発祥の地という伝統と技術を生かしながら、メンズウェアをいかにモダンに、カラフルに、セクシーにみせるか。なぜ成功したのかと言われれば、私たちのメッセージがお客様に伝わったからだと思います」

ハウススタイルはテーラリングの良さが映えるコンテンポラリースタイル

日本ではグレンチェックと呼ばれることの多い、プリンス・オブ・ウェールズ柄とカモフラージュ柄のスーツを前に説明を受ける長谷川氏。

 ここで「リチャード ジェームス」のハウススタイルと最新のコレクションについてトビー・ラム氏に話を伺う。目の前にディスプレイされたスーツは、一着目はファインウールを用いたクラシックなプリンス・オブ・ウェールズ柄、二着目はコットンの英国陸軍のカモフラージュ柄がフレッシュな印象だ。

「これらは代表的なハウススタイルのスーツで、2つのスーツは全く違うように見えますが、スーツのスタイル自体は同じものです。プリンス・オブ・ウェールズはビスポークで好まれる柄ですが、カモフラージュ柄もビスポークのお客様の注文から始まりました。私たちのメンズスーツが持つクラシックな美しさを異なるファブリックを用いて、違うアプローチで表現したもので、この二面性こそ「リチャード・ジェームス」のコンテンポラリーなスタイルを象徴しています」

 ハウススタイルはシングルブレスティッドの2ベントに高いアームホールとハイゲージのラペル、スリムなキャンバスとソフトショルダーはスリムなシルエットを作りだす。トラウザーズ(パンツ)もノータックでサイドアジャスター仕様と、テーラリングの良さを引き出せるようなビスポーク由来のディテールを持ち、「リチャード ジェームス」の目指すクリーンでコンテンポラリーなスタイルとなっている。

新しいメッセージ「ニュー・エスタブリッシュメント」

カモフラージュ柄のスーツは、トランクショーでも目立っていた。

 次なる「リチャード ジェームス」からのメッセージは「ニュー・エスタブリッシュメント」だとディクソン氏は語る。これはクラシックな装いを尊重しながらも、クリエイティブで常に挑戦を続け、新たな変革を目指すブランドの姿勢を表現したものだ。来期はナチュラルストレッチ機能を持つコットン素材を用いたトラベルスーツも開発中だ。

 ブリティッシュブランドに共通する伝統と革新が生み出す「リチャード  ジェームス」のテーラリングの世界。伊勢丹新宿店メンズ館で実際に手に取って確かめてみてほしい。

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この記事の執筆者
ジャーナリスト。イギリスとイタリアを中心にヨーロッパの魅力をクラフツマンシップと文化の視点から紹介。メンズスタイルに関する記事を雑誌中心とする媒体に執筆している。著作『サヴィル・ロウ』『ビスポーク・スタイル』『チャーチル150の名言』等。
公式サイト:Gentlemen's Style